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第7章 記憶を持たせる

AIは忘れる。だから外に記憶を置く。価値観の蒸留としてのメモリ設計。

まず結論:AIは忘れる。だから、外に記憶を置く

AIには、決定的な弱点が一つある。話が終わると、忘れる

昨日あれだけ細かく説明した前提も、今日には消えている。毎回ゼロから説明し直すのは、専門職にとって最大の時間の無駄だ。

解決はシンプルだ。AIの頭の中に覚えさせようとせず、外に記憶を置く。そして、毎回そこを読ませる。

何を覚えさせ、何を覚えさせないか

私は、記憶を四種類に分けている。

種類中身
自分のこと役割・専門・好み小児科医。文章は短く、肌触り重視
指示の蓄積過去に出した方針「この看板では、この言い回しは使わない」
進行中の仕事いまの状況このプロジェクトは、今ここまで来ている
参照先外部資料の在りかあの資料は、ここにある

記憶の本質は、情報の貯蔵ではない。価値観の蒸留だ。「自分が何を大事にし、どう判断するか」を、少しずつ言葉にして外に置いていく。すると、AIはだんだん「あなたならこう決める」を踏まえて動くようになる。

例:一度言った方針が、勝手に効く

私のメモには、「この発信では、この枕詞を使わない」という指示が残してある。

これを一度書いておくと、次から私が何も言わなくても、AIがその方針を踏まえて文章を出してくる。同じ注意を、二度としなくていい。

指示が、その場で消える「会話」ではなく、積み上がる「資産」になる。これが、記憶を外に置く効果だ。

鉄則:個人情報と秘密は、記憶に書かない

便利だからこそ、線を引く。患者の情報、個人情報、パスワードや鍵の類は、絶対に記憶へ書かない

外の記憶は、便利な反面、漏れたときの被害が大きい。覚えさせるのは「判断の方針」までにして、「具体的な秘密」は、その都度、手元でだけ扱う。

持ち帰り

  • AIに「自分の前提」を一度、文章で渡してみる(役割・好み・避けたい言い方)
  • 同じ説明を二度した、と気づいたら、それは記憶に置くべき情報
  • ただし、秘密と個人情報は書かない。方針だけを残す

次章は、決まった作業そのものを「型」にして、毎回の指示すら、なくす話だ。