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主要ツール総覧:何があり、何が得意か

ChatGPT・Claude・Gemini・Gemini Notebook(旧 NotebookLM)・OpenEvidence・Genspark・Manus。乱立するAIを目的別に整理する。

  • レッスン 3 / 13
  • 10分

教育目的の教材です。生成AIの出力を診断・治療の判断にそのまま使わないでください。最終判断は医師が行います。

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • 汎用対話、文献・ガイドライン、自分の資料、エージェントの4カテゴリで主要AIツールを整理できる
  • 汎用対話はハルシネーション、自分の資料は要配慮個人情報という注意点を踏まえて選べる
  • 各カテゴリから1つ使い慣れれば現場の多くの場面をカバーできるという方針を説明できる

前回はLLMの仕組みとハルシネーションの正体を扱った。今回は実践に踏み込む。何を使えばいいのか。

はじめに:全部試す必要はない

4つのカテゴリから、目的に合う道具を選ぶ図。
AIツールは4カテゴリに整理でき、各カテゴリから1つ使い慣れれば多くの場面に対応できます。

研修医向けの勉強会をやると、必ず聞かれる。「ツールが多すぎて選べません」。気持ちは分かるが、答えはシンプルだ。汎用対話、文献・ガイドライン、自分の資料、エージェント。この4つのカテゴリを押さえて、各カテゴリから1つ使い慣れればいい。全部入れる必要はない。

以下、医療現場で実際に使われている主要ツールを目的別に整理する。名前・機能・数字は2026年10月3日に各社の公式の説明で確かめたもので、画面写真は2026年7月に撮影した。どれも数か月で変わりうる。


汎用対話:ChatGPT、Claude、Gemini

対話・長文・画像や資料の3つの得意分野から、AIを選ぶ図。
汎用LLM3種の強みを目的別に整理すると、使い分けの判断が速くなります。

文章生成、要約、翻訳、コード補助。汎用LLMの3つはどれもこなす。差が出るのは細部だ。

ChatGPT(OpenAI)。利用者が多く、画像認識・音声入力・外部ツール連携がそろっている。日本語も自然。手順や資料をまとめて呼び出す拡張の仕組みもある。OpenAI は、カスタム GPT(GPTs)を2026年12月11日に終了し、Plugins へ移すと告知している [1]。

ChatGPTの日本語トップ画面。中央に入力欄がある。
ChatGPT の入口の画面(2026年7月撮影)。

Claude(Anthropic)。Fable / Opus / Sonnet / Haiku の4系統があり(上位ほど高性能で、応答は遅く料金は高い)、長文の読み込みと文脈保持が強い [2]。一度に扱える文章の量(コンテキストウィンドウ)は、AI が文章を数える単位のトークンで表す。API(開発者向けの接続口)では最大100万トークンで、アプリで使える量はプランとモデルで違う [2][4]。長い PDF も丸ごと読み込める。ただし長くなるほど、取りこぼしや精度の低下が起きうる(Anthropic は context rot と呼ぶ)。要点は原文で確かめる [3]。論文通読やガイドラインの読み解きに向く。トーン指定がしやすく、執筆支援向き。

Claudeのトップ画面。
Claude の入口の画面(2026年7月撮影)。

Gemini(Google)。モデルには Pro・Flash・Flash-Lite の3段階があり、世代は数か月で入れ替わる(2026年10月時点の Pro は Gemini 3.1 Pro)[5]。Google検索・YouTube・Driveとの連携が深い。最新情報のキャッチアップやウェブ資料の横断に向く。

Geminiのトップ画面。
Gemini の入口の画面(2026年7月撮影)。検索やDriveと連携するときもここから。

比較

3つを使い分ける目安(筆者の使い分け)

  • 対話・アイデア出し・コード補助 → ChatGPT
  • 長文PDFの読解・論文要約・文章執筆 → Claude
  • ウェブ検索を伴う最新情報・Google系資料の統合 → Gemini

