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Claudeが「チーム」で働き出す(Agent TeamsとDynamic Workflows)
レッスン 4 / 10|23分で読めます

Claudeが「チーム」で働き出す(Agent TeamsとDynamic Workflows)

タブ2枚の並列から、数百エージェントの工場まで。2026年のClaude Codeは組織で動く。迷子にならないための地図を1枚持っておこう。

このレッスンで終わる頃には

  • Claude Codeの拡張機能を「誰が制御を持つか」で説明できる
  • Agent TeamsとDynamic Workflowsの違いと使い分けが言える
  • 大規模に走らせるときの、コストと検証の守り方が分かる

このレッスンで作るもの

01

地図

制御の違いを1枚で持つ

02

チーム

Agent Teamsを知る

03

工場

Dynamic Workflowsを知る

04

規律

コストと検証で守る

マルチエージェントの地図

前のレッスンの続き: 「並列」の先にある世界

前のレッスンで、ターミナルのタブを2枚開いてClaudeを2人走らせました。あれがマルチエージェントの入り口です。

で、その先がどうなっているか。

Claude Codeを作ったAnthropicのBoris Chernyさんは、2026年6月の講演で「もう8ヶ月、コードを1行も手で書いていない」と話しています。ターミナルで5人のClaudeを並列で走らせ、さらにクラウド側でも5〜10人動かす。1人のマネージャーが現場対応・会議・書類仕事を並行で回すように、AIの側が「組織」になってきたわけです。

ただ、機能の名前が一気に増えたせいで、ここで迷子になる人が多い。サブエージェント、Agent Teams、Dynamic Workflows、ultracode。

大丈夫です。「誰が制御を持つか」という1本の軸で並べると、全部きれいに整理できます。


まず地図: 「誰が制御を持つか」で選ぶ

01Skills

手順書

人が用意した型に沿う

再現したい作業

02Subagents

リードClaude

分けて任せ、結果を受け取る

独立した分担

03Agent Teams

チーム

互いに話し、その場で調整する

議論が必要な仕事

04Dynamic Workflows

コード

決めた工程を反復して実行する

大量の反復

強さの順ではなく、誰が次の一手を決めるかで選ぶ。

会社の仕事に置き換えると、こうなります。

1. Skills

社内マニュアル。Claudeが読んで、その場で手順に従う

2. Subagents

新人への調べ物依頼。別室で作業して、結果だけ報告に来る

3. Agent Teams

部署横断の作戦会議。メンバー同士が直接相談しながら進める

4. Dynamic Workflows

工場の自動生産ライン。決められた工程を大量の製品が流れる

4つの仕組み(会社にたとえると)

この4つに、強さの順はありません。マニュアルで済む仕事に部署横断の作戦会議は開かないですよね。それと同じで、仕事の形に合わせて仕組みを選ぶのがこの地図の使い方です。

SkillsとSubagentsは前のレッスンまでに登場済み。今日は残りの2つ、Agent TeamsとDynamic Workflowsを見ていきます。


Agent Teams: Claude同士が相談する(実験的機能)

Agent Teamsは、複数のClaude Codeセッションが「チームメイト」として直接やり取りする機能です。

サブエージェントとの違いはここ。サブエージェントは、上司(メインの会話)に結果を報告するだけでした。Agent Teamsでは、1人のリード+複数のチームメイトが共有のタスクリストを持ち、チームメイト同士が直接メッセージを送り合えます。

「Aの調査結果を見たBが、自分の担当範囲の仮説を修正する」みたいな、会話しながらの協調ができるわけです。

左にAgent Teams(3つのClaudeが双方向の矢印で対等につながる図)、右にDynamic Workflows(1つの司令塔が多数のタスクへ一斉に展開する図)の対比
左: 会話で協調するチーム。右: コードで統制する工場。この対比が今日の核心

まだ実験的機能なので、環境変数で自分でONにする方式です。

Terminal
$export CLAUDE_CODE_EXPERIMENTAL_AGENT_TEAMS=1
$claude
$

3人のチームを作って、この提案書ドラフトを「構成」「エビデンス」「表現」の3視点で並列レビューして。互いの指摘が矛盾したら相談して統一見解にして

向いているのは、視点の違うメンバーが議論すると質が上がる仕事。並列レビュー、対立する仮説を1つずつ持たせるデバッグ、新機能の分担実装などです。

注意

トークン消費は覚悟する

公式ドキュメントに「単一セッションよりかなり多くのトークンを使う」と明記されています。推奨は3〜5人から。前のレッスンの「2並行で十分」の感覚のまま、必要なときだけ開くのが正解です。

SourceDOCUMENTATION
Agent Teams 公式ドキュメント

サブエージェントとの違い、向くタスク、設定方法。実験的機能なので仕様は変わりうる。

Webcode.claude.com
code.claude.com/docs/en/agent-teams

Dynamic Workflows: Claudeが工場のラインを設計する

もう1つの、そしてもっと大規模な方式がDynamic Workflowsです。

仕組みが面白い。あなたが大きな仕事を頼むと、Claudeがまず「作業手順のスクリプト」を書きます。どのタスクを何体のエージェントに配るか、結果をどう集めるかをコードにする。そしてそのスクリプトをClaude Codeのランタイムが裏で実行します。

