前回、自分の物をついに公開しました。 人に使ってもらえる形になった。 ここまで来ると、たぶん次の欲が湧いているはずです。
公開はできた。 でも、もっと賢く動いてほしい。 今は決まった通りに動くだけで、こちらが手を動かさないと何も起きない。 この手間を、減らしたい。
今日はそこに手を入れます。 育てている物を、AIや外部のサービスとつないで、賢く、自動で動かす。 その方法を一緒にやります。
今日のゴールと、任せ方
今日の普遍スキルは、たまった記録から次の一手をAIに出させることです。
ドリルなら、弱点の自動分析です。 正答率、忘れやすさ、分野タグを見て、「次に復習するのはここ」と言葉にしてもらう。
別の物なら、形だけ置き換えれば同じです。 家計簿なら、支出記録から減らせそうな費目を提案してもらう。 ゲームなら、プレイ記録から難易度を調整してもらう。 記録を読んで、次の一手を出す。 ここが共通です。
ただし、任せきりにはしません。 AIの分析も、自分の目で検証します。 数字を拾うのはAI。 その数字の意味を判断するのは自分です。
視点
今日の二重役割
今日のあなたは、二つの役を同時にやります。記録から傾向を拾わせる「頼む人」と、その傾向の意味を判断する「診る人」です。数字を拾うのはAI、その数字が何を意味するかを決めるのは自分。この線引きが、今日の肝です。
ステップ1。手間が残っている場所を見る
今あなたが育てている物は、たぶん、決まった通りに動いています。 ボタンを押せばこれが出る。 入力すればこれが返る。 それ自体は完成です。
でも、賢くはありません。 たまった情報を読んで、次に何をすべきか考えて、先回りする。 そういう動きは、まだしていない。
たとえば弱点ドリルなら、成績がグラフになって、内分泌は低い、感染症は安定している、と見えるようになりました。 記録も残る。 推移も追える。 見える化はかなり育っています。
でも、グラフを見て「内分泌が低いな」と読み取り、「じゃあ次は内分泌を重点的に出そう」と決める。 この読んで決めるが、毎回、自分の頭の中の手作業なんです。 しかも忙しいと、グラフを開くこと自体を忘れます。 せっかく貯めた記録が、次の一手に繋がらない。
別の物を育てている人も、形は同じです。 家計簿アプリなら、たまった支出を見て「今月は外食が多い」と気づくのが手作業。 ゲームなら、プレイ記録を見て難易度を調整するのが手作業。 どれも、貯まった記録はあるのに、そこから次の一手を引き出すのは自分の頭。 ここをAIに任せます。
ステップ2。外とつないで、賢くする
賢く動かすと言うとき、中心になるのは、外とつなぐことです。 AIに記録を読ませて考えさせる。 あるいはMCPという仕組みで、外部のサービスやデータに手を伸ばす。 自分の物が、自分の殻の外と話せるようになる。 これが、賢くなるということです。
AIを外部のデータや道具とつなぐ仕組み(MCP)。賢く・自動で動かす土台。

ただし、汎用のAIにそのまま聞くだけでは、当たり障りのない答えしか返りません。 だから、自分のルールをAIに渡して、専門化します。 賢さの中身を、自分が決める。 ここが今日の肝です。
ステップ3。AIに渡すルールを決める
いつものスライダーです。 AIにどこまで任せるか。 今日は、はっきり左寄りに置きます。
任せきりにはしません。 自分が「何を見て、どう判断するか」というルールを言葉にして、AIに渡す。 AIはそのルールに沿って作業するだけ。 判断の中身は自分が握る。 これが、AIを自分専用に専門化するということです。
たとえるなら、このルールは、AIへの専門マニュアルです。 汎用のAIは、よくできた研修医のようなもの。 優秀だけれど、あなたの方針は知りません。 そこに、自分の基準を書いた手引きを渡して、専門化する。 研修医に院内の手順書を渡すのと同じです。
この手引きのファイルを、SKILL.mdと呼びます。 難しい名前ですが、中身はただのテキストファイル一枚です。 そこに、自分の方針を、自分の言葉で書くだけ。
今日のゴールを一文にすると、こうなります。 自分の判断ルールをAIに渡して、たまった記録から次の一手を、自動で出させる。 これができたらゴールです。
手を動かす
あなたが育てている物で、AIに任せたい判断を、1文で書いてください。
ドリルなら「直近で2回続けて落とした分野を弱点とする」でもいいし、「正解しても2週間で落ちる分野」でもいい。 別の物なら、家計簿の「減らすべき費目の決め方」でも、ゲームの「難易度を上げる条件」でもいい。 あなたの基準で構いません。
ここで一度、自分の手で試してください。 その1文が書けたら、完了です。
ステップ4。たまった記録を分析させる
