前のレッスンまでで、誰が何を使えるかが決まりました。ここからは少し違う種類の決定です。メンバーは、使えると決まった機能の中で、Claudeの振る舞いそのものをカスタマイズできます。組織全体に効く指示を書いたり、自分専用のスキルを作って同僚に配ったりできるということです。この自由度をどこまで開き、どこから審査を挟むかを決めるのが、ガバナンスの決定です。
組織の指示:全会話に効く常時コンテキスト
組織の指示(Organization instructions)は、Team・Enterpriseプランのオーナー(Owner・Primary Owner)だけが設定できる、組織内の全会話に適用される指示です。書き方のスタイル、社内で使う用語、コンプライアンス上の注意点などを一度書いておけば、メンバーが個別に同じ指示を書き直す手間が省けます。
メンバー個人が自分用のカスタム指示を持っている場合、両方が同時に存在することになりますが、組織側の指示が優先されます。つまり、組織の指示は「全員に共通で守ってほしいこと」を書く場所であり、個人の好みを上書きしてでも徹底したいルールに向いています。
補足
例:病院での組織の指示
病院であれば、「患者の氏名・ID・生年月日・特定できる所見は入力しない」「診断や治療方針の最終判断はAIに委ねない」といった原則を組織の指示に書いておくことで、個々のメンバーが毎回思い出さなくても、会話のたびにその前提がClaudeに伝わるようにできます。
スキル・プラグインの共有はどこまで開くか
メンバーは、決まった手順をスキルとして保存し、同僚と共有できます。共有の範囲は、個人間の共有から、グループへの共有、組織全体のライブラリへの公開まで段階があります。
組織全体への公開(Publish to org)の扱いは、組織の設定次第で変わります。Teamプランと、方針をまだ決めていないEnterpriseプランでは、共有機能は既定でオンになっています。すでに組織全体への共有をオンにしていた組織は、そのまま「Open」の状態で始まります。方針を選ばずにいると、2026年10月2日を境に「要レビュー」の状態へ自動的に切り替わります。Enterpriseプランで提出されたスキルは、悪意あるコードが含まれていないか自動でスキャンされます。
この仕組みから、組織が取れる姿勢はおおよそ3つに整理できます。
スキル・プラグインのガバナンスの姿勢
共有をオンのままにし、誰でも自分のスキルを組織全体に公開できるようにする。立ち上がりは早いが、質の低いスキルや重複が増えやすい。
組織全体への公開は「要レビュー」にし、担当者が内容を確認してから公開する。自動スキャンに加えて人の目を通すことで、質と安全性を担保しやすい。
組織全体への公開を専任のチームだけに絞り、それ以外のメンバーは個人・グループ内の共有にとどめる。統制は強いが、現場の工夫が広がりにくい。
規制の対象になる部署がある組織では、その部署だけ「作る人を絞る」姿勢にし、それ以外は「審査を挟む」姿勢にする、という部署ごとの使い分けも可能です。ただし、同じ部署の中で場当たり的に例外を作ると管理しきれなくなるため、部署ごとにどの姿勢を取るかを先に決めておき、個別の例外にしないことが実務上の要点です。
やってみよう
演習1:組織の指示に何を書くか考える
自分の組織で、全会話に共通して効かせたいルールを3つ書き出してみてください。個人の好みではなく、組織として守ってほしいことに絞ります。
演習2:自分の組織のガバナンスの姿勢を選ぶ
「開いたまま」「審査を挟む」「作る人を絞る」の3つから、自分の組織の今の状況に合いそうな姿勢を選び、理由を書いてみてください。規制対象の部署がある場合は、その部署だけ別の姿勢にするかどうかも考えます。
今日のまとめ
3行で振り返ります。
- 組織の指示はOwner・Primary Ownerのみ設定でき、個人の指示より優先される全会話共通のルールを書く場所
- スキル・プラグインの組織全体への共有は、方針を決めないと2026年10月2日から「要レビュー」に自動的に切り替わる
- ガバナンスの姿勢は「開いたまま」「審査を挟む」「作る人を絞る」に整理でき、部署ごとに姿勢を分けるなら一貫させて例外にしないことが要点
次のレッスンでは、使える機能と作れるものが決まったところで、実際にどれだけの費用がかかり、どこに上限を置くかを見ていきます。
セルフチェック
1. 組織の指示(Organization instructions)について正しい説明はどれですか。
2. スキル・プラグインの組織全体への共有について、本文で説明されている仕組みはどれですか。
3. 規制対象の部署があるときのガバナンスの姿勢について、本文が勧めている考え方はどれですか。