セクション1: 分類と回帰
分類と回帰、医療現場での例
疾患の判定:症状と検査結果から疾患の有無を予測
画像診断:胸部X線画像を「正常」「肺炎」「肺がん疑い」に分類
リスク分類:患者を「低リスク」「中リスク」「高リスク」に分類
生存期間の予測:患者データから生存期間(日数)を予測
検査値の予測:現在のデータから将来の検査値(HbA1c等)を予測
治療効果の定量化:治療前後の改善度合いを数値で予測
視点
二値分類と多クラス分類
2カテゴリに分ける二値分類(例:悪性/良性)と、3つ以上に分ける多クラス分類(例:がんのステージI〜IV)があります。医療では二値分類が多いものの、多クラス分類が必要な場面も少なくありません。
セクション2: 訓練データとテストデータ
データの分割
モデルの「カンニング」を防ぐため、手持ちのデータを分割して使います。基本は訓練データ(70〜80%)とテストデータ(20〜30%)の2分割ですが、実務では次の3分割がよく使われます。
訓練データ
モデルの学習に使用する
検証データ
ハイパーパラメータ調整など、モデルの調整に使用する
テストデータ
最終評価にのみ使用。調整中は一切触れない
注意
データリーケージに注意
テストデータの情報が訓練過程に漏れることを「データリーケージ」と呼びます。同一患者のデータが訓練とテストに分かれる、未来のデータで過去を予測してしまう、といった形で医療データでは特に起きやすいため注意が必要です。
セクション3: 過学習と汎化
過学習(Overfitting)
過学習は、モデルが訓練データに過度に適合し新しいデータで性能が低下する現象です。訓練データで精度99%以上と高い一方テストデータで大幅に低下していれば、訓練データの「ノイズ」まで覚えてしまっているサインです。
過学習を防ぐ4つの手法
正則化
モデルの複雑さにペナルティを課す
早期停止
検証データの性能が悪化し始めたら学習を止める
データ拡張
訓練データの量を増やす
ドロップアウト
学習時にランダムにニューロンを無効化する
汎化(Generalization)
汎化とは、モデルが未知のデータにも適切に予測できる能力です。
視点
医療における汎化の重要性
ある病院のデータで訓練したモデルが、別の病院のデータでも同様に機能するか(外部バリデーション)は、臨床実装の大きな課題です。患者の人口構成、検査機器の違い、診療プロトコルの差異が汎化性能に影響します。
セクション4: 評価指標
分類の評価指標
分類タスクの評価指標
精度(Accuracy)
全データのうち正しく分類された割合。データの偏りが少ない場合に有用
再現率(Recall)
実際の陽性のうち正しく陽性と予測できた割合。「見落とし」の少なさを示す
適合率(Precision)
陽性予測のうち実際に陽性だった割合。「誤報」の少なさを示す
F値(F1-score)
再現率と適合率の調和平均
視点
医療で再現率が重視される理由
がんのスクリーニングでは、再現率が低い=見落としが多いことを意味し、命に関わるため再現率が優先されます。ただし上げすぎると誤報(偽陽性)も増え、不必要な精密検査のコストとのバランスが求められます。
回帰の評価指標
回帰では、平均二乗誤差(MSE、外れ値に敏感)、平均絶対誤差(MAE、外れ値に頑健)、決定係数(R²:分散の説明力。最大値1、0は平均値予測と同等、検証・テストデータでは負値もとりうる)が主な指標です。
明日のアクション
仮想的な疾患スクリーニングモデルを想像してください。精度90%・再現率60%のモデルAと、精度80%・再現率95%のモデルBがあるとします。がんスクリーニングにはどちらが適切か、その理由を考えてみましょう。また、健康診断での一般検査ではどうでしょうか?
セルフチェック
1. 過学習が起きている状態の特徴として正しいものはどれですか?
2. がんのスクリーニング検査で最も重視すべき評価指標はどれですか?
3. 検証データ(Validation Data)の主な役割は何ですか?
参考文献
- Hastie T, Tibshirani R, Friedman J. The Elements of Statistical Learning: Data Mining, Inference, and Prediction. 2nd ed. Springer; 2009.
- James G, Witten D, Hastie T, Tibshirani R. An Introduction to Statistical Learning. Springer; 2013.
- Steyerberg EW, et al. Assessing the performance of prediction models: a framework for traditional and novel measures. Epidemiology. 2010;21(1):128-138. doi:10.1097/EDE.0b013e3181c30fb2