NotebookLMとは何か
3行でわかるNotebookLM
- 自分のガイドライン・論文・資料をアップロードする
- 日本語で質問する
- 引用ページ付きで回答が返ってくる
Googleが無料で提供しているAIツールで、Googleアカウントがあれば今日から使える。Google DeepMindのCEO、デミス・ハサビス自身が「自分のお気に関りのAIツール」「まだ過小評価されている」と発言している。
ChatGPTとの決定的な違い
ChatGPTやClaudeは、インターネット上の膨大なデータを学習した汎用AIだ。何でも答えてくれる代わりに、存在しない論文を引用したり、古いガイドラインの内容を最新のように答えたりする。ハルシネーションと呼ばれる現象で、医療では致命的になりうる。
NotebookLMの設計思想はまったく違う。
「自分がアップロードしたドキュメントの中だけから答える」。
これが全てだ。AIが外部の知識を勝手に補完しないので、回答の根拠が常にトレースできる。引用をクリックすれば元のドキュメントの該当箇所に飛べる。「なぜそう答えたのか」が必ず確認できる。
ChatGPTとNotebookLMの使い分け
- ChatGPT / Claude: 汎用的な質問、文章作成、アイデア出し、コード補助
- NotebookLM: 自分の資料に対する質問、引用付きの情報検索、資料の横断分析
どちらが優れているという話ではない。目的が違う。
どれくらい正確なのか — 数字で見る
言葉だけだと信じにくいので、査読論文のデータを見てほしい。
日本の放射線科医チーム(Tozuka et al.)が、肺癌取扱い規約をNotebookLMにアップロードし、100症例のTNMステージングをさせた。結果、NotebookLMの正確度は86%。同じタスクをGPT-4oにやらせると25〜39%だった [1]。
差がついた理由は単純だ。NotebookLMはアップロードされた規約の中だけから答える。GPT-4oは学習データ全体から「それっぽい答え」を出す。ガイドラインに忠実に答える必要があるタスクでは、NotebookLMの設計が圧倒的に有利になる。
2026年、医師の間で広がっている
もう一つの重要な論文がある。台湾の肺専門医チーム(Hsu et al.)がGINA(喘息)とGOLD(COPD)のガイドラインをNotebookLMにアップロードし、救急医療スタッフ20名に使わせた。肺専門医3名が回答の適切性を独立に評価した結果、67%が平均以上の評価。使ったスタッフの80%が有用と回答し、55%が専門医コンサルテーションの時間短縮になると答えた [2]。
コーディングゼロ。コスト最小限。医師が自分の手でAI臨床支援システムを作れることが、査読論文として証明された。
日本でも動きがある。皮膚科の大塚篤司先生はアトピー性皮膚炎ガイドラインをアップロードし、専門医試験対策のクイズを自動生成するワークフローを紹介し、医学書院から書籍化された [3]。飯塚浩也先生は複数論文の横断比較にNotebookLMを活用する方法を「医学のあゆみ」に報告している [4]。
NotebookLMの限界
万能ではない。押さえておくべき限界が3つある。
ハルシネーションは「ほぼゼロ」だが「完全ゼロ」ではない。 ミシガン州立大のReuter et al.がNotebookLMの臨床応答を検証し、複数ドキュメントの統合時に誤解釈や引用の不正確さが生じる例を報告している [5]。回答は必ず引用元と照合する習慣が要る。
アップロードした資料が古ければ、古い情報が返る。 ガイドラインが改訂されたら最新版に差し替える。NotebookLMが勝手にアップデートしてくれるわけではない。
患者の個人情報は入れない。 GoogleのクラウドサービスなのでGoogleのデータポリシーに準じる。ガイドライン、論文、匿名化された院内プロトコルに限定して使う。
まとめ
- NotebookLMは「自分の資料の中だけから答えるAI」
- 肺癌TNMステージングで正確度86%(GPT-4oは25-39%)
- 台湾の救急、日本の皮膚科・放射線科で査読論文レベルの実績
- 無料、Googleアカウントだけで始められる
- 次のレッスンで実際にノートブックを作ってみる
参考文献
- Tozuka R, Johno H, Amakawa A, et al. Japanese Journal of Radiology. 2024. (arXiv: 2410.10869)
- Hsu CH, Hsu CL, et al. JMIR Medical Informatics. 2026;14:e78567.
- 大塚篤司. 医師による医師のためのChatGPT入門2. 医学書院, 2024.
- 飯塚浩也. 医学のあゆみ. 2026;297(2):179-184.
- Reuter M, Philippone M, et al. Eye. 2025;39:1650-1652.