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クラウドサービス利用時の法的注意点

薬機法のSaMD分類、PMDA承認プロセス、nodoca・EIRL・EndoBRAINの承認事例から規制の実際を学びます

はじめに:nodoca承認の衝撃

2022年4月、アイリス株式会社の咽頭内視鏡画像診断支援AI「nodoca」が、PMDAからAI搭載「新医療機器」としての承認を取得しました。50万枚以上の咽頭画像で学習したこのAIは、インフルエンザの診断を支援します。

nodocaが画期的だった理由は2つあります。第一に、従来の迅速検査(抗原検査)とは異なるアプローチで診断支援を行うAI医療機器として初めて「新医療機器」に分類されたこと。第二に、2022年12月に保険適用(C2区分: 新機能・新技術)を取得し、5万人以上の患者に使用されるなど、商業的にも成功したことです。


薬機法におけるAI:SaMD(Software as a Medical Device)

医療機器の定義

薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)第2条第4項は、医療機器を「人の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されることが目的とされている機械器具等」と定義しています。

視点

SaMD:ソフトウェアだけで医療機器になる

SaMD(Software as a Medical Device): ハードウェアに組み込まれていない、独立したソフトウェアとして機能する医療機器。AI診断支援プログラムの多くはSaMDに該当します。

2014年の薬機法改正で「医療機器プログラム」が法的に定義され、ソフトウェア単体でも医療機器として規制されるようになりました。これにより、AI診断支援アプリやクラウド型AIサービスも薬機法の規制対象に。

医療機器のクラス分類

クラスリスク具体例AI医療機器の例
I低リスク聴診器、メス(該当例は少ない)
II中リスク電子血圧計、MRI装置EIRL(脳動脈瘤検出AI)
III高リスク人工透析器、ペースメーカーEndoBRAIN(内視鏡AI)、nodoca
IV最高リスク植込み型心臓ペースメーカー(現在AI機器の該当例なし)

PMDA承認プロセス

承認の種類

承認類型対象審査機関期間目安
承認(新医療機器)新規性の高い医療機器PMDA → 厚生労働大臣12-24ヶ月
承認(改良医療機器)既存品の改良PMDA → 厚生労働大臣6-12ヶ月
認証基準が定められた医療機器第三者認証機関3-6ヶ月

日本のAI医療機器承認事例

Case Study/ 日本

EIRL:日本初のディープラーニング脳MRI診断AI

開発: エルピクセル株式会社(現: LPIXEL)が開発した脳MRI画像診断支援AI。

承認: 2019年にPMDAから医療機器承認を取得。日本初のディープラーニングを活用した脳MRI診断支援AI。クラスII(管理医療機器)。

性能: 脳動脈瘤の検出感度を68.2%→77.2%に向上。読影時間の短縮にも貢献。

普及: 2024年までに全国47都道府県の医療機関に導入。

Case Study/ 日本

EndoBRAIN:大腸内視鏡AI、2024年保険加点対象に

開発: サイバネットシステム社とNEC、昭和大学が共同開発した大腸内視鏡AI診断支援システム。

承認: 2018年にPMDAからクラスIII(高度管理医療機器)として承認。大腸ポリープの腫瘍性・非腫瘍性の鑑別を支援。精度98%、感度98%。

展開: 派生製品「EndoBRAIN-EYE」は病変検出(スクリーニング)に特化。

2024年の進展: 2024年度診療報酬改定で、EndoBRAIN-EYE使用時のAI加算(60点)が新設。AI医療機器の保険上の経済的評価が進展。


AI医療機器特有の規制課題

継続的学習と変更管理

AI医療機器は、追加データでの再学習によりアルゴリズムが変化する可能性があります。これは従来の医療機器にはない特有の課題です。

問い

考えてみよう

AI医療機器がアップデートされた場合、再度PMDAの承認を受ける必要があるでしょうか?

→ アルゴリズムの本質的な変更(性能特性の変化等)がある場合は、変更承認が必要です。一方、PMDAはIDATEN(Improvement Design within Approval for Timely Evaluation and Notice)という仕組みを導入し、事前に承認された変更計画に基づく改良については、迅速な審査で対応しています。

これは米国FDAのPredetermined Change Control Plan(PCCP)に相当する仕組みで、AI医療機器の継続的改良を可能にする規制イノベーションです。

「診断を行う」vs「診断を支援する」

AI医療機器の薬機法上の位置づけは、AIが何をするかによって大きく変わります:

機能法的位置づけ
疾患の検出・判定を行い、結果を医師に提示医療機器プログラム(薬機法の規制対象)nodoca、EIRL、EndoBRAIN
データの表示・整理のみ(判定なし)非医療機器(薬機法の規制対象外)バイタルサインの表示アプリ
一般的な健康情報の提供非医療機器運動量トラッカー、食事記録アプリ
SourceDOCUMENTATION
AIを活用した医療機器に関する指針

AI医療機器の審査に関するPMDAの指針。SaMDの分類基準と審査のポイント

ガイドラインPMDA
pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/devices/0028.html

まとめ

AI診断支援システムの規制は、薬機法のSaMD分類を軸に構築されています。nodoca、EIRL、EndoBRAINの承認事例が示すように、日本のPMDAは世界に先駆けてAI医療機器の審査体制を整備してきました。IDATENによる継続的改良の仕組みも、AI特有の「学習し続ける」性質に対応する重要な制度です。

次のレッスンでは、AI診断の法的責任を学びます。

明日のアクション

自施設で導入済みまたは導入検討中のAI診断支援システムについて、PMDAの承認・認証番号を確認しましょう。承認番号が確認できない場合は、「医療機器プログラム」に該当するか否かをベンダーに確認し、該当する場合は未承認医療機器の使用リスクを評価してください。