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レッスン 13 / 14|28分で読めます

AIで、もっと賢くする

公開できた次は、もっと賢く動いてほしくなります。AIやMCPで外部とつなぎ、SKILL.mdに自分のルールを書いて、育てている物を賢く動かす回です。ドリルなら、たまった記録から弱点を自動で分析させ、その分析を自分の目で検証します。

前回、自分の物をついに公開しました。 人に使ってもらえる形になった。 ここまで来ると、たぶん次の欲が湧いているはずです。

公開はできた。 でも、もっと賢く動いてほしい。 今は決まった通りに動くだけで、こちらが手を動かさないと何も起きない。 この手間を、減らしたい。

今日はそこに手を入れます。 育てている物を、AIや外部のサービスとつないで、賢く、自動で動かす。 その方法を一緒にやります。

今日のゴールと、任せ方

今日の普遍スキルは、たまった記録から次の一手をAIに出させることです。

ドリルなら、弱点の自動分析です。 正答率、忘れやすさ、分野タグを見て、「次に復習するのはここ」と言葉にしてもらう。

別の物なら、形だけ置き換えれば同じです。 家計簿なら、支出記録から減らせそうな費目を提案してもらう。 ゲームなら、プレイ記録から難易度を調整してもらう。 記録を読んで、次の一手を出す。 ここが共通です。

ただし、任せきりにはしません。 AIの分析も、自分の目で検証します。 数字を拾うのはAI。 その数字の意味を判断するのは自分です。

視点

今日の二重役割

今日のあなたは、二つの役を同時にやります。記録から傾向を拾わせる「頼む人」と、その傾向の意味を判断する「診る人」です。数字を拾うのはAI、その数字が何を意味するかを決めるのは自分。この線引きが、今日の肝です。

ステップ1。手間が残っている場所を見る

今あなたが育てている物は、たぶん、決まった通りに動いています。 ボタンを押せばこれが出る。 入力すればこれが返る。 それ自体は完成です。

でも、賢くはありません。 たまった情報を読んで、次に何をすべきか考えて、先回りする。 そういう動きは、まだしていない。

たとえば弱点ドリルなら、成績がグラフになって、内分泌は低い、感染症は安定している、と見えるようになりました。 記録も残る。 推移も追える。 見える化はかなり育っています。

でも、グラフを見て「内分泌が低いな」と読み取り、「じゃあ次は内分泌を重点的に出そう」と決める。 この読んで決めるが、毎回、自分の頭の中の手作業なんです。 しかも忙しいと、グラフを開くこと自体を忘れます。 せっかく貯めた記録が、次の一手に繋がらない。

別の物を育てている人も、形は同じです。 家計簿アプリなら、たまった支出を見て「今月は外食が多い」と気づくのが手作業。 ゲームなら、プレイ記録を見て難易度を調整するのが手作業。 どれも、貯まった記録はあるのに、そこから次の一手を引き出すのは自分の頭。 ここをAIに任せます。

ステップ2。外とつないで、賢くする

賢く動かすと言うとき、中心になるのは、外とつなぐことです。 AIに記録を読ませて考えさせる。 あるいはMCPという仕組みで、外部のサービスやデータに手を伸ばす。 自分の物が、自分の殻の外と話せるようになる。 これが、賢くなるということです。

SourceARTICLE
Model Context Protocol(公式)

AIを外部のデータや道具とつなぐ仕組み(MCP)。賢く・自動で動かす土台。

Web
modelcontextprotocol.io
MCPで弱点ドリルがAIや外部サービスとつながる図。中央にMCPの接続口があり、下にSKILL.mdへ自分の言葉でルールを書くと示している
MCPは、自分の物がAIや外部サービスと話すための接続口です。判断の中身は、SKILL.mdに自分の言葉で書きます。

ただし、汎用のAIにそのまま聞くだけでは、当たり障りのない答えしか返りません。 だから、自分のルールをAIに渡して、専門化します。 賢さの中身を、自分が決める。 ここが今日の肝です。