弱点ドリルで、やってみます。 本棚に、自分の挑戦記録が貯まっています。 日付、分野、正解か不正解か。 患者情報は一切ありません。 自分の正解率データだけです。
まずAIに頼みます。 注文書を書く感覚です。 診療で指示を出すのと同じで、何を見て何を返してほしいかを、はっきり書きます。
たとえば、次の文を、そのまま貼り付けます(右上のボタンでコピーできます)。
この挑戦記録を分析して、私の弱点を教えてください。
どの分野の正解率が低いか。
一度正解しても時間が経つと落ちる分野はどれか。
次に重点的に復習すべき分野を、優先度順に出してください。
記録は私自身の正解率データで、患者情報は含みません。
すると、こんな答えが返ってきます。 内分泌の正解率が低く、一度正解しても2週間ほどで落ちています。 感染症は安定しています。 次の優先度は、1位が内分泌、2位が成長発達、3位が循環器です。


グラフは、低い場所を見せました。 AIは、低くて、しかも忘れやすいから、ここを先にやる、まで返してくる。 読んだ結果を、言葉で、優先度付きでくれるわけです。
別の物でも、頼み方は同じです。 家計簿なら「この支出記録を分析して、減らせそうな費目を優先度順に」。 育てている物にたまった記録を渡して、次の一手を言葉で返させる。 ここは共通です。
ステップ5。AIの分析を、自分の目で検証する
ここで一つ、わざと外させてみます。 「では、優先度1位の内分泌から、問題を1問出して」と頼んでみる。 出してきた問題に、実は循環器の問題が混じっていました。
AIは正解率の数字は読めても、その問題が本当にその分野のものかまでは保証してくれません。 だから、ここで医師の目が要ります。
AIが言ったから正しい、ではありません。 医者の目で見ます。 今のは分野のラベルが違っただけですが、放っておくと「内分泌が弱い」と言いながら循環器を出し続ける、おかしな専門化になります。 だから「今の問題は循環器なので、内分泌の問題に差し替えて」と指摘して直させます。
これで揃いました。
頼む、出る、検証する、直す。 この4つのビートが、ここでも回っています。
ステップ6。SKILL.mdに、自分のルールを書く
ルールは書けましたか。 次は、その判断をAIに毎回口で渡さなくて済むように、手引きとして残します。 これがSKILL.mdです。 中身はただのテキストファイル一枚。 そこに、自分の方針を、自分の言葉で書くだけです。
ファイルをどこに置くか、どう読み込ませるかといった手順の細かいところは、learn側の教材にまとめてあります。 ここでは、何を書くかに集中します。
ドリルで書く中身を、言葉にしてみます。 次のような内容を、SKILL.mdに書いておきます(右上のボタンでコピーできます)。
# 弱点ドリルの判定ルール
- 弱点とは、直近2回続けて落とした分野、または正解しても2週間以内に落ちた分野とする。
- 優先度は、忘れやすさを正解率より重く見る。
- 出題は弱点分野から、易しい問題を1問先に出す。
- 採点は、根拠まで言えて初めて正解とみなす。
ここがこの回の中心です。 自分の判断ルールを、自分の言葉で書く。 これは、汎用の研修医に、自分の専門外来の手順書を渡す作業です。
書き終えたら、AIに読ませて、「これからはこのSKILL.mdに従って判定して」と頼みます。 すると、次からは一言で済みます。 ドリルなら「弱点チェックして」。 さっき書いた方針どおりに、弱点と優先度が返ってくる。 汎用のAIが、自分の方針を持った専門のAIに変わったわけです。 育てている物が、ひとつ賢くなりました。
手を動かす
自分のSKILL.mdに、判断ルールを自分の言葉で1行足してください。
さっきの「試行5回未満は外す」のような、自分の感覚に合うルールでいい。
足したら、もう一度AIに分析を頼んで、出てきた結果が自分の感覚から見て妥当かを、自分で確かめてください。 ここで一度、自分の手で試してください。 妥当な結果が出たら、完了です。
ステップ7。その判定は、妥当か
動きました。 でも、ここで終わりません。 AIの分析も、自分の目で検証します。 出てきた優先度が妥当かを、自分の目で見る。 検証の3観点はいつも同じです。 医学的に正しいか、自分の使い方に合っているか、安全か。
たとえばAIが「最優先は内分泌」と言ったとします。 でも自分の感覚では、内分泌はむしろ得意なはず。 ここでズレが出たら、立ち止まります。 データを見ると、内分泌は試行回数がまだ3回しかなくて、たまたま落ちた1回が効きすぎていた。 これは弱点ではなく、データ不足です。 ルールに「試行5回未満の分野は優先度から外す」と書き足して直します。
