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AIはなぜ、自信たっぷりに間違えるのか

生成AIの間違いは、故障ではなく仕組みそのものから来る。次の単語を予測しているだけ、という原理を知れば、AIのどこを信じ、どこを疑うべきかが見えてくる。

  • レッスン 1 / 5
  • 9分

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • 生成AIが正しさでなく次に来る確率の高い単語を並べて答えを作る仕組みを説明できる
  • ハルシネーション・情報の古さ・対象集団の取り違えというAIの間違いの3つの型を見分けられる
  • AIには文章を整える仕事を任せ、用量・期間・引用・最新推奨は一次情報で確かめると判断できる

前のレッスン(5分で、AIの嘘を1つ見破る)で、AIの答えを一次情報で確かめる1往復を体験しました。ここでは一段深く、なぜ確かめる必要があるのかを仕組みから理解します。

AIは「正しさ」ではなく「それっぽさ」を計算している

AIは、医学事典を引いて答えているわけではありません。

生成AIがやっているのは、突きつめると「次に来る単語を予測する」だけです。「溶連菌の第一選択は」と入力されたら、学習データの中で統計的に続きやすい単語を並べていく。並べた文章が、たまたま正しいこともあれば、もっともらしいだけで間違っていることもあります。

AIは「これは正しい」と判定してから答えているのではありません。だから間違えるときも、正しいときと同じ、なめらかで自信のある文体になります。

間違いには、はっきりした「型」がある

間違い方には、医師が引っかかりやすい型があります。

生成AIの間違いの3つの型

1

ハルシネーション

存在しない論文・実在しない用量・架空のガイドライン名を堂々と作り出す

2

古い情報

学習時点の知識で止まり、最新のガイドライン改訂を知らないまま古い推奨を答える

3

文脈の取り違え

成人の話を小児にそのまま当てはめる、別の疾患の数字を混ぜる

このうち、医師にとって一番危ないのが捏造された引用です。「〜という研究があります」と、著者名も雑誌名も付いた、完全に本物に見える文献を作り出すことがあります。

数字で見る: 引用の捏造は、実際どのくらい起きるのか

印象論ではなく、測定された数字があります。

脊椎外科の診療テーマで5つの主要LLM(ChatGPT・Gemini・Claude・Copilot・OpenEvidence)の引用をすべて人手で検証した2026年の研究では、Geminiは26.2%が捏造、最も正確なClaudeでも正確な引用は78%にとどまりました(According to PubMed, McLaughlin ND, et al. Neurosurg Pract. 2026;7(3):e000244. DOI)。

同じ研究で、患者向けの口調で聞くとChatGPTの捏造率は2.1%から20.0%に跳ね上がっています(同, DOI)。

一方、PubMedを直接参照する専用ツール(OpenEvidence)は満点でした。汎用チャットに文献を丸投げすると危ない、という数字です。この危険性は、産婦人科研究の総説でも「引用の捏造」として警告されています(According to PubMed, Kawakita T, et al. Am J Perinatol. 2025;42(16):2094-2103. DOI)。

だから、疑う場所が決まる

仕組みが分かると、どこを信じ、どこを疑うべきかがはっきりします。

AIに任せる仕事と、必ず確かめる仕事

任せていい
文章を整える、要点を並べる、下書きを作る、たたき台を出す。「形を作る」仕事です。
必ず確かめる
用量、投与期間、引用文献、最新の推奨。口調がどれだけ自信に満ちていても、必ず一次情報に戻って確かめる。これがこのコース全体を貫く原則です。

AIを信用していないから疑うのではなく、AIが「正しさを判定していない」仕組みを理解しているから疑うのです。

参考文献

  • McLaughlin ND, Srinivas AN, Lowe ZF, et al. Large Language Model Hallucinations in Spine Surgery: A Comparative Analysis of Clinician vs Patient-Level Prompts. Neurosurg Pract. 2026;7(3):e000244. DOI(According to PubMed, PMID 42232526)
  • Kawakita T, Wong MS, Gibson KS, et al. Application of Generative AI to Enhance Obstetrics and Gynecology Research. Am J Perinatol. 2025;42(16):2094-2103. DOI(According to PubMed, PMID 40393680)

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