ステップ3。AIに渡すルールを決める

いつものスライダーです。 AIにどこまで任せるか。 今日は、はっきり左寄りに置きます。

任せきりにはしません。 自分が「何を見て、どう判断するか」というルールを言葉にして、AIに渡す。 AIはそのルールに沿って作業するだけ。 判断の中身は自分が握る。 これが、AIを自分専用に専門化するということです。

たとえるなら、このルールは、AIへの専門マニュアルです。 汎用のAIは、よくできた研修医のようなもの。 優秀だけれど、あなたの方針は知りません。 そこに、自分の基準を書いた手引きを渡して、専門化する。 研修医に院内の手順書を渡すのと同じです。

この手引きのファイルを、SKILL.mdと呼びます。 難しい名前ですが、中身はただのテキストファイル一枚です。 そこに、自分の方針を、自分の言葉で書くだけ。

今日のゴールを一文にすると、こうなります。 自分の判断ルールをAIに渡して、たまった記録から次の一手を、自動で出させる。 これができたらゴールです。

手を動かす

あなたが育てている物で、AIに任せたい判断を、1文で書いてください。

ドリルなら「直近で2回続けて落とした分野を弱点とする」でもいいし、「正解しても2週間で落ちる分野」でもいい。 別の物なら、家計簿の「減らすべき費目の決め方」でも、ゲームの「難易度を上げる条件」でもいい。 あなたの基準で構いません。

ここで一度、自分の手で試してください。 その1文が書けたら、完了です。

ステップ4。たまった記録を分析させる

弱点ドリルで、やってみます。 本棚に、自分の挑戦記録が貯まっています。 日付、分野、正解か不正解か。 患者情報は一切ありません。 自分の正解率データだけです。

まずAIに頼みます。 注文書を書く感覚です。 診療で指示を出すのと同じで、何を見て何を返してほしいかを、はっきり書きます。

たとえば、次の文を、そのまま貼り付けます(右上のボタンでコピーできます)。

この挑戦記録を分析して、私の弱点を教えてください。
どの分野の正解率が低いか。
一度正解しても時間が経つと落ちる分野はどれか。
次に重点的に復習すべき分野を、優先度順に出してください。
記録は私自身の正解率データで、患者情報は含みません。

すると、こんな答えが返ってきます。 内分泌の正解率が低く、一度正解しても2週間ほどで落ちています。 感染症は安定しています。 次の優先度は、1位が内分泌、2位が成長発達、3位が循環器です。

弱点自動分析の前に、PHIを含まない分野ラベルと正答履歴を確認している実画面
AIに渡す前に、材料が分野ラベルと正答数だけになっているかを見ます。画像内の履歴はPHIを含まないダミーです。
PHIを含まない分野ラベルと正答数だけを見て、次に復習する分野を提案する実画面です。
感染症、内分泌、循環器のダミー履歴から、内分泌を次に復習する分野として提案している実画面
AIに任せる前に、入力が分野ラベルと正答数だけで足りているかを確認します。画面内の履歴はダミーです。

グラフは、低い場所を見せました。 AIは、低くて、しかも忘れやすいから、ここを先にやる、まで返してくる。 読んだ結果を、言葉で、優先度付きでくれるわけです。

別の物でも、頼み方は同じです。 家計簿なら「この支出記録を分析して、減らせそうな費目を優先度順に」。 育てている物にたまった記録を渡して、次の一手を言葉で返させる。 ここは共通です。

ステップ5。AIの分析を、自分の目で検証する

ここで一つ、わざと外させてみます。 「では、優先度1位の内分泌から、問題を1問出して」と頼んでみる。 出してきた問題に、実は循環器の問題が混じっていました。

AIは正解率の数字は読めても、その問題が本当にその分野のものかまでは保証してくれません。 だから、ここで医師の目が要ります。

AIが言ったから正しい、ではありません。 医者の目で見ます。 今のは分野のラベルが違っただけですが、放っておくと「内分泌が弱い」と言いながら循環器を出し続ける、おかしな専門化になります。 だから「今の問題は循環器なので、内分泌の問題に差し替えて」と指摘して直させます。

