Geminiは医療で何ができるのか
Googleの医療AI開発は他社の数歩先にいる
ChatGPTやClaudeが汎用AIの医療応用なら、Googleは最初から医療に特化したAIを作っている。
Med-PaLM(2022年)からMed-PaLM 2、そしてMed-Gemini(2024年)へ。医療AIの研究論文数と投資規模はGoogleが圧倒的だ。
| モデル | 年 | MedQA正答率 | 特記 |
|---|---|---|---|
| Med-PaLM | 2022 | 67.6% | 初めてUSMLE合格ラインを超えたAI |
| Med-PaLM 2 | 2023 | 86.5% | 9軸中8軸で医師の回答より好評価 [1] |
| Med-Gemini | 2024 | 91.1% | 14ベンチマーク中10で最高性能 [2] |
| MedGemma 27B | 2025 | 87.7% | オープンソース、推論コスト1/10 [3] |
Med-Gemini(2024年)は14の医療ベンチマーク中10で最高性能を達成し、GPT-4ファミリーを全ての直接比較で上回った [2]。
マルチモーダル: 画像を「読める」AI
Geminiが他のAIと最も差がつくのがマルチモーダル(画像+テキスト)だ。
Med-Gemini-2D(X線、病理、皮膚科、眼科):
- 胸部X線レポート: 正常症例の96%が「放射線科医と同等以上」[2]
- NEJM Image Challengeで GPT-4Vを大幅に上回る
Med-Gemini-3D(CT/MRI):
- 3D CTボリュームを解釈する初めての大規模マルチモーダルモデル
- 放射線科医のレポートで見落とされていた病変を正しく指摘した事例あり
Med-Gemini-Polygenic(ゲノム):
- 従来の線形多遺伝子リスクスコアを8つの健康アウトカムで上回る
- 明示的な学習なしで6つの追加アウトカムを予測
これらはまだ研究段階のモデルで、一般ユーザーが使えるGeminiとは別物だ。しかしGoogleの研究開発がどこに向かっているかは知っておく価値がある。
一般ユーザーが使えるGeminiの実力
日常的に使えるGemini(Gemini Advanced等)の医療系ベンチマーク:
| 試験 | Gemini | 比較 | 出典 |
|---|---|---|---|
| USMLE Step 3 | 86% | ChatGPT 92%, Claude 90% | AEI [4] |
| 日本薬剤師国試 | 83.4%(Flash) | Claude 86%, ChatGPT 86.6% | JMIR 2025 [5] |
| 欧州眼科ボード | 85.3% | ChatGPT 83.3% | PMC 2024 [6] |
| 心血管薬理(上級) | 20% | ChatGPT-4 高精度維持 | Frontiers 2025 [7] |
試験問題では他のAIと同等だが、心血管薬理の上級問題で20%に落ちるなど、分野によって大きなムラがある。
ChatGPT・Claude・Geminiの位置づけ
- ChatGPT: 汎用タスクの王道。GPTsで拡張可能。画像生成もできる
- Claude: 長文読解と文章力。論文執筆に強い
- Gemini: Google連携とマルチモーダル。最新情報の検索に強い
Geminiの限界
分野によるムラが大きい。 上級レベルの臨床薬理では精度が急落する報告がある [7]。
テキスト生成の質はClaude・ChatGPTに劣る場面がある。 大塚先生の書籍でもGeminiは「Google連携」が推奨理由の中心で、文章の質ではChatGPTとClaudeに軍配 [8]。
ハルシネーションは他のモデルと同様に起きる。 Google検索との連携(Grounding)でやや軽減されるが、完全ではない。
まとめ
- GoogleはMed-PaLM → Med-Gemini → MedGemmaと医療AI研究をリード
- マルチモーダル(画像+テキスト)はGeminiの最大の差別化ポイント
- 一般ユーザー版は試験では他のAIと同等だが、分野によるムラがある
- 「Google連携」と「最新情報検索」が臨床での実用価値
参考文献
- Singhal K, et al. arXiv:2305.09617. 2023.
- Saab K, et al. arXiv:2404.18416. 2024.
- Google DeepMind. MedGemma. Hugging Face, 2025.
- AEI. How Well Can AI Chatbots Mimic Doctors. 2024.
- JMIR Medical Education. Japanese Pharmacist Exam. 2025. doi:10.2196/76925.
- PMC. European Ophthalmology Board exam. 2024.
- Frontiers in Medicine. Cardiovascular pharmacology. 2025. doi:10.3389/fmed.2025.1495378.
- 大塚篤司. 医師による医師のためのChatGPT入門2. 医学書院, 2024.