詳しいだけでは意味がない
2種類の人
写真をやっていた頃、周囲に2種類の人がいた。
1人は、新しいレンズが出るたびに買い、スペックを語り、画素数とF値の比較をSNSに投稿する。でも、その人の写真を見たことがなかった。
もう1人は、ずっと同じカメラを使い続けていた。ボディは傷だらけ。でも、その人の写真は一目でわかった。機材の話はしない。見ているものの話だけする。
AIソムリエの末路
iPhoneが出たばかりの頃、「アプリソムリエ」と呼ばれる人たちがいた。アプリに詳しいだけの人。スマホが当たり前になるにつれて、彼らは消えた。
同じことがAIでも起きている。新しいモデルが出るたびにレビューし、ツール比較をSNSに投稿し、プロンプトのテクニックを紹介する人たち。注目は集めやすい。でもそれだけでは、キャリアの力にはなっていかない。
ブルース・リーの言葉がある。
1万種の蹴りを1回ずつ練習した人は怖くない。1つの蹴りを1万回練習した人が怖い
AIツール100個を浅く触るより、1つのAIで実際に成果を出す方が100倍価値がある。
正直な告白
正直に言うと、私もかつて機材マニアだった。
新しいAIが出るたびに触って、感想を書いて、次のAIに移る。半年やって気づいた。何も残っていない。1枚も写真を撮っていないのと同じだった。
そこでやめた。カメラを1台に絞るように、AIも絞った。「外来で伝えきれないことを、どう届けるか」。この1つの問いだけに使った。
結果、462本の記事が形になった。外来で渡せる情報処方セットができた。
使ったツールの数ではなく、誰の問題を解いたかだけが残る。
プレミアム資産
サム・アルトマンはこう言っている。
Qualities like empathy, creativity, and intuition will become premium assets.
共感、創造性、直観がプレミアム資産になる。ツールの知識はコモディティだ。時間が経てば誰でも追いつく。
セネカ(ストア哲学)の言葉を借りれば、
多くの書物を旅することは、放浪であって学問ではない
ツールの新しさを追うのは放浪。成果に結びつけるのが学問だ。
ティム・フェリスのポッドキャストでビル・ガーリーがこう言った。
The best way to protect against any risk of your career being eliminated from AI is to be the most AI-enabled version of yourself you can possibly be.
AIのリスクから身を守る最良の方法は、最もAI化された自分になること。ツールに詳しくなることではなく、AIで成果を出せる自分になること。
軌道を見よ
ジェームズ・クリアは『Atomic Habits』でこう書いた。「今の結果よりも今の軌道を気にしろ」。AI導入初月の成果は小さくていい。軌道が正しければ、複利で指数関数的に伸びる。毎日1%ずつAIの使い方を改善すると、1年後に37倍になる。バフェットの複利の教えと同じだ。
あなたは写真家か、機材マニアか
この問いに正直に答えてみてほしい。
次のレッスンは最終回。「あなたは何を増幅させたいか」という問いに向き合う。