セクション1: 機械学習の定義
機械学習とは
機械学習(Machine Learning, ML)は、データから学習して、新しいデータに対して予測や判断を行う技術です。明示的なプログラムを書く代わりにデータからパターンを学習し、より多くのデータで学習することで性能が向上します。
従来のプログラミングとの違い
従来のプログラミング vs 機械学習
ルールを人間が明示的に記述する
入力に対してルールに基づき出力を生成する
例:「体温が38度以上なら発熱」と人間が書く
データからルールを自動的に学習する
学習したルールで新しいデータに対して予測する
例:過去の患者データから疾患パターンを自動で発見
セクション2: データ駆動型アプローチ
データ駆動型アプローチとは
データ駆動型アプローチは、経験や勘ではなくデータを中心にした問題解決の方法です。
データ駆動型アプローチの3つの特徴
データが中心
経験や勘ではなく、データが問題解決の出発点になる
パターンの発見
データに潜む規則性やパターンを発見する
予測の生成
発見したパターンから未知のデータへの予測を生成する
医療現場での応用
視点
医療における機械学習の3つの主要用途
診断支援(疾患リスクの予測)、予後予測(治療後の経過予測)、リスク評価(合併症・再発リスクの定量化)の3領域が中心です。糖尿病性網膜症のスクリーニングでは、眼底写真を機械学習モデルが分析し、眼科医パネルと同等以上の精度(高感度設定で感度97.5%・特異度93.4%)で紹介を要する所見を検出できることが報告されています(Gulshan ら, JAMA 2016)。
セクション3: 機械学習の種類
機械学習は、学習の方法によって大きく3つに分類されます。
機械学習の3つの学び方
教師あり学習
正解ラベル付きデータで学習する。分類(良性/悪性の判定等)や回帰(入院日数の予測等)に使う
教師なし学習
正解データなしで学習する。クラスタリング(患者の類型化等)や次元削減に使う
強化学習
報酬を最大化するように学習する。治療方針の最適化やロボット制御に使う
注意
学習手法の選択は目的次第
どの学習手法が最も優れているかに一般的な正解はなく、正解ラベルの有無や問題の性質、データの量と質で最適な手法は変わります。医療現場では正解ラベルの取得にコストがかかるため、教師なし学習と教師あり学習を組み合わせる半教師あり学習も注目されています。
重要な洞察:機械学習の本質
機械学習の本質は、データからパターンを発見し、そのパターンを使って予測や判断を行うことです。
実践的に押さえておきたいこと
データの質
優れたアルゴリズムでも、質の低いデータからは有用な学習はできない
パターンの発見
人間には気づけない微細なパターンをデータから発見できる
予測の限界
学習データに含まれないパターンは予測できない
明日のアクション
身近な医療現場の業務を一つ選び、「従来のプログラミング(ルールベース)」で解決する場合と「機械学習」で解決する場合を比較してみましょう。それぞれのメリット・デメリットを書き出し、どちらのアプローチが適切かを考えてみてください。
セルフチェック
1. 従来のプログラミングと機械学習の最も根本的な違いは何ですか?
2. 教師あり学習の特徴として正しいものはどれですか?
3. 医療現場での機械学習の応用として適切でないものはどれですか?
参考文献
- Gulshan V, Peng L, Coram M, et al. Development and Validation of a Deep Learning Algorithm for Detection of Diabetic Retinopathy in Retinal Fundus Photographs. JAMA. 2016;316(22):2402-2410. doi:10.1001/jama.2016.17216