状況
外来での紹介状は、慣れていても1通10〜15分はかかる。書く内容は頭にあるのに、「拝啓からの書き出しをどう整えるか」「経過を時系列でどう並べるか」「今回は循環器と整形で文体の硬さが違う」といった整形の手間が積み重なる。
週に数通書く週もあり、外来終わりにまとめて片付けようとすると、脳が消耗している状態で文章を整える羽目になる。これは構造的に非効率だと思っていた。
紹介状の中身は自分が決める医学的判断の部分と、それを整った文書にする整形の部分に分けられる。整形だけAIに任せれば、自分は医学的な内容に集中できる。そう気づいたのが使い始めたきっかけ。
やったこと
外来中にEMRで経過を確認しながら、要点をメモ書きで手元に用意する。それをそのままClaudeに貼り付ける形で依頼している。
以下の情報をもとに、[紹介先診療科]宛の診療情報提供書(紹介状)を作成してください。
丁寧で専門的な文体にしてください。
# 患者情報
- 氏名: [氏名] ([年齢]/[性別])
- 診断名/主訴: [診断名または主訴]
# 紹介目的
[紹介の目的を具体的に記載]
# 経過要約
[これまでの経過を時系列で記載]
# 現在の処方
[現在の処方薬を記載]
# 検査結果(該当する場合)
[直近の検査結果を記載]
ポイントは「紹介先診療科」と「紹介目的」を最初に明確に書くこと。循環器科宛と整形外科宛では、Claudeが選ぶ語彙や詳しく書くべき情報の重み付けが自然に変わる。目的が「精査依頼」なのか「加療依頼」なのか「セカンドオピニオン」なのかで、紹介先に伝えるべき内容の軸も変わる。ここを丁寧に書くと、出てくる下書きの質が明確に上がる。
返ってきた下書きは、原カルテと並べて数分で突合・修正する。修正の中心は検査値の数字と薬剤量の確認で、文体や構成はほぼそのまま使えることが多い。
効いたところ
- 1通あたりの作成時間が体感で半分以下に縮んだ(10〜15分 → 5〜7分程度)
- 循環器・整形・心療内科など紹介先の科に応じた書き分けが自然にできるようになった
- 外来後に疲弊した状態で「文章を整える」という作業をしなくて済む
- 「前回の紹介状を流用して上書きする」という悪い習慣が消えた
限界・気をつけていること
- 数値は必ず原本突合: 検査値・薬剤量・体重・年齢。ここは例外なし。AIは渡したメモの数字をそのまま使うことが多いが、メモに転記ミスがあればそのまま紹介状に入ってしまう。最終確認は必ずEMRと見比べる
- 薬剤名の表記: 商品名と一般名、先発と後発をAIが勝手に統一する場合がある。紹介先が確認できるよう、用法・用量も含めて元のメモ通りに直す
- 記載漏れの検出はできない: AIはこちらが渡したメモにないことは書けない。「伝えるべき既往歴」「家族歴」「アレルギー」を書き忘れてメモを渡すと、下書きにも含まれない。チェックリスト的に確認する習慣が要る
- 個人情報の取り扱い: 患者氏名・ID・生年月日はAIに渡す前に伏字化している。完成した下書きの宛名・患者名の部分は転記時に正確に書き直す
- そのまま提出は禁止: AI下書きは必ず一読して修正する。「確認した」という自分の判断を経て初めて送付物になる
横展開
診療情報提供書に限らず、「様式が決まっていてメモ→正式文書に変換するだけ」の書類は同じパターンで効率化できる。退院サマリー、診断書、保険会社向け診療内容証明、産業医向け意見書など、枠組みが存在する文書であればClaudeは整形作業の精度が高い。
医学的な内容と構成の判断は自分がする。その判断を読める文書に整える作業をAIに渡す。この分担の線引きを守る限り、使えるツールだと思っている。