私のダウンロードフォルダには、請求書、申込書、学会の案内、写真が、300個以上たまっていました。年度ごとに分けたい。でも1つずつ開いて、名前を付け直して、フォルダに入れるのは、考えただけで手が止まります。
チャットのAIに相談しました。「ダウンロードフォルダの300個の書類を、年度と種類で分けたい」。返ってきたのは、きれいな説明でした。「まず年度ごとのフォルダを作り、次にファイル名の日付を見て……」。正しい。でも、動いてはくれません。分けるのは、やはり私です。
あなたにも、似た経験があるかもしれません。AIは賢いのに、最後の手作業はいつも自分に残る。この章では、その手作業をAIに渡す方法を見ていきます。
Step 1:チャットのAIは、答えを書く
これまで使ってきた ChatGPT や Claude のチャットは、こちらが打った文章に、文章で答えます。下書きを作る、要約する、調べる。どれも、画面の中の文字のやりとりです。
だから、フォルダの整理を頼んでも、AIは「やり方」を文字で返します。あなたのパソコンの中のファイルには、触れません。触れないのは、AIが怠けているのではなく、そういう場所にいるからです。チャットのAIは、あなたのパソコンの外にいます。
Step 2:動くAIは、手足を持っている
一方で、この1〜2年で、別の種類のAIが一般の人にも使えるようになりました。あなたのパソコンの中に入って、ファイルを読み、作り、動かし、結果を確かめるAIです。
このAIは、文章を返すだけでなく、手を動かします。フォルダを開く、ファイルを書く、プログラムを動かす。頼まれた仕事を自分の手で進め、終わったら報告します。
このように、答えるだけでなく、手を動かして作業まで進めるAIを、エージェントと呼びます。英語の「代理人」から来た言葉です。あなたの代わりに、手を動かす人、という意味で覚えておけば十分です。
答えるAIと、動くAI
あなたの文章に、文章で答える。やり方は教えてくれるが、あなたのパソコンの中のファイルには触れない
あなたのパソコンの中で、フォルダを開き、ファイルを作り、動かし、終わったら報告する。手足がある
左のチャットのAIとあなたの間を往復するのは、文章だけです。右のエージェントは、あなたのパソコンの中で手を動かします。この手足が、手作業をAIに渡せる理由です。
Step 3:違いは、賢さではない
ここで1つ、誤解をほどいておきます。エージェントのほうが賢いAI、というわけではありません。
チャットの Claude と、エージェントの Claude は、同じ頭を使っています。違うのは、頭ではなく、手足があるかどうかです。この本で使うエージェントは Claude Code という名前で、チャットの Claude と同じ頭に、手足を付けたものです。同じ人が、電話の向こうで助言してくれるか、あなたの机の前に来て一緒に作業してくれるか、の違いです。
だから、頼み方も変わります。チャットには「どうすればいい?」と聞きました。エージェントには「これをやって」と頼みます。
ここが核心
チャットに答えを書いてもらうのではなく、自分のパソコンの中で、AIに手を動かしてもらう。
冒頭のフォルダ整理なら、こう頼むことになります。「この書類を、年度と種類で分けて。分ける前に、どう分けるかを先に見せて」。次の回で、練習用のフォルダで、実際にこれを動かします。
注意
ただし、手足があるぶん、間違いも実行される
チャットのAIが間違えても、文章が間違っているだけです。エージェントが間違えると、ファイルが動きます。だからこの本では、練習用のフォルダで試す、動かす前に計画を見る、戻せるようにしてから任せる、の3つを繰り返します。怖がる必要はありませんが、扱いは変えます。
セルフチェック
1. チャットのAIに「フォルダを整理して」と頼んでも、ファイルが動かないのはなぜですか?
今日のまとめ
- 答えるAI:チャット。文章を返す。パソコンの外にいる
- 動くAI:エージェント。手を動かして作業を進める。パソコンの中に入る
- 違いは賢さではなく、手足があるかどうか。この本のエージェントは Claude Code