→ 1つに絞る必要はない。同じ質問を2つに投げて答えを比較するだけでも、誤りに気づきやすくなる。

SourceARTICLE
ChatGPT

汎用LLMの代表格。画像認識・音声入力・外部ツール連携がそろう

WebOpenAI
chatgpt.com
SourceARTICLE
Claude

長文PDF読解と文脈保持に強い。論文要約・執筆支援に向く

WebAnthropic
claude.ai

文献・ガイドライン:OpenEvidence、Consensus

直接答える経路と、文献を探してから答える経路を比べた図。
医療特化型ツールは文献検索を先に行うため、汎用LLMよりハルシネーションリスクが低くなります。

ハルシネーションがいちばん痛いのは文献の引用だ。存在しない論文を出されると、調べ物の役に立たない。ここに特化したのが医療特化型のツールだ。

OpenEvidence。PubMedに載る論文に加え、NEJM・JAMA・Cochrane・NCCNガイドラインなど提携先の内容を根拠にして臨床疑問に答える米国発サービス [6]。米国の1万以上の病院・医療センターで使われていると発表している(2025年7月)[7]。iOS と Android のアプリもある。回答には引用論文のリンクがつき、原文にすぐ飛べる。妊娠中の片頭痛にトリプタンは安全か、といった具体的な疑問に強い。医療従事者向けのサービスで、使うには医療者としての認証が要る。日本の医師が登録できるかどうかと、その手順は、公式サイトで確かめてほしい。

OpenEvidenceのトップ画面。
OpenEvidence の入口の画面(2026年7月撮影)。

Consensus。Yes/Noで答えられる問いに対し、検索上位の論文(最大20件)の結論を yes・no・possibly などに分けて割合で示す(Consensus Meter)。エビデンスの有無や賛否の割れ方を俯瞰したいときに使う。分類を誤ることもある(開発元は2023年のブログで約1割と説明している)ので、分類された論文は自分で開いて確かめる。

Consensusのトップ画面。
Consensus の入口の画面(2026年7月撮影)。
PubMedの検索画面。
一次情報に戻るときの定番、PubMed の検索画面(2026年7月撮影)。

どちらも仕組みの核は同じだ。AIに文献を引用させるのではなく、文献を検索してからAIに要約させる。順序を逆にする(先に文献を探し、あとから AI に要約させる)だけで、存在しない文献を引用される危険は小さくなる。ただしゼロにはならないので、引用先は開いて確かめる。

SourceARTICLE
OpenEvidence

医学文献と提携先のガイドラインを根拠に臨床疑問に回答。引用リンク付き。医療者の認証が必要

WebOpenEvidence
openevidence.com
SourceARTICLE
Consensus

Yes/Noで答えられる問いに、検索上位の論文の結論の割合を示す。エビデンスの俯瞰に便利

WebConsensus
consensus.app

自分の資料:Gemini Notebook

取り込んだ資料の範囲から、引用付きで答える仕組みの図。
Gemini Notebook(旧 NotebookLM)は取り込んだ資料を根拠に、引用箇所を示しながら回答します。

Gemini Notebook(Google。2026年7月に NotebookLM から改名 [8])は発想が違う。ユーザーがアップロードしたPDF・テキスト・URLを根拠にして答え、引用箇所を示す。ウェブから新しい資料を探して足す機能もあるが、答えはノートブックに入れた資料にもとづく [9]。Google の説明では、アップロードした資料はモデルの訓練には使われない [9]。ただし、フィードバックを送った場合は例外で、内容が確認され、改善に使われることがある。Google Workspace・Education のアカウントでは、確認も訓練もされない [9]。

音声解説(英語の画面では Audio Overview)は日本語を含む80以上の言語で作れ、「詳細」「概要」「批評」「議論」の形式を選べる。動画解説も作れる [10]。

何に効くか。担当疾患のガイドライン3本、最新総説2本、自施設プロトコル。これをまとめてアップロードすれば、これらの資料に限定したQ&Aができる。引用箇所も明示される。回診前の確認や、後輩への説明資料の整理に便利だ。

院内文書を扱える点も実務的に大きい(要配慮個人情報を含まず、施設の規定で外部のサービスに入れてよいものに限る)。

SourceARTICLE
Gemini Notebook

旧 NotebookLM。アップロードした資料を根拠に、引用つきで回答。自分専用の知識ベースを構築できる

WebGoogle
notebook.google.com

エージェント:Genspark、Manus

質問に答えるだけでなく、ウェブを自動検索し、複数ステップの作業を自律的に進めて成果物を返す。それがエージェント型だ。

Genspark。2024年にAI検索として登場し [11]、いまはスライド・表・文書・調査などを1つの画面で作らせる「AIワークスペース」になっている [12]。テーマを与えて複数のソースを集め、レポートにまとめさせると、文献横断調査の下書きに使える。

