相関とは何か
相関の定義
相関は2つの変数間の線形関係の強さと方向を表します。
相関の3つのパターン
正の相関
一方が増えると他方も増える(例:年齢と収縮期血圧)
負の相関
一方が増えると他方が減る(例:運動量と体脂肪率)
相関なし
2変数間に線形関係がない
相関係数(r)
ピアソンの相関係数は −1 から 1 の値をとります。
| r の値 | 解釈 |
|---|---|
| r = 1 | 完全な正の相関 |
| r = 0 | 相関なし |
| r = −1 | 完全な負の相関 |
実用的な目安は以下のとおりです。
| |r| の範囲 | 関連の強さ | |---|---| | 0.7 以上 | 強い相関 | | 0.3 〜 0.7 | 中程度の相関 | | 0.3 未満 | 弱い相関 |
注意
ピアソンのrは線形関係のみを捉える
ピアソンの相関係数は直線的な関係だけを測定します。U字型やJ字型などの非線形関係がある場合、r ≒ 0 でも実際には強い関連があることがあります。たとえば BMI と死亡率はJ字型(U字型)の関係を示しますが、相関係数だけでは見逃すため、散布図を必ず描きましょう。
相関と因果の違い

根本原則
相関は因果関係を意味しない(Correlation does not imply causation)
交絡因子の存在
医療での例:
- コーヒー摂取量と肺がん発症率に正の相関が観察された
- しかしコーヒーが肺がんの原因ではなく、コーヒーをよく飲む人は喫煙率も高い傾向があった
- 交絡因子(喫煙)を調整すると相関は消失した
視点
因果関係を示すための条件
因果関係を示すにはBradford Hillの基準(関連の強さ、一貫性、特異性、時間的関係、量反応関係、生物学的妥当性、整合性、実験的証拠、類似性の9つ)が参考になります。最も強力な因果推論の手法はランダム化比較試験(RCT)です。
回帰分析の基礎
回帰分析とは
回帰分析は、1つ以上の説明変数(独立変数)から目的変数(従属変数)を予測・説明する統計手法で、相関分析が「関連があるか」を見るのに対し「どの程度予測できるか」を定量化します。
単回帰分析
1つの説明変数から目的変数を予測します。
y = a + bx
- y: 目的変数(予測したい変数、例:収縮期血圧)
- x: 説明変数(予測に使う変数、例:年齢)
- a: 切片(xが0のときのyの推定値)
- b: 回帰係数(xが1単位増えたときのyの変化量)
たとえば「年齢と収縮期血圧」の回帰分析で y = 80 + 0.5x が得られた場合、年齢が1歳上がるごとに収縮期血圧は約0.5mmHg上昇すると解釈できます。
重回帰分析
複数の説明変数を同時に考慮する分析です。
y = a + b₁x₁ + b₂x₂ + ... + bₙxₙ
単回帰と重回帰の違い
説明変数は1つだけ
交絡因子の影響を受けやすい
年齢・性別・BMIなど複数の説明変数を同時投入
交絡因子を調整し、各因子の独立した影響を評価できる
回帰分析の評価
決定係数(R²)
決定係数はモデルの当てはまりの良さ(説明力)を0から1で表します。
| R² | 解釈 |
|---|---|
| 0.8 | 説明変数がアウトカムの変動の80%を説明 |
| 0.3 | 説明変数がアウトカムの変動の30%を説明 |
比較
R²の目安は分野によって異なる
物理学などの精密科学ではR² > 0.9が求められますが、生物医学研究ではR² = 0.3〜0.5でも有用なモデルとされます(人間の生体データは個人差が大きく、100%の説明は現実的ではないため)。R²の絶対値よりも、臨床的に有用な予測ができるかどうかが重要です。
残差の確認
残差(実測値と予測値の差)のパターンは、モデルの妥当性を判断する上で重要です。
残差パターンの読み方
ランダムに散らばる
モデルは適切
U字型などのパターンがある
非線形の関係がある可能性
外れ値がある
影響力の強いデータ点の確認が必要
医療研究での活用
回帰分析の医療研究への応用例
血圧と年齢の関係
単回帰で年齢から血圧を予測。塩分摂取や運動習慣など他因子の影響も大きく、重回帰が望ましい
薬物投与量と効果の関係
用量反応関係の評価と最適投与量の決定。非線形の関係にはロジスティック回帰や非線形回帰を使う
リスクスコアの開発
複数の臨床パラメータを組み合わせて予測モデルを構築(Framinghamリスクスコア、CHA₂DS₂-VAScスコアなど)
セルフチェック
1. 観察研究で「コーヒー摂取量と心疾患リスクに負の相関」が見つかった場合、適切な解釈はどれか?
2. 重回帰分析において、回帰係数b₁ = 0.5(年齢)の解釈として正しいのはどれか?
明日のアクション
Excelまたは統計ソフトを使い、公開されている医療データ(例:年齢と収縮期血圧、BMIと空腹時血糖など)で散布図を描き、相関係数を計算してみましょう。次に単回帰分析を行い、回帰式とR²を求めて「xが10増えたらyはどのくらい変わるか」を解釈してください。
参考文献
- Bland JM, Altman DG. Statistical methods for assessing agreement between two methods of clinical measurement. Lancet. 1986;1(8476):307-310. DOI 10.1016/S0140-6736(86)90837-8
- von Elm E, Altman DG, Egger M, et al. The Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology (STROBE) statement: guidelines for reporting observational studies. Lancet. 2007;370(9596):1453-1457. DOI 10.1016/S0140-6736(07)61602-X