まず結論:浮いた時間を、何に使うか
ここまで、速くする話ばかりしてきた。二時間が二十分に。数日の作業が、午後の隙間に。
でも、最後に一番大事なことを言う。速くすること自体には、意味がない。
速さは、手段だ。問われるのは、その速さで生まれた時間を、何に使うか。ここで、AIをただの便利な道具で終わらせるか、人生を変える土台にするかが、分かれる。
速さは、目的ではない
仕事を速く片づけて、また次の仕事を速く片づける。それを延々と繰り返すなら、あなたはただ、より多くの雑務を、より速くこなす機械になっただけだ。
それは、この本が目指したものではない。
私が雑務をAIに渡したのは、雑務を増やすためではない。減らすためだ。手放した時間を、別のことに使うために。
専門性の本体に、時間を戻す
では、浮いた時間を、どこに戻すか。
あなたが、いちばん価値を出せる場所だ。深く考える時間。人と会う時間。方向を見極める時間。専門性の、本体そのもの。誰でもできる作業に食われていた時間を、あなたにしかできないことへ、戻す。
私の場合は、はっきりしている。患者を診る時間。目の前の子どもと、ちゃんと向き合う時間。そして、家族と過ごす時間。
AIに会社を回させて、私が手に入れたのは、もっと働く自由ではない。人間に戻る自由だ。
持ち帰り
- 雑務を渡して浮いた時間を、また別の雑務で埋めていないか、点検する
- 浮いた時間を戻す先を、一つ決める(考える・会う・休む・本業に深く向き合う)
- 速さを、もっと働くためでなく、人間に戻るために使う
最終章は、この本の最初から最後まで通っている一本の線を、もう一度なぞる。手を渡しても、渡してはいけないもの。知覚と、主権の話だ。