Gensparkのトップ画面。
Genspark の入口の画面(2026年7月撮影)。調査以外の作業も並ぶ。

Manus。汎用エージェント。ウェブ操作、データ収集、コード実行、ファイル生成を連鎖させ、症例をテーマにプレゼンの下書きを組む、といった複合タスクを任せられる。2025年の公開のあと、運営の体制が短い間に何度か変わったツールなので(2026年4月に中国当局が Meta に買収の解消を求め、Manus は8月に、まもなく独立した会社としての運営に戻ると発表した)[13]、利用条件と情報の扱いを使う前に確かめる。

注意点がある。自動性が高いぶん、ユーザーの確認が後手に回りやすい。医療データを扱うなら、生成物の逐一検証は省略してはいけない。


参考文献

  1. OpenAI. Custom GPT retirement and migration FAQ(OpenAI ヘルプ). https://help.openai.com/en/articles/20001519-custom-gpt-retirement-and-migration-faq
  2. Anthropic. Models overview(2026年10月3日確認。Fable・Opus・Sonnet・Haiku の4系統。Fable・Opus・Sonnet のコンテキストウィンドウは100万トークン). https://platform.claude.com/docs/en/about-claude/models/overview
  3. Anthropic. Context windows("As token count grows, accuracy and recall degrade, a phenomenon known as context rot."). https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/context-windows
  4. Anthropic. How large is the context window on paid Claude plans?(Claude ヘルプ). https://support.claude.com/en/articles/8606394
  5. Google. Gemini models(Gemini API のモデル一覧。2026年10月4日確認). https://ai.google.dev/gemini-api/docs/models
  6. OpenEvidence(医療者向けの臨床疑問の検索。提携先として NEJM、JAMA、NCCN、Cochrane などを公表). https://www.openevidence.com/
  7. OpenEvidence. OpenEvidence, the Fastest-Growing Application for Physicians in History, Announces $210 Million Round at $3.5 Billion Valuation. PR Newswire. 2025年7月15日(米国の1万以上の病院・医療センターで利用). https://www.prnewswire.com/news-releases/openevidence-the-fastest-growing-application-for-physicians-in-history-announces-210-million-round-at-3-5-billion-valuation-302505806.html
  8. Google. NotebookLM is now Gemini Notebook. 2026年7月16日. https://blog.google/innovation-and-ai/products/gemini-notebook/notebooklm-gemini-notebook/
  9. Google. Learn about Gemini Notebook(Gemini Notebook ヘルプ。"grounded information based on your sources with clear in-line citations"/"Your data is protected, and is not used to train Gemini Notebook unless you provide feedback."). https://support.google.com/gemininotebook/answer/16164461
  10. Google. Gemini Notebook で音声解説を生成する(Gemini Notebook ヘルプ。形式と、80以上の出力言語). https://support.google.com/notebooklm/answer/16212820
  11. Wiggers K. Genspark is the latest attempt at an AI-powered search engine. TechCrunch. 2024年6月18日. https://techcrunch.com/2024/06/18/genspark-is-the-latest-attempt-at-an-ai-powered-search-engine/
  12. Genspark. Genspark AI Workspace: Where Your Work Gets Finished Autonomously(公式ブログ). https://www.genspark.ai/blog/genspark-ai-workspace-and-series-b-funding
  13. Palmer A. Manus to return as independent company after China forced Meta to unwind $2 billion deal. CNBC. 2026年8月11日. https://www.cnbc.com/2026/08/11/manus-china-meta-acquisition.html

セルフチェック

1. 医学文献の引用でハルシネーションのリスクを下げるために、最も適しているのはどれか?

2. Gemini Notebook(旧 NotebookLM)の最大の特徴として最も適切なものはどれか?

明日のアクション

今週、まだ触ったことがないツールを1つ選んで、自分の専門領域の臨床疑問を1つ投げてみてほしい。同じ質問をいつも使っているAIにも投げて答えを見比べると、各ツールの「得意な顔」がすぐに分かる(OpenEvidenceに登録できないときは、Consensusでもよい)。

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