医療プロンプトの型
雑に聞くと、雑に返ってくる
ChatGPTに「糖尿病について教えて」と聞けば、教科書的な概要が返ってくる。悪くはないが、使える情報かというと微妙だ。
医師がChatGPTを実務で使いこなすには、プロンプトの「型」がいる。
基本型: Role / Task / Format
世界中の医師向けリソースで共通して推奨されているのが、この3要素だ。
Role(役割): ChatGPTにどういう立場で答えてほしいか Task(タスク): 具体的に何をしてほしいか Format(出力形式): どういう形で出力してほしいか
Role: あなたは小児科専門医として回答してください。
Task: 3歳男児、発熱・咳嗽・喘鳴の症例について、
ウイルス性細気管支炎を疑う場合の簡潔な臨床ノートを作成してください。
Format: SOAP形式で、各セクション3行以内にまとめてください。
OpenAIの公式Academy(260名以上の医師が監修)でも、この構造が推奨されている [1]。
実践プロンプト集
退院サマリーの要約
以下の退院経過記録を200字以内で要約し、
(1) 主診断 (2) 主治療 (3) 退院後指示
を箇条書きで出力してください:
{匿名化したカルテ本文}
恵寿総合病院ではこのパターンで要約時間を67%削減した [2]。
患者説明文の生成
あなたは優しい小児科医として回答してください。
川崎病と診断された3歳のお子さんの保護者に向けて、
病気の説明と今後の治療方針を説明する文章を作成してください。
小学6年生が読んでわかるレベルの日本語で、
A4で1枚に収まる量にしてください。
JAMA Network Openの研究で、GPT-4は読解レベルをGrade 11からGrade 6.2に下げることに成功している [3]。「小学6年生レベルで」という指示が効く。
鑑別診断の壁打ち
42歳女性。主訴:2週間持続する倦怠感と微熱。
身体所見:頸部リンパ節腫脹、軽度の肝脾腫。
血液検査:白血球12,000、異型リンパ球15%、AST/ALT軽度上昇。
鑑別診断を可能性の高い順に5つ挙げ、
それぞれの根拠を1行で説明してください。
見落としやすい重要な疾患があれば追加してください。
保険事前承認レター
あなたは内科医として、保険会社への事前承認レターを作成してください。
患者:65歳男性、2型糖尿病、HbA1c 9.2%
要求:GLP-1受容体作動薬への変更
理由:メトホルミン+SU剤で6ヶ月間コントロール不良
レターには以下を含めてください:
- 現在の治療経過と効果不十分の根拠
- ガイドラインに基づく変更の妥当性
- 想定される臨床的利益
フォーマルなビジネスレター形式で出力してください。
PassiveIncomeMDの調査では、事前承認レターの作成時間が20分から5分に短縮されると報告されている [4]。
プロンプトを磨く4つのコツ
1. 制約を明示する
「200字以内」「箇条書き3つ」「A4で1枚」。制約がないと長くなりすぎる。
2. 対象読者を指定する
「保護者向け」「研修医向け」「専門医向け」で出力のレベルが変わる。
3. 出力例を1つ見せる
理想の出力例を1つ添えると、そのスタイルに合わせてくれる(Few-shot prompting)。
4. 「何を含めて、何を含めないか」を指定する
「薬剤名は一般名で」「ICD-10コードは不要」「エビデンスレベルを明記」。除外指示も出力精度に効く。
やってはいけないこと
患者の個人情報を入力しない。 年齢・性別・所見のみに匿名化する。氏名、生年月日、患者IDは絶対に入れない。
出力をコピペで使わない。 ChatGPTの出力は下書き。必ず医師が内容を確認し、必要に応じて修正してから使う。
薬剤量をそのまま信用しない。 ChatGPTは計算が苦手だ。特に小児用量、腎機能補正量は必ず自分で確認する。
まとめ
- Role / Task / Formatの3要素でプロンプトを組む
- 退院サマリー、患者説明文、鑑別診断、事前承認レターに即効性がある
- 制約・対象読者・出力例・除外指示の4つでプロンプトを磨く
- 患者情報は入れない。出力はコピペしない。薬剤量は自分で確認する
参考文献
- OpenAI Academy. ChatGPT for Healthcare. 2025.
- 恵寿総合病院 x Ubie. note.com/ai_komon, 2024.
- Zaretsky J, et al. JAMA Network Open. 2024. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.0357.
- PassiveIncomeMD. The Ultimate ChatGPT Prompt Cheat Sheet. 2025.