メインコンテンツへスキップ
7 / 29|12分で読めます

患者説明プロンプト(リテラシー別対応)

患者の健康リテラシーに合わせた説明文書を生成するプロンプト設計と、インフォームドコンセントへの応用。

患者説明の課題

「説明したのに伝わっていない」-- 多くの医療者が経験する課題です。原因の多くは、患者の健康リテラシーに合わせた説明ができていないことにあります。AIを活用すれば、同じ医療情報を異なるリテラシーレベルに合わせて変換できます。

リテラシーレベルの定義

本章では、患者の健康リテラシーを3段階に分類します。

レベル1: 基本(医療知識がほぼない)

医学用語を全て平易な日本語に言い換え、比喩や日常生活の例えを多用。文章は短く、要点を3つ以内に絞る。

レベル2: 中級(一般的な健康知識がある)

基本的な医学用語は使用可能だが、初出時に説明を付ける。具体的な数値と意味を併記。

レベル3: 上級(医療従事者・医学知識のある患者)

医学用語をそのまま使用可能。エビデンスレベルや統計データも提示。

リテラシー別説明プロンプト

プロンプト

あなたは患者説明に定評のある[診療科]の専門医です。

以下の医療情報を、指定されたリテラシーレベルに合わせて説明文を作成してください。

【医療情報】 疾患名: [疾患名] 説明内容: [説明すべき医療情報] リテラシーレベル: [レベル1/レベル2/レベル3]

【レベル別の表現ルール】 ■ レベル1(基本)

  • 医学用語は全て日常語に言い換え
  • 1文は40字以内
  • 比喩や日常生活の例えを使う
  • 要点は3つ以内
  • 「○○という検査」→「血液を調べる検査」
  • 文末は「です・ます」調

■ レベル2(中級)

  • 基本的な医学用語は使用OK(初出時に括弧で説明)
  • 具体的な数値と正常値を併記
  • 治療の選択肢を理由とともに提示
  • 5〜7つの要点

■ レベル3(上級)

  • 医学用語をそのまま使用
  • エビデンスレベルや統計を提示
  • ガイドラインの推奨グレードを含む
  • 詳細な治療オプションの比較

【出力形式】 患者に直接話しかける形式(「○○さん」は不要)で記述してください。

実例: 同じ疾患を3レベルで説明

BeforeAfter
プロンプト

あなたは患者説明のエキスパートです。

以下の医療情報を、医療知識がほとんどない患者さんに説明する文章を作成してください。

【説明する内容】 疾患: [疾患名] 検査結果: [結果] 治療方針: [治療計画]

【表現ルール】

  • 専門用語は全て日常的な言葉に置き換える
  • 「HbA1c」→「過去1〜2ヶ月の血糖の平均を見る検査」
  • 「eGFR」→「腎臓がどのくらい元気に働いているかの数値」
  • 1つの文は短く(40字以内を目安)
  • 体の中で何が起きているかを日常的な比喩で説明
  • 大切なことは3つに絞って伝える

【出力構成】

  1. 「今の状態」(3文以内)
  2. 「これからどうするか」(3文以内)
  3. 「気をつけてほしいこと」(3つ以内の箇条書き)
  4. 「心配しなくてよいこと」(1〜2文)
プロンプト

あなたは患者教育に熱心な[診療科]の専門医です。

以下の情報について、一般的な健康知識をお持ちの患者さんへの説明文を作成してください。

【説明する内容】 疾患: [疾患名] 検査結果: [結果と基準値] 治療方針: [治療計画と選択肢]

【表現ルール】

  • 基本的な医学用語は使用してよい(初出時に簡潔な説明を付ける)
  • 検査値は基準値と比較して「高い」「低い」「正常」を明記
  • 治療の選択肢がある場合はメリット・デメリットを併記
  • 数字を使って具体的に説明(「10人中3人に効果がある」など)

【出力構成】

  1. 検査結果の解説(数値と意味)
  2. 現在の状態の評価
  3. 治療方針の説明(選択肢がある場合は比較)
  4. 生活上の注意点
  5. 次回の予定とモニタリング計画
  6. 質問があれば遠慮なく聞いてほしい旨

インフォームドコンセント文書

プロンプト

あなたは[診療科]の専門医で、インフォームドコンセントの説明文書作成を担当しています。

以下の処置/治療について、患者説明用のIC文書を作成してください。

【処置/治療名】[正式名称] 【対象患者】[患者の背景]

【出力構成】

  1. 現在の病状について

    • 何が問題になっているか
    • なぜこの処置/治療が必要か
  2. 処置/治療の内容

    • 具体的に何をするか
    • 所要時間
    • 麻酔の方法
  3. 期待される効果

    • 成功率(データがあれば数値で)
    • 効果が出るまでの期間
  4. リスクと合併症

    • 頻度の高い合併症(○%程度)
    • 頻度は低いが重大な合併症(○%程度)
    • 万一合併症が起きた場合の対応
  5. 代替治療の選択肢

    • 選択肢1: [概要] メリット/デメリット
    • 選択肢2: [概要] メリット/デメリット
    • 治療を行わない場合の経過
  6. 処置後の注意事項

    • 日常生活の制限
    • 再受診の目安(こんな症状が出たら)

【制約】

  • リテラシーレベル1〜2の患者でも理解できる表現
  • リスクの説明は誠実に、ただし不安を過度に煽らない
  • 患者が意思決定に必要な情報を漏れなく含める

多言語対応

プロンプト

あなたは国際診療に対応する医師です。

以下の患者説明を、指定された言語で作成してください。

【元の説明内容(日本語)】 [日本語の説明文]

【翻訳先言語】[英語/中国語/韓国語/ポルトガル語/ベトナム語]

【翻訳の注意点】

  • 医学用語は対象言語の標準的な訳語を使用
  • 文化的な配慮(食事指導は対象文化の食品で例示)
  • 日本の医療制度特有の用語には補足説明を追加
  • やさしい日本語版も併記(外国人患者が日本語を少し理解する場合向け)
  • リテラシーレベル1に相当する平易な表現

【出力形式】 ■ [対象言語]版 [翻訳]

■ やさしい日本語版 [やさしい日本語での説明]

AIによる翻訳は、医療通訳の代替にはなりません。重要な意思決定を伴う説明(手術のIC等)では、必ず医療通訳者を介してください。AIの翻訳は補助的な資料としてのみ使用してください。

患者説明プロンプトのコツ:

  • 「何を伝えるか」だけでなく「どう伝えるか」をプロンプトで制御する
  • リテラシーレベルの指定で、説明の深さと表現が自動調整される
  • 「心配しなくてよいこと」を含めると、患者の不安軽減に効果的
  • 説明文はAIのドラフトを元に、担当医が患者に合わせて微調整する

この章のポイント

患者説明プロンプトの核心は「同じ医療情報を、相手に合わせて変換する」ことです。リテラシーレベルを明示的に指定し、表現ルールを具体的に設定することで、AIは適切なレベルの説明文を生成できます。ただし、AIの出力はあくまでドラフトです。患者との信頼関係は、医師自身の言葉と態度で築いてください。