まず結論:何を「やらないか」を、先に決める
ここから第4部。作ったものを束ねて、「会社として回す」話に上がる。
作れる量が増えると、やれることが爆発的に増える。すると、逆説的に、いちばん大事になるのは「何をやらないか」だ。経営の本体は、選ぶことより、捨てることにある。
AIは、やれることを無数に出してくる。だからこそ、人間が「やらない」を決める。ここを握れないと、増えた力に、自分が振り回される。
意思決定を、AIに壁打ちする
私は、大きな判断の前に、AIにわざと反対意見を出させる。「この案の弱点は」「やらないほうがいい理由は」。一人で考えると見えない盲点を、AIが埋めてくれる。
ただし、第3章で言ったことを、もう一度。複数のAIが同意しても、それは命令ではない。賛成が揃っても、最後に決めるのは自分だ。AIが持っていない文脈、つまり取引先との関係や、まだ誰にも言っていない計画は、あなたの中にしかない。
壁打ちは相手にする。決定は、譲らない。
売却に耐える設計
私は、プロダクトを最初から「他人に引き渡せる状態」で作っている。コードもデータも綺麗に保ち、固定費を持たない。
なぜか。いつか売却(EXIT)する前提だからだ。
この視点をAIに持たせると、整え方が変わる。「今動けばいい」ではなく、「第三者に引き渡せるか」。資産として残す、という基準で作ると、品質の意味が一段上がる。たとえ売らなくても、引き渡せるほど綺麗なものは、運用も楽だ。
鉄則:戦略の最終判断は、手放さない
AIは、無数の選択肢を出せる。でも、「どの未来に賭けるか」は出せない。
どの事業を伸ばし、どれを畳むか。いつ動き、いつ待つか。これは、あなたの専門性と立場と将来計画が、全部混ざった判断だ。本書でいちばん最初に手放してはいけない「方向」が、ここにある。
経営判断こそ、最後まで人間の操縦桿だ。
持ち帰り
- 大きな判断の前に、AIへ「この案の弱点を挙げて」と反対側を出させる
- それでも、決定は自分でする。賛成が揃っても、文脈は自分にしかない
- 作るものを「引き渡せるか」で見る。綺麗に保つことが、そのまま強みになる
次章は、経営のいちばん地味で、いちばん時間を食う部分。事務を、まるごと秘書に渡す話だ。