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確かめる1往復:一次情報への戻り方
レッスン 2 / 5|9分で読めます

確かめる1往復:一次情報への戻り方

AIの答えを一次情報で確かめる手順を、型として身につける。出典を出させる、原文に当たる、4つの急所を照合する。臨床疑問1件を最後まで通して練習する。

AIの答えを一次情報へ戻して、急所だけ照合する1往復デモ。
一次情報へ戻る3ステップの画面
出典を出させ、原文に当たり、急所だけを照合する。
照合結果を確認する画面
出典実在、内容一致、急所OKの3条件で見る。

このレッスンで終わる頃には

  • AIの答えを一次情報で確かめる手順を、型として自分で回せる
  • 「どこを確かめれば十分か」の急所を、4点に絞って言える

前のレッスンで、AIは正しさを判定せず「それっぽさ」を並べているだけだと分かりました。ここでは、その出力を安全に使うための確かめる型を、手を動かして身につけます。

全部を疑うのではない。急所だけを確かめる

「AIは間違えるから全部確認しろ」と言われると、かえって使えなくなります。1文字ずつ検算していたら、AIを使う意味がありません。

現実的なのは、間違えると患者に届く4つの急所だけを確かめることです。

  1. 用量(何mgか、体重あたりか)
  2. 投与期間・回数(何日間か、1日何回か)
  3. 引用文献(その論文・ガイドラインは実在するか)
  4. 最新性(いつ時点の推奨か、改訂されていないか)

文章の言い回しや構成は、間違っていても直せば済みます。この4つは、間違ったまま使うと直接害になります。確かめる労力を、この4点に集中させます。

確かめる型: 3ステップ

型はシンプルです。臨床疑問を1つ、最後まで通してみます。

ステップ1: AIに聞く。ただし「出典も出して」と付ける

前のレッスンと同じ質問を、少しだけ変えて聞きます。

5歳の小児のA群溶連菌性咽頭炎です。
第一選択の抗菌薬と投与期間を、根拠にしたガイドライン名とともに教えてください。

「根拠にしたガイドライン名とともに」の一言が効きます。出典を明示させると、あなたが次に確かめる手がかりが手に入ります。ただし、ここで出てきたガイドライン名すら、AIが捏造している可能性があることを忘れないでください。だから次のステップがあります。

ステップ2: 出典を、AIにではなく原文に当たる

AIが「IDSAのガイドラインでは」と答えたら、そのガイドラインを自分で開きます。AIに「本当ですか?」と聞き返してはいけません。間違えたAIに聞き直しても、もっともらしい言い訳が返ってくるだけです。

溶連菌性咽頭炎の一次情報は、米国感染症学会(IDSA)の2012年ガイドラインです。そこにはペニシリンまたはアモキシシリンが第一選択、投与期間は10日間と明記されています(According to PubMed, Shulman ST, et al. Clin Infect Dis. 2012;55(10):e86-102. DOI)。

ステップ3: 4つの急所を突き合わせる

AIの答えと原文を、急所だけ照合します。

  • 薬剤名は合っているか(ペニシリン/アモキシシリン)
  • 投与期間は10日間になっているか(ここを「5日」「7日」と混ぜてくるモデルがある)
  • 挙げたガイドライン名は実在するか
  • そのガイドラインは今も有効か(撤回・改訂されていないか)

1点でもずれていたら、AIの出力はそのままでは使えないと判断します。合っていれば、安心して下書きとして使えます。

出典を「実在ごと」確かめる習慣

前のレッスンで見たとおり、AIは著者名も雑誌名も付いた文献を捏造します。だから引用は、内容だけでなく存在そのものを確かめます。

  • PubMedで著者名・タイトルを検索し、その論文が実在するかを見る
  • ガイドラインは学会の公式サイトで原文を開く
  • 「それらしいDOI」がついていても、リンクを実際に踏んで飛ぶか確かめる

PubMedを直接参照する専用ツールなら引用精度は高い、という測定結果もありました(前レッスン参照)。しかし汎用チャットに文献を任せた場合は、実在確認まで自分でやるのが前提です。

この1往復が、速さを生む

一見、確認は手間に見えます。しかし急所4点に絞れば、確認は数十秒で終わります。そして一度型が身につくと、AIを疑いながら速く使えるようになります。

確かめない人は、いつか事故を起こして一気に信頼を失います。急所だけ確かめる人は、AIの速さを取りながら、事故を避けられます。この差は、才能ではなく型を持っているかどうかだけです。

今日のまとめ

3行で振り返ります。

  • 全部を疑うのではなく、間違えると患者に届く4つの急所(用量・期間・引用・最新性)だけを確かめる
  • 型は「出典も出させて聞く→原文に当たる→急所を突き合わせる」の3ステップ。間違えたAIに聞き直さない
  • 引用は内容だけでなく、実在そのものをPubMed・学会サイトで確かめる

次のレッスンでは、AIが挙げた「根拠」を、エビデンスの強さで語り分ける方法に進みます。

参考文献

  • Shulman ST, Bisno AL, Clegg HW, et al. Clinical practice guideline for the diagnosis and management of group A streptococcal pharyngitis: 2012 update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2012;55(10):e86-102. DOI(According to PubMed, PMID 22965026)