逆に、自分では得意なつもりの感染症が最優先に出てきたら、それはむしろ拾い物です。 得意なつもりで、実は時間が経つと落ちている。 自分では気づきにくい思い込みの穴を、データが見つけてくれた。 これは、所見を思い込みで見落とすのと同じ構造で、見つかると効きます。
ステップ8。この分析を、どこまで信用するか決める
ここで一度、医師として疑っておきます。 AIが「あなたの弱点はここ」と言った。 これ、本当に信用していいのでしょうか。
信用していいのは、傾向の部分だけです。 内分泌の正解率が低い。 感染症は安定している。 忘れやすい分野がある。 こういうデータ上の傾向は、自分が書いたルールに沿って機械的に拾っているので、信じていい。
でも、そこから先、「だからこの知識を覚えろ」と出てくる問題や解説の中身が医学的に正しいかは、別問題です。 これは必ずガイドラインで確認します。 傾向の抽出はAI。 医学的事実の確認は自分。 ここは線を引きます。
別の物を育てている人も、線の引き方は同じです。 記録から拾った傾向はAIに任せていい。 でも、その傾向を受けた「だからこうしろ」が自分にとって本当に正しいかは、自分で確かめる。 AIの分析を、鵜呑みにしない。
今日の成長差分
Beforeは、こうでした。 育てている物は決まった通りに動くだけで、たまった記録から次の一手を引き出すのは、毎回自分の頭の中の手作業でした。
Afterは、こうです。 今日、自分の判断ルールを書いたSKILL.mdが動いて、一言で、次の一手が自動で返ってくるようになりました。 ドリルなら「弱点チェックして」の一言で、弱点と次の優先度が返ってくる。
これで、汎用のAIが、自分の方針を持った専門のAIになりました。 読んで決める手作業が、自分の書いたルールに置き換わったわけです。
補足
今日持って帰るもの
傾向を拾うのはAI、その意味を決めるのは自分。この線を引いたうえで、自分の判断ルールをSKILL.mdに書いて渡すと、汎用のAIが自分専用の専門AIに変わります。読んで決める手作業が、自分の言葉で書いたルールに置き換わります。
安全ライン
ドリルで今日SKILL.mdに書いたのは、学習方針だけです。 出題ルール、採点ルール、弱点の定義。 これらは自分の試験勉強の話で、患者は一人も出てきません。
注意
便利になるほど、ここを守る
自動化が便利になると、つい「この患者の優先度も出させよう」とカルテを投げたくなります。その誘惑が増えます。でも、入れないのは人間の責務です。これは学習用の弱点ドリルで、患者情報は入れません。本番で似たことをするなら、必ず施設のルールを確認してください。
問い
つまずいたら
このレッスンの作業で起きがちな詰まりと、その抜け方です。
- 分析を頼んでも当たり障りのない答えしか返らない → 注文書が漠然としています。「どの分野の正解率が低いか」「優先度順に」のように、何を見て何を返してほしいかを一文ずつ分けて書き直す。
- AIの分析が自分の感覚とズレる → AIを疑う前に、まず元の記録を自分の目で見る。試行回数が少ない分野が混じっていないか、注文書(条件)と返ってきた結果を見比べる。
- SKILL.mdに書いても方針どおりに動かない → ルールが解釈で揺れる書き方かもしれません。「弱点とは直近2回続けて落とした分野」のように、AIが判定に迷わない一文に絞って書き直す。鍵やパスワードはSKILL.mdにもAIにも貼らず、判定ルールだけを書く。
理解度チェック
セルフチェック
1. AIに弱点を分析させるとき、傾向の抽出と医学的事実の確認の役割分担として、正しいのはどれですか。
2. SKILL.mdは、何のためのファイルですか。
次回へ
今日できたこと。 育てている物を、ひとつ賢くしました。 たまった記録を自動で読んで、次の一手まで出せるようになった。
でも、まだ足りないところがあります。 賢くはなったけれど、その分析を引き出すのは、まだ自分です。 ドリルなら、毎日自分で「弱点チェックして」と打たないと動かない。 忘れたころに向こうから出てくる、まではいっていません。
賢くなった。 でも、毎日自分で開かないと回らない。 本当に欲しいのは、勝手に、毎日、向こうから動いてくれることです。 自分が手を動かさなくても、育てている物が回り続ける。 そこまで持っていきたい。 運用に乗せたい。
次回がついに最終回です。 今日作った判定を使って、放っておいても向こうから動く形にします。 忘れたころに、苦手なところが、自分から出てくる。
最終回では、AIが「ここを直しておいた」と言ってきたとき、その言葉をそのまま信じずに、何を変えたかの証拠を自分で見てから承認する。 この承認の作法も一緒にやります。 Lv1で植えた1問の種が、最後まで育って、本物の道具になる。 その完成を、一緒に見届けましょう。