これで揃いました。

頼む、出る、検証する、直す。 この4つのビートが、ここでも回っています。

ステップ6。SKILL.mdに、自分のルールを書く

ルールは書けましたか。 次は、その判断をAIに毎回口で渡さなくて済むように、手引きとして残します。 これがSKILL.mdです。 中身はただのテキストファイル一枚。 そこに、自分の方針を、自分の言葉で書くだけです。

ファイルをどこに置くか、どう読み込ませるかといった手順の細かいところは、learn側の教材にまとめてあります。 ここでは、何を書くかに集中します。

ドリルで書く中身を、言葉にしてみます。 次のような内容を、SKILL.mdに書いておきます(右上のボタンでコピーできます)。

# 弱点ドリルの判定ルール

- 弱点とは、直近2回続けて落とした分野、または正解しても2週間以内に落ちた分野とする。
- 優先度は、忘れやすさを正解率より重く見る。
- 出題は弱点分野から、易しい問題を1問先に出す。
- 採点は、根拠まで言えて初めて正解とみなす。

ここがこの回の中心です。 自分の判断ルールを、自分の言葉で書く。 これは、汎用の研修医に、自分の専門外来の手順書を渡す作業です。

書き終えたら、AIに読ませて、「これからはこのSKILL.mdに従って判定して」と頼みます。 すると、次からは一言で済みます。 ドリルなら「弱点チェックして」。 さっき書いた方針どおりに、弱点と優先度が返ってくる。 汎用のAIが、自分の方針を持った専門のAIに変わったわけです。 育てている物が、ひとつ賢くなりました。

手を動かす

自分のSKILL.mdに、判断ルールを自分の言葉で1行足してください。

さっきの「試行5回未満は外す」のような、自分の感覚に合うルールでいい。

足したら、もう一度AIに分析を頼んで、出てきた結果が自分の感覚から見て妥当かを、自分で確かめてください。 ここで一度、自分の手で試してください。 妥当な結果が出たら、完了です。

ステップ7。その判定は、妥当か

動きました。 でも、ここで終わりません。 AIの分析も、自分の目で検証します。 出てきた優先度が妥当かを、自分の目で見る。 検証の3観点はいつも同じです。 医学的に正しいか、自分の使い方に合っているか、安全か。

たとえばAIが「最優先は内分泌」と言ったとします。 でも自分の感覚では、内分泌はむしろ得意なはず。 ここでズレが出たら、立ち止まります。 データを見ると、内分泌は試行回数がまだ3回しかなくて、たまたま落ちた1回が効きすぎていた。 これは弱点ではなく、データ不足です。 ルールに「試行5回未満の分野は優先度から外す」と書き足して直します。

逆に、自分では得意なつもりの感染症が最優先に出てきたら、それはむしろ拾い物です。 得意なつもりで、実は時間が経つと落ちている。 自分では気づきにくい思い込みの穴を、データが見つけてくれた。 これは、所見を思い込みで見落とすのと同じ構造で、見つかると効きます。

ステップ8。この分析を、どこまで信用するか決める

ここで一度、医師として疑っておきます。 AIが「あなたの弱点はここ」と言った。 これ、本当に信用していいのでしょうか。

信用していいのは、傾向の部分だけです。 内分泌の正解率が低い。 感染症は安定している。 忘れやすい分野がある。 こういうデータ上の傾向は、自分が書いたルールに沿って機械的に拾っているので、信じていい。

でも、そこから先、「だからこの知識を覚えろ」と出てくる問題や解説の中身が医学的に正しいかは、別問題です。 これは必ずガイドラインで確認します。 傾向の抽出はAI。 医学的事実の確認は自分。 ここは線を引きます。

