メインコンテンツへスキップ

安全は、作る側の責任

  • レッスン 5
  • 13分

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • MCPの仕様が「プロトコルレベルでは安全を強制できない」と明記している理由を説明できる
  • サーバー側・クライアント側それぞれが実装すべき安全対策を1つずつ挙げられる
  • 自分がMCPサーバーをつなぐ・作るときに、最初に確認すべき一線を言える

ここまで4回にわたって、ツール・リソース・プロンプト、そしてサンプリング・通知・ルートという仕組みを見てきました。最後に扱うのは、機能ではなく責任の話です。

仕様は「強制できない」と自分で言っている

MCPの公式仕様には、安全と信頼についてまとめた章があります。そこにある一文が、この章全体の前提になっています。

VoicesARTICLE

“While MCP itself cannot enforce these security principles at the protocol level, implementors SHOULD build robust consent and authorization flows into their applications.”

筆者訳

MCP自体はこれらの安全原則をプロトコルレベルで強制することはできない。実装する側が、確実な同意と認可の流れをアプリケーションに組み込むべきである。

Model Context Protocol公式仕様modelcontextprotocol.iomodelcontextprotocol.io/specification/2025-06-18

仕様が掲げている原則は4つです。ユーザーの同意と制御、データのプライバシー、ツールの安全な扱い、そしてサンプリングを人間が統制できること。どれも「こうあるべきだ」という指針であって、破ったら通信できなくなる、という類いの強制ではありません。守るかどうかは、実装する人の手に委ねられています。

この構造は、他の多くの通信規格とは少し違います。通信の形式そのものは厳密に決めながら、その中身をどう安全に使うかは実装側に委ねる。MCPはこの線引きを最初から選んでいて、だからこそ「誰が作ったサーバーか」「誰が作ったクライアントか」を、つなぐ側が意識する必要があります。


サーバー側が引き受けること

MCPサーバーを作る側には、仕様が具体的な義務を挙げています。ツールを提供するなら、入力を検証すること、適切なアクセス制御を持つこと、呼び出しの頻度を制限すること、返す出力を無害な形に整えること。この4つです。

入力の検証

渡された値をそのまま信じず、想定外の形式や値を弾く

アクセス制御

誰が何を呼べるかを、機能ごとに適切に絞る

呼び出しの制限

同じ処理を際限なく連打されないよう、頻度に上限を設ける

出力の無害化

返す内容に、意図しない実行可能なコードや機微な情報を混ぜない

サーバー側のチェックリスト

リソースについても、URIを検証すること、機微なリソースにはアクセス制御を持たせることが挙げられています。読み取り専用だからといって、何でも無条件に渡してよいわけではありません。


クライアント(つなぐ側のアプリ)が引き受けること

サーバーを作らず、既存のMCPサーバーをつなぐだけの立場でも、引き受ける責任があります。つなぐ側のアプリが担うのは、主に「人に確かめさせる」役割です。

クライアント側が引き受けること

1

実行前に見せる

どのツールが、どんな入力で呼ばれようとしているかを、実行前にユーザーへ示す

2

確認を求める

重要な操作には、実行してよいかの確認をユーザーに求める

3

結果を検証する

返ってきた結果を、そのままAIに渡す前に一度検証する

4

記録を残す

何が呼ばれ、何が返ったかを監査できる形で残しておく

ルートについても同様です。クライアントは、境界を検証してから公開する責任、パスをたどって範囲外に出ようとする操作を防ぐ責任を負っています。サーバー任せにできる部分ではありません。


ルートは「自動では守られない」を思い出す

前のレッスンで触れたとおり、ルートの境界は仕様上「尊重すべきもの」であって、通信の仕組みが自動で遮断してくれるものではありません。サーバーを作る側は、渡された境界の外に出ようとしていないかを確かめる処理を、自分のコードの中に書く必要があります。

もう一つ、比較的新しく加わった仕組みにも触れておきます。Elicitationと呼ばれるもので、処理の途中でサーバーがユーザーに直接、追加の情報を尋ねられる仕組みです。ただし仕様は、この仕組みを使って機微な情報を求めてはならないと明記しています。便利な機能ほど、使ってよい範囲が狭く区切られているという点は覚えておく価値があります。

視点

仕組みが増えるほど、確認の機会も増える

ツールの実行前確認、サンプリングの承認、ルートの境界確認、Elicitationでの機微情報の禁止。MCPの仕組みが増えるたびに、その分だけ「人間が確かめる場所」も増えています。便利さと確認は、セットで設計されています。


やってみよう

演習1:つなぐ前に確かめる

自分がこれからつなぐ予定のMCPサーバーを1つ思い浮かべてください。それは読み取り専用でしょうか、それとも書き込みもできるでしょうか。書き込みができるなら、どんな操作の前に確認を求めてくれるか、つなぐ前に確かめてみてください。

演習2:作るなら最初に何を実装するか

自分がMCPサーバーを作るとしたら、この章のチェックリストの中から、最初に実装すべき安全対策を1つ選んでください。どれを最優先にするかは、そのサーバーが何に触れるかによって変わります。


今日のまとめ

3行で振り返ります。

  • MCPの仕様は、安全をプロトコルレベルで強制できないと自ら明記している
  • サーバー側は入力検証・アクセス制御・呼び出し制限・出力の無害化を引き受ける
  • クライアント側は、実行前に見せる・確認を求める・結果を検証する・記録を残すことを引き受ける

これで、MCPをもっと知るコースは終わりです。つなぐ・使うという入口から、誰が何を選び、誰が何を確かめるかという仕組みの全体まで見てきました。

セルフチェック

1. MCPの公式仕様が「安全と信頼」について述べていることとして正しいものはどれですか。

2. サーバー側が引き受けるべき安全対策として、本文で挙げられていないものはどれですか。

3. Elicitationについて、本文の説明として正しいものはどれですか。

SourceARTICLE
MCP公式仕様: Security and Trust & Safety

安全と信頼に関する4原則、プロトコルが強制できない範囲の一次情報。

Webmodelcontextprotocol.io
modelcontextprotocol.io/specification/2025-06-18
SourceARTICLE
MCP公式仕様: Tools(Security Considerations)

サーバー側・クライアント側それぞれの安全対策の一次情報。

Webmodelcontextprotocol.io
modelcontextprotocol.io/specification/2025-06-18/server/tools
SourceARTICLE
MCP公式仕様: Elicitation

2025-06-18版で新設された、サーバーがユーザーに構造化データを求める仕組みの一次情報。

Webmodelcontextprotocol.io
modelcontextprotocol.io/specification/2025-06-18/client/elicitation
SourceARTICLE
Claude Academy: Model Context Protocolの紹介

Anthropic が公開している MCP のコース(応用編もあり)。このコースの考え方の出どころです

WebAnthropic
academy.claude.com/ja/courses/introduction-to-model-context-protocol

このレッスンは役に立ちましたか?