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行き先を決めるのは人間の仕事

AIに全部任せるのは、行き先を入れずにナビを起動するのと同じだ。何を撮るか決めるのも、最後に選ぶのも人間の仕事。

行き先を決めるのは人間の仕事

行き先のないナビ

Google Mapsを開いて、「どこかいいところに連れてって」と入力する人はいない。当たり前だ。行き先を入れなければルートは出ない。

でも、AIにはそう言う人がたくさんいる。「面白い企画を考えて」「いい感じの文章を書いて」。行き先のないナビだ。

Google Mapsは、行き先を入れた瞬間に最適なルートを出してくれる。渋滞も迂回路も全部計算してくれる。でも、「どこに行きたいか」だけは、あなたが決めるしかない。AIもまったく同じ構造だ。


ドラッカーが60年前に言い当てていたこと

ピーター・ドラッカーは1966年の『経営者の条件』でこう書いた。

成果を上げる人は、貢献に集中する

AIの登場で「作業」のコストはゼロに近づいた。文章を書くコスト、データを整理するコスト、翻訳するコスト。すべてが劇的に下がった。

だから人間がやるべきことは明確になった。「何に取り組むかを決めること」と「成果を確認すること」。60年前にドラッカーが言っていたことが、AIで加速しただけだ。


System 1とSystem 2

ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』(2011)は、人間の思考を2つのシステムで説明した。

  • System 1: 直感。瞬時の判断。「この患者はなんか変だ」
  • System 2: 論理。慎重な分析。データを集め、比較し、結論を出す

AIは超高速のSystem 2だ。データを集め、整理し、論理的に組み立てるのは圧倒的に得意。しかし、「何について考えるか」を決めるSystem 1は人間にしかない。

サム・アルトマン(OpenAI CEO)の言葉を借りれば、

Think about the percentage of tasks, not the percentage of jobs.

仕事が消えるのではなく、仕事の中のタスクの配分が変わる。AIがSystem 2のタスクを吸収し、人間はSystem 1に集中できるようになる。


0→10→90→100

仕事のプロセスを4段階で考えてみる。

0→10: 方向を決める 何のために、誰のために、何をやるか。この発射角を決めるのは人間の仕事だ。ここを間違えると、AIがどんなに優秀でも的外れな成果物が出来上がる。

10→90: 中間の作業 情報を集める、整理する、文章にする、計算する。ここはAIの独壇場。

90→100: 最後の仕上げ AIのアウトプットは大体90点。見た目は綺麗で、一見問題がない。でも、それをそのまま外に出すと「なんか薄い」「芯がない」と感じられる。最後の10点を人間が引き上げる。

アルトマンはこうも言っている。

We'll have an incredible tool at our disposal, but we still have to figure out what to do, what other people want, and what other people will find useful.

「何をすべきか」「人が何を求めているか」「何が役に立つか」。これを考えるのは人間の仕事だ。


フレーミングとセレクト

写真に例えると分かりやすい。

1000枚撮れば、技術的にはどれも綺麗に撮れる。カメラの性能がそこを保証してくれる。でも、展示に使えるのは3枚だ。

最初に決める「何を画面に入れるか」がフレーミング。これが0→10。

最後に決める「1000枚から3枚を選ぶ」がセレクト。これが90→100。

中間のシャッターを切る行為、つまり10→90の部分は、カメラ(AI)がやってくれる。

ポール・グレアムの指数曲線

Y Combinator創業者のポール・グレアムはこう書いている。「指数関数的な成長の厄介なところは、最初はフラットに見えること。でもそれは美しい指数曲線の始まりなのだ」。AIを使い始めて「効果がない」と感じる最初の数週間。それはフラット部分にいるだけ。やめるな。


あなたの仕事を分解してみる

あなたの仕事のうち、AIに奪われて困るものと、むしろ奪ってほしいもの。その比率はどのくらいだろう。

次のレッスンでは、AIへの指示出し=マネジメント力だという話をする。