Agent Teamsとの違いは「誰がプランを持つか」。Teamsではリードが会話しながらその都度判断しますが、Workflowsではスクリプト自体が工程表。ループも分岐も途中結果もスクリプト側が持つので、メインの会話には最終結果だけが戻ってきます。

規模も桁が違います。公式ドキュメントいわく、1回の実行で数十〜数百のエージェント。同時に動くのは16体まで、合計1,000体が上限です。

起動はあっけないほど簡単で、プロンプトに「ultracode」という言葉を入れるだけ。

Claude Code
$

ultracode このリポジトリの記事120本すべてについて、事実関係の誤りがないか徹底監査して。見つけた指摘は別のエージェントに反証させて、生き残ったものだけ報告して

この例文の後半に、大規模運用のいちばん大事な工夫が入っています。


数を増やすなら、疑う役を入れる

エージェントを数百体走らせると、量は稼げますが、もっともらしい間違いも混ざります。

そこで公式ドキュメントが挙げているのが、独立したエージェント同士に互いの発見を敵対的にレビューさせてから報告するというパターンです。たとえばこんな流れです(役割名は説明用です。公式の固有名詞ではありません)。

作る役のエージェントの成果物を、疑う役の2体が独立に検証し、指摘を直す役が修正してから報告する流れ図
作る役と疑う役を分ける。疑う役は「これを潰せるか」だけを考える
  • 作る役が実装や調査をする
  • 疑う役が2体、独立に「この結果は間違っていないか」だけを考えて検証する
  • 直す役が指摘を反映して、最後に報告が上がってくる

これ、働く人にはおなじみの発想のはずです。ダブルチェックや相互レビューと同じ構造。作った本人に確認させるのではなく、疑うことだけが仕事の別人を立てる。AIの世界でも、これが「数を質に変える」定石になっています。


使い分けチートシート

手順を毎回教えるのが面倒

Skills。マニュアル化して自動で読ませる

調査や下読みを裏で流したい

Subagents。会話を汚さず結果だけ受け取る

視点の違う議論で質を上げたい

Agent Teams。3〜5人の並列レビュー・分担実装

同じ工程を大量に回したい

Dynamic Workflows。監査・一斉修正・網羅調査

どの仕組みを選ぶか

判断に迷ったら、「会話で協調させたいのか、コードで統制したいのか」を自問してください。前者がTeams、後者がWorkflowsです。


もう1枚の地図: エージェント数で見る「自分の現在地」

道具の地図が頭に入ったら、もう1枚。今度は使う側の人間がどう成長していくかの地図です。

Claude Codeを作ったBoris Chernyさんは、AI活用の成熟度を「同時に動くエージェントの数」で段階分けしています(2026年7月の整理)。数字がそのまま自分の現在地になる、シンプルで強い物差しです。

Step 0: 使えない(0体)

組織がAIを許可していない。壁は技術でなく承認プロセス

Step 1: 相棒(1体)

1セッションを見守り、ほぼ全部の変更を自分でレビューする

Step 2: 指揮者(10体)

5〜10体を並列で回し、最終結果の差分だけレビューする

Step 3: 管理職の管理職(100体)

コードはほぼClaudeが書く。仕事をループに分解し、ClaudeがClaudeを起動する

Step 4: 意図で操縦(1,000体+)

起動すらClaudeがやる。人間は意図を示し、例外だけ監視する

エージェント数で見る5段階

この地図で見ると、今日のレッスンの位置づけがはっきりします。前のレッスンのタブ2枚はStep 2の入り口。今日のAgent TeamsとDynamic Workflowsは、Step 3に上がるための道具です。100体の世界は、工場(Workflows)なしには回りません。

そして大事なのは、段階を上げる鍵が毎回同じだということ。Step 1から2へ上がる条件は「信頼できる自己検証ループ(テスト・ビルド・lint)を持つこと」。Step 2から3へは「仕事をループとルーティンに分解すること」。つまり、エージェントを増やす前に、検証を増やす。この順番が崩れると、どの段階でも事故ります。


作った人たちが繰り返し言うこと

最後に、道具の使い方より大事な話。Claude Codeを作っている2人が、インタビューやポッドキャストで繰り返し強調している原則が2つあります。

1つ目はBoris Chernyさん。「Claudeに自分の仕事を検証する手段を与えることが、良い結果を得るためのおそらく最も重要なこと」。テストでも、実行結果でも、チェックリストでもいい。検証手段があるだけで結果が2〜3倍良くなると言っています。数百体の工場を回すときほど、この原則が効きます。