別の物を育てている人も、線の引き方は同じです。 記録から拾った傾向はAIに任せていい。 でも、その傾向を受けた「だからこうしろ」が自分にとって本当に正しいかは、自分で確かめる。 AIの分析を、鵜呑みにしない。

今日の成長差分

Beforeは、こうでした。 育てている物は決まった通りに動くだけで、たまった記録から次の一手を引き出すのは、毎回自分の頭の中の手作業でした。

Afterは、こうです。 今日、自分の判断ルールを書いたSKILL.mdが動いて、一言で、次の一手が自動で返ってくるようになりました。 ドリルなら「弱点チェックして」の一言で、弱点と次の優先度が返ってくる。

これで、汎用のAIが、自分の方針を持った専門のAIになりました。 読んで決める手作業が、自分の書いたルールに置き換わったわけです。

補足

今日持って帰るもの

傾向を拾うのはAI、その意味を決めるのは自分。この線を引いたうえで、自分の判断ルールをSKILL.mdに書いて渡すと、汎用のAIが自分専用の専門AIに変わります。読んで決める手作業が、自分の言葉で書いたルールに置き換わります。

安全ライン

ドリルで今日SKILL.mdに書いたのは、学習方針だけです。 出題ルール、採点ルール、弱点の定義。 これらは自分の試験勉強の話で、患者は一人も出てきません。

注意

便利になるほど、ここを守る

自動化が便利になると、つい「この患者の優先度も出させよう」とカルテを投げたくなります。その誘惑が増えます。でも、入れないのは人間の責務です。これは学習用の弱点ドリルで、患者情報は入れません。本番で似たことをするなら、必ず施設のルールを確認してください。

問い

つまずいたら

このレッスンの作業で起きがちな詰まりと、その抜け方です。

  • 分析を頼んでも当たり障りのない答えしか返らない → 注文書が漠然としています。「どの分野の正解率が低いか」「優先度順に」のように、何を見て何を返してほしいかを一文ずつ分けて書き直す。
  • AIの分析が自分の感覚とズレる → AIを疑う前に、まず元の記録を自分の目で見る。試行回数が少ない分野が混じっていないか、注文書(条件)と返ってきた結果を見比べる。
  • SKILL.mdに書いても方針どおりに動かない → ルールが解釈で揺れる書き方かもしれません。「弱点とは直近2回続けて落とした分野」のように、AIが判定に迷わない一文に絞って書き直す。鍵やパスワードはSKILL.mdにもAIにも貼らず、判定ルールだけを書く。

理解度チェック

セルフチェック

1. AIに弱点を分析させるとき、傾向の抽出と医学的事実の確認の役割分担として、正しいのはどれですか。

2. SKILL.mdは、何のためのファイルですか。

次回へ

今日できたこと。 育てている物を、ひとつ賢くしました。 たまった記録を自動で読んで、次の一手まで出せるようになった。

でも、まだ足りないところがあります。 賢くはなったけれど、その分析を引き出すのは、まだ自分です。 ドリルなら、毎日自分で「弱点チェックして」と打たないと動かない。 忘れたころに向こうから出てくる、まではいっていません。

賢くなった。 でも、毎日自分で開かないと回らない。 本当に欲しいのは、勝手に、毎日、向こうから動いてくれることです。 自分が手を動かさなくても、育てている物が回り続ける。 そこまで持っていきたい。 運用に乗せたい。

次回がついに最終回です。 今日作った判定を使って、放っておいても向こうから動く形にします。 忘れたころに、苦手なところが、自分から出てくる。

最終回では、AIが「ここを直しておいた」と言ってきたとき、その言葉をそのまま信じずに、何を変えたかの証拠を自分で見てから承認する。 この承認の作法も一緒にやります。 Lv1で植えた1問の種が、最後まで育って、本物の道具になる。 その完成を、一緒に見届けましょう。