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使命に合うかで決める

  • レッスン 1
  • 13分

教育目的の教材です。生成AIの出力を診断・治療の判断にそのまま使わないでください。最終判断は医師が行います。

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • 「AIにできるか」ではなく「AIにすべきか」という問いに立て直せる
  • 使命・関係者・失敗したときの説明可能性の3つで、AIを使う場面を選べる
  • このコースの考え方のもとになった4つの力の枠組みを説明できる

病院、診療所、福祉施設、NPO、学校。こうした組織でも「うちもAIを入れたほうがいいのだろうか」という相談が増えています。担当者からは決まって同じような疑問が返ってきます。「便利そうだが、どこまで手を出していいのか分からない」「誰かに聞かれたときに、なぜ使っているのか説明できる自信がない」「先に始めた他の施設は、どうやって最初の一歩を決めたのか」。

こうした疑問が消えない理由は単純です。会社の判断とはものさしが違うからです。多くの企業は、売上や顧客満足という比較的単純な指標で判断できます。一方、病院やNPOが答えるべき相手は一つではありません。患者とその家族、寄付者、生徒と保護者、理事会、規制当局。誰か一人の満足のために動くと、別の誰かへの説明責任が果たせなくなることがあります。

このコースでは、こうした公益の組織がAIを導入するときに直面する判断を、6回に分けて順番に扱います。今回はその一番手前、「そもそも使うかどうか」の判断基準です。この判断さえ言葉にしておけば、あとの5回で扱う機微な情報の扱いも、検証の手順も、組織の方針づくりも、同じものさしの上に積み上げていけます。

「できるか」でなく「すべきか」

AIの技術的な話をすると、つい「これはAIにできるか」という問いに引っ張られます。しかし公益の組織にとって本当に効くのは、別の問いです。

福祉施設が、利用者家族向けの行事案内をAIで下書きするとき

できるかで考える

「AIは案内文を書けるか」で止まると、答えは常にイエスです。文章を作ること自体はAIの得意分野なので、判断が始まりません。結果として、便利そうなものは全部試す、という無計画な広がり方になりがちです。

すべきかで考える

「この案内は誰に読まれ、誰の名前でうまく機能しなくなると誰が困るか」を先に考えます。定型の行事案内なら任せてよいが、利用者の状態に触れる連絡は職員が最終確認する、というように、使う範囲が自然に絞られます。

同じ「文章を作る」作業でも、問いを立て直すだけで任せてよい範囲が変わります。 「できるか」は技術の話、「すべきか」は組織の話です。


使命というものさし

この「すべきか」を毎回ゼロから考えるのは大変なので、3つの手がかりに分けておくと判断が速くなります。

使命に合うかを見る3つの手がかり

1

使命への貢献

この用途は、組織が本来やりたいことに近づけるか、それとも作業を減らすだけで終わるか

2

関係者への影響

誰にとって助かり、誰にとって不安の種になるか。関係者は患者・利用者・生徒・寄付者・職員など複数いる

3

失敗したときの説明

うまくいかなかったとき、誰にどう説明するかをあらかじめ言葉にできるか

補足

このコースの枠組みについて

このコースで扱う考え方は、Rick Dakan・Joseph FellerとAnthropicが開発したAI Fluency Framework(4つの力:委任力・記述力・評価力・倫理的責任)をもとに、AMPLが独自に書き起こしたものです。仕組みそのものを知りたい場合はAIと働く4つの力を先に読むと理解しやすくなります。

3つの手がかりのうち、最初につまずきやすいのが2番目です。会社であれば「顧客」を思い浮かべれば済みますが、病院やNPOでは関係者が一度に複数思い浮かびます。誰か一人を思い浮かべて安心せず、全員の顔を並べてから判断する癖をつけておくと、あとの回で扱う個人情報の線引きや方針づくりが楽になります。

3番目の「失敗したときの説明」も見落としがちですが、実はここが一番効きます。導入する前から「うまくいかなかったらどう説明するか」を考えておくと、範囲を広げすぎずに済みます。逆に、説明の言葉が思い浮かばない用途は、まだ手を出す段階ではないというサインです。


やってみよう

演習1:受付や事務の場面で考える

自分の組織で、AIに任せられそうな事務作業を1つ思い浮かべてください(例:新しい制度の案内文、問い合わせへの一次回答の下書き、行事の出欠集計)。次の4つの問いに、自分の言葉で答えてみましょう。

  • 委任力:この作業は任せるべきか、それとも人がやり続けるべきか
  • 記述力:任せるとして、何を・どこまで・どんな言い方でと具体的に指示できるか
  • 評価力:出来上がったものを、誰がどんな基準で確認するか
  • 倫理的責任:これがAIの手を借りて作られたものだと、関係者にどう伝えるか

演習2:迷う場面を1つ選ぶ

「便利そうだが、なんとなく任せていいか迷う」場面を1つ思い浮かべてください。演習1と同じ4つの問い(委任力・記述力・評価力・倫理的責任)を当てはめ、最後に「今日時点では任せる/任せない/条件付きで任せる」のどれかを自分なりに選んでみましょう。理由が言葉にできなければ、それはまだ「すべきか」の答えが出ていないということです。


今日のまとめ

3行で振り返ります。

  • AIを使うかどうかは「できるか」でなく「すべきか、使命を前進させるか」で判断する
  • 使命への貢献・関係者への影響・失敗したときの説明可能性の3つが判断の手がかりになる
  • 関係者は一人ではない。全員の顔を並べてから判断する

次のレッスンでは、使命の判断が済んだあとに必ず出てくる、個人情報と機微な情報の扱い方を見ていきます。

セルフチェック

1. 本文で紹介した、公益の組織がAI活用を判断するときの中心的な問いはどれですか。

2. 本文で挙げた、使命に合うかを見る3つの手がかりに含まれないものはどれですか。

3. このコースの枠組みのもとになった4つの力(4D)を開発したのは誰ですか。

SourceARTICLE
AI Fluency Framework(原典プロジェクト)

委任力・記述力・評価力・倫理的責任という4つの力の枠組みを開発したRick DakanとJoseph Fellerによる、フレームワークの一次情報

WebAI Fluency Framework
aifluencyframework.org

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