まず結論:作ることより、方向と検証に時間を使う
ここから第3部。あなたのOSを使って、実際に何が作れるかを見せる。最初は、いちばん大きいもの。プロダクト(製品)を、一人で建てる話だ。
私は小児科医で、エンジニアではない。それでも、患者向けの医療情報サービスや、専門医試験の学習アプリを、自分で建てて、世に出している。
誤解のないように言う。「コードが書けるようになった」のではない。作る作業をAIに渡し、私は方向と検証に集中した。だから建てられた。作ることそのものは、もう、いちばん時間をかける場所ではない。
何を作り、何を作らないか
一人で建てるとき、最大の判断は「機能を足すこと」ではない。何を作らないかだ。
私の医療サービスは、一度、機能を盛りすぎた。受診の判定、行政手続きの案内、いろいろ付けた。便利そうに見えて、軸がぼやけた。
そこで、削った。「医療情報に純化する」と決めて、本筋から外れる機能を引っ込めた。残したのは、いちばん価値のある一本だけ。
作れる時代だからこそ、足すのは簡単だ。簡単だからこそ、足さない判断が効く。これは方向の仕事で、AIには決められない。
土台は堅く、世界観は自前で
作るときの組み方には、コツが一つある。裏方は定番に乗り、表の世界観は自前で持つ。
- 裏方(土台の仕組み、よくある部品)→ 定番に乗る。車輪の再発明をしない
- 表(見た目、トーン、世界観)→ 自前で作り込む。ここで他と差がつく
土台までこだわると遅いし、世界観まで定番に乗ると、ありふれたものになる。堅い土台の上に、自分だけの表情を載せる。この二層の分け方が、速さと個性を両立させる。
鉄則:動くものを出す。スタブで誤魔化さない
一人で速く作ると、つい「とりあえず動くフリ」で済ませたくなる。中身が空のボタン、形だけの画面。
これをやると、後で必ず崩れる。私は、自分にもAIにも、これを禁じている。出すなら、実際に動くものを出す。例外的なケースも、ちゃんと通るところまで作る。
速さは、手抜きの言い訳にはならない。むしろ、速くなったぶん、ちゃんと仕上げる余裕ができたはずだ。
持ち帰り
- いま「あったらいいな」と思う小さな道具を、一つAIと作ってみる
- 機能を足す前に、「これは本筋か」を一度問う。外れるなら、足さない
- 出すなら、形だけでなく、実際に動くところまで仕上げる
次章は、作るものを「文章」に絞る。私が、執筆だけは特別な回し方をしている理由を話す。