状況
LLM×患者教育の効果を問うSystematic Reviewを進めている。検索対象は「一般人(患者・家族)へのLLM介入が知識・理解・行動変容に与える影響を検討したRCT」。
最初に自分で検索式を組もうとしたが、すぐ詰まった。MeSHの正式名称が思い出せない。"LLM"をPubMedはどう索引しているのか、そもそもMeSHにあるのかも分からない。フリーテキストで突っ込んだら5,000件を超えてしまい、絞り込み条件をどう追加するかで半日消えそうになった。
SRで一番時間を食うのはスクリーニングより前の「検索設計」だと思っている。ここをClaudeと一緒にやったら、大幅に短縮できた。
やったこと
まずPICOを言語で整理して、まるごとClaudeに渡す。
以下のSRのPubMed検索式を組んでください。
【PICO】
P: 一般人(患者・家族・健康成人)
I: LLM(大規模言語モデル)による教育介入
C: 通常教育 or LLMなし
O: 知識・理解・満足度・行動変容のいずれか
【要件】
- 各PICO要素に対応するMeSH termsを選定(PubMedで有効なもののみ)
- フリーテキストと組み合わせた検索式を出力
- 動物実験・case reportを除外する条件を含める
- PubMedに貼れる形式で出力
返ってきた式はこんな形になる。
(
"Patients"[Mesh] OR "Family"[Mesh] OR "Health Literacy"[Mesh]
OR "patient" OR "caregiver" OR "family member"
)
AND
(
"Large Language Models" OR "LLM" OR "ChatGPT" OR "GPT-4"
OR "Artificial Intelligence"[Mesh] OR "Natural Language Processing"[Mesh]
)
AND
(
"Patient Education as Topic"[Mesh] OR "Health Education"[Mesh]
OR "patient education" OR "health communication"
)
AND
(
"Knowledge"[Mesh] OR "Patient Satisfaction"[Mesh]
OR "knowledge" OR "comprehension" OR "health behavior" OR "behavior change"
)
NOT ("Animals"[Mesh] OR "Case Reports"[Publication Type])
これをそのままPubMedに入れて件数を確認する。多すぎたら絞り込みを追加で依頼する。
今の検索式で約1,200件ヒットしました。
RCT・quasi-experimental designに絞り、かつ2020年以降に限定したい。
検索式を修正してください。
これを繰り返して、体感3〜4往復で100〜200件レンジに落ち着く。途中でMeSHが怪しいと思ったら「"Natural Language Processing"[Mesh] はPubMedで有効か確認して」と聞き直す(実際には自分でMeSH Databaseにアクセスして確認する)。
拡張方向に動かしたいときも同じ要領で依頼する。
"LLM" の同義語展開が薄い気がします。
"conversational AI" "generative AI" "foundation model" など
追加すべきフリーテキストを提案してください。
効いたところ
- 検索式の初稿を出すまでの時間が体感で6割減った。ゼロから自分でMeSHを引く作業がなくなる
- ブール演算子の構造(PICO要素間はAND、要素内はOR)を自動で整えてくれるので、論理の抜けが減る
- 「除外条件が足りないと思ったら何を追加するか」を言語で聞けば選択肢が出てくる。自分で全パターンを思い出す必要がない
- 検索式が読みやすいブロック構造で出てくるので、論文の方法欄にそのまま転記しやすい
限界・気をつけていること
ここはAIに任せたまま進めると後で問題が出る。
- MeSH実在確認は自分でやる: ClaudeのMeSH提案は公式MeSH Database(ncbi.nlm.nih.gov/mesh)で必ず確認。存在しないMeSHを自信満々に出してくることがある
- 検索式のロジックは必ず読む: 出力された式を目視で読まずにPubMedに貼らない。NOTの位置が意図と違うことがある
- 件数はPubMedの実数を信じる: 「この検索式で約X件ヒットする」とClaudeが言っても、実際の件数は自分で確認する。AIは検索実行できないので推測値になる
- PubMed以外のDBは別途対応: EMBASE・CINAHLはMeSHではなくEmtree・CINAHLヘディングを使う。PubMed式をそのまま流用しても動かない。別DBの検索式は別セッションでDB固有の語彙を指定して組み直す
- 方法欄への明記: 検索式設計にLLMを補助的に使ったことは論文の方法セクションに明記する
横展開
同じパターンで使えるのは、PICO確定後の検索設計全般。疾患が変わっても、「PICOを整理してClaudeに渡す→出てきた式を確認・調整→PubMedで確認→繰り返す」の流れは変わらない。
他のデータベースでも、MeSHをそのDBの統制語彙に置き換える前提でClaudeに「EMBASEのEmtree版に変換して」と依頼すれば初稿は出る。精度は落ちるが、ゼロから起こすよりは速い。
検索式が固まったあとの一次スクリーニング(abstractのinclude/exclude判定)はまた別のClaudeの使い方になる。そちらはSystematic Reviewの一次スクリーニングを、Claudeで200件→40件に絞るにまとめた。