2つ目はプロダクト責任者のCat Wuさん。自動化は「まず1件でテストして、挙動を確かめてから10件に広げる」。いきなり全量に流さない。

新しい施策をいきなり全社員に展開しないのと同じです。小さく検証してから、スケールする。マルチエージェントの世界でも、この慎重さがそのまま通用します。

SourceDOCUMENTATION
Dynamic Workflows 公式ドキュメント

ultracodeの起動方法、スケールの上限、Agent Teams・Subagentsとの公式比較表。

Webcode.claude.com
code.claude.com/docs/en/workflows
SourceARTICLE
Latent Space: Claude Code開発チームインタビュー

Boris ChernyとCat Wuが設計思想を語る回。検証ループと「小さく始める」原則の原典。

Weblatent.space
latent.space/p/claude-code

コストの話(今回も正直に)

並列数が増え、エージェント同士の協調が増えるほど、トークン消費は跳ね上がります。

Dynamic Workflowsには一応ガードレールがあって、25体を超えるか、見込み150万トークンを超えると警告が出ます。ただし警告は出るだけで、止まりはしません。

守り方は今日出てきた原則そのままです。

  • まず小さく。Teamsは3〜5人、Workflowsも小さな範囲で1回試す
  • 検証手段をセットで渡す。数が増えるほど、疑う役の価値が上がる
  • 日常業務はSkillsかSubagentsで十分。Agent TeamsとDynamic Workflowsは「ここぞ」の仕事だけ

増やす前に、留保をひとつ

ここまで、増やす方向の話を続けてきました。ここで一度、逆側の声にも耳を傾けます。

Boris ChernyもCat Wuも、無条件に増やせと言っていたわけではありません。検証手段を持つこと、まず小さく試すこと。ここまでの原則は、どちらも増やす前提に条件をつけていました。

その条件そのものを疑う声もあります。TDDの考案者として知られるKent Beckは、マルチエージェントの礼賛に真正面から異を唱えています。

VoicesBLOG / NEWSLETTER

Nobody wants agents. Nobody wants agent swarms. I have a system and I want it to change.

筆者訳

誰もエージェントなど求めていない。誰もエージェントの群れなど求めていない。私にはシステムがあり、それを変えたいだけだ。

Kent BeckTDD考案者・Agile宣言共同著者newsletter.kentbeck.com2026年4月23日newsletter.kentbeck.com/p/genie-lessons-nobody-wants-agents

Beckの指摘は、道具そのものへの否定ではありません。目的と手段を取り違えるな、という指摘です。

VoicesBLOG / NEWSLETTER

Multi-agent is a feature. Outcome-orientation is the thing the feature is supposed to deliver. We keep getting those confused.

筆者訳

マルチエージェントは機能の一つに過ぎない。成果志向こそがその機能が届けるべきものだ。私たちはそこを混同し続けている。

Kent BeckTDD考案者・Agile宣言共同著者newsletter.kentbeck.com2026年4月23日newsletter.kentbeck.com/p/genie-lessons-nobody-wants-agents

賛否は割れています。増やす側は「検証さえ整えれば、数は速さと網羅性に変わる」と主張します。Beckの側は「欲しいのはシステムの変化であって、エージェントの数ではない」と切り返します。どちらの側も、検証手段を先に用意し、小さく試してから広げるという同じ原則を、別の角度から支えている点は変わりません。

問うべきは、増える体制そのものではなく、それが成果に向いているかどうかです。数を選ぶ前に、まず何のための数かを言葉にしておく。それだけで、ここまでの原則がそのまま効きます。


まとめ

  • 地図は「誰が制御を持つか」で選ぶ。Skills、Subagents、Agent Teams、Dynamic Workflows
  • Agent Teamsは会話で協調するチーム。視点の違う並列レビューに向く(実験的機能・3〜5人から)
  • Dynamic Workflowsはコードで統制する工場。ultracodeで起動し、数百体まで展開できる
  • 数を増やすなら「疑う役」を立てる。ダブルチェックと同じ構造
  • 自分の現在地は「同時に動くエージェント数」で測れる。1体、10体、100体
  • 原則は2つ。検証手段を与える、1件で試してから広げる。エージェントを増やす前に、検証を増やす
  • 数がそのまま成果になるわけではない、という留保もある。増やす前に、何のための数かを言葉にする

次はパイプライン。この並列の仕組みをスケジュールと組み合わせて、寝てる間に仕事が終わってる話です。


セルフチェック

1. Agent TeamsとDynamic Workflowsの一番の違いは?

2. 数百体のエージェントを走らせるとき、品質を守る定石は?

3. 自動化を始めるときのCat Wuさんの推奨は?

明日のアクション

今日はAgent TeamsやDynamic Workflowsをいきなり触る必要はありません。まず地図を体に入れましょう。

  • 手元のプロジェクトで「サブエージェントを3体使って、このフォルダを3つの視点(構造・内容・改善点)で調べて。最後に3つの報告の食い違いを指摘して」と頼んでみる
  • 報告の「食い違い」がどう出るかを観察する。これが「疑う役」の感覚です

チームと工場は、この感覚をつかんでから。それで十分間に合います。