セクション1: クラスタリング
クラスタリングとは
クラスタリングは、データを類似性に基づいてグループに分ける手法です。教師あり学習と異なり正解ラベル不要で、探索的分析として有用です。
代表的なアルゴリズム
データをK個のクラスタに分割する最もシンプルな手法。あらかじめクラスタ数Kを指定する必要がある
データを段階的に統合してツリー構造を構築する。クラスタ数を事前に決めなくてよい
密度に基づいてクラスタを形成する。ノイズ(外れ値)の検出にも使える
医療現場での応用
視点
患者サブタイプの発見
既存の診断カテゴリでは分類しきれない患者サブタイプの発見や、治療反応パターンの分類に役立ちます。例えば2型糖尿病は従来一つの疾患として扱われてきましたが、クラスタリング分析により病態の異なる複数のサブグループの存在が明らかになっており、個別化医療の推進に直結します。
セクション2: 次元削減

次元削減とは
次元削減の4つの目的
可視化
高次元データを2〜3次元に圧縮して可視化する
計算効率
変数の数を減らして計算コストを下げる
ノイズ除去
重要でない情報を削ぎ落とし、本質的な構造を抽出する
多重共線性の解消
相関の高い変数群を統合する
主成分分析(PCA)
主成分分析(Principal Component Analysis, PCA)は、最もよく使われる次元削減手法です。データの分散が最大となる方向(主成分)を順に見つけ、第1主成分が最も多くの情報を保持します。上位数個だけでデータの大部分を表現できることが多いのが特徴です。
比較
PCA vs t-SNE
PCAは線形な次元削減で全体構造の把握に適しています。t-SNEは非線形で局所的なクラスタ構造の可視化に優れ、遺伝子発現データの分析ではPCAで全体傾向を確認した後にt-SNEで細部を可視化する使い分けが一般的です。
セクション3: 異常検知
異常検知とは
異常検知は、「正常」なパターンから大きく外れたデータ点を自動検出する手法です。異常データが少なくても適用でき、想定外の異常も検出できます。
医療現場での応用
視点
異常検知と早期発見
患者の状態が急変する前兆を捉えるのに適しています。ICUでは、バイタルサインの微細な変化パターンを異常検知アルゴリズムが監視し、人間が気づく数時間前に状態悪化を予測できたという報告があります。
異常検知の医療現場での活用例
異常検査値の検出
正常範囲外の検査値パターンをリアルタイムに検出する
医療画像の異常検出
正常画像から逸脱した領域を検出する
バイタルサインの監視
患者の状態急変の前兆を捉える
重要な洞察:教師なし学習の価値
教師なし学習は「正解がわからない」問題に取り組む強力なツールです。
注意
教師なし学習の評価の難しさ
「正解」がないため結果の評価が難しいという課題があります。クラスタリングで3つのグループが見つかっても、それが臨床的に意味のある分類かはドメインの専門知識(医学知識)を持つ人間が判断する必要があり、出力を鵜呑みにしてはいけません。
教師なし学習を使いこなす3つのポイント
データの探索
まずデータの構造を把握する探索的分析に使う
仮説の生成
クラスタリング結果から新たな仮説を立て、教師あり学習で検証する
前処理への活用
次元削減や異常検知を教師あり学習の前処理として活用する
明日のアクション
ある病院に、100人の糖尿病患者の検査データ(HbA1c、空腹時血糖、BMI、血圧、コレステロール値など10項目)があるとします。教師なし学習でどのような分析ができるか、3つの手法それぞれでの活用方法を書き出してみましょう。
セルフチェック
1. 教師なし学習と教師あり学習の最も大きな違いは何ですか?
2. 主成分分析(PCA)の目的として最も適切なものはどれですか?
3. ICUでの患者モニタリングに最も適した教師なし学習手法はどれですか?
参考文献
- Ahlqvist E, Storm P, Käräjämäki A, et al. Novel subgroups of adult-onset diabetes and their association with outcomes: a data-driven cluster analysis of six variables. Lancet Diabetes Endocrinol. 2018;6(5):361-369. DOI 10.1016/S2213-8587(18)30051-2