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プロンプトとパーソナライズの基本

AIの答えは、聞き方で大きく変わる。再現性のあるプロンプト設計と、自分専用にチューニングする方法を学ぶ。

  • レッスン 5 / 13
  • 11分

教育目的の教材です。生成AIの出力を診断・治療の判断にそのまま使わないでください。最終判断は医師が行います。

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • 同じAIでも聞き方で出力の質が変わる仕組みを理解し、人に説明できる
  • 役割と文脈と出力形式の3点セットと、制約を最初の依頼にまとめる型を使い分けてプロンプトを設計できる
  • 対話で出力を重ねて育て、カスタム指示やProjectsに立場と出力形式を保存し毎回の入力を省ける

境界線が見えたら、次はその中で力を最大化する話だ。

はじめに:同じAIなのに出力が違う理由

同期2人がChatGPTに胆嚢炎の鑑別を聞いた。片方には箇条書きの簡潔な答え、もう片方には症例ベースの具体的な答えが返ってきた。AIの性能差ではない。聞き方の差である。

同じAIでも、聞き方で答えの質は大きく変わる。

出力の質は、聞き方(プロンプトの書き方)に大きく左右される [1]。臨床でのプロンプト設計を医師向けにまとめた解説も出ている [1]。プロンプト設計は才能ではなく型だ。型を知って反復すれば誰でも身につく。ここでは医療現場で即使える型を3つに絞って渡す。


型1:役割・文脈・出力形式を3点セットで指定する

役割・文脈・出力形式の3つを合わせて指示する図。
役割・文脈・出力形式の3点セットを最初に与えると、AIの出力が具体的かつ一貫したものになります。

胆嚢炎の鑑別を教えて、だけではAIは誰に何のために答えればいいか分からない。3点セットで指定すると出力が安定する。

あなたは救急外来で働く上級医です。
私は2年目の研修医で、急性腹症の患者を診ています。
胆嚢炎を疑う場合の鑑別診断を、優先順位と除外手順がわかる形で
箇条書きで説明してください。

役割(あなたは誰か)、文脈(私の立場と状況)、出力形式(どう答えてほしいか)。この3つを入れるだけで、出力の具体性と一貫性が変わる。

視点

なぜ3点セットが効くのか

LLMは「次の単語の確率」を文脈から計算している。文脈が薄いと、AIは「最も平均的な答え」を出してしまう。役割と立場を明示することで、AIは「この文脈で最も自然な答え」を選びやすくなる。

→ 雑に聞けば雑な答えが返り、的確に聞けば的確な答えが返る。AIの性能ではなく、自分の聞き方の問題と捉えると、上達が速い。


型2:制約と禁止は最初の依頼にまとめて書く

質問が条件を調整できるゲートを通り、範囲を絞った回答へ進む図。
制約と禁止を最初の依頼にまとめて書くことで、AIの出力が現場仕様に近くなります。

短く答えて、専門用語を使って、日本語で。こうした制約は、答えが返ってから付け足すより、最初の依頼にまとめて書いておくほうが漏れにくい。

長い資料を貼るときは、置き場所にも気を配る。Anthropic は、資料を先に置き、質問と指示を最後に書くほうが良い結果になりやすいとしている [2]。OpenAI の GPT-4.1 向けの案内は、長い資料の前と後の両方に指示を書くよう勧めている [3]。各社で勧め方が違うので、大事な制約は資料のあとにもう一度書いておくと確実だ。

医療現場で使いやすい制約の例。

  • 「引用論文は5年以内のものに限定」
  • 「ガイドラインに記載がない情報には『不明』と明記」
  • 「薬剤名は商品名ではなく一般名で」
  • 「日本のガイドライン(〇〇学会)を優先して引用」

最初の依頼にまとめておけば、出力が自分の現場仕様に近づく。


型3:1回で完成させず、対話で育てる

粗い下書きが人とAIの修正ループを何度か回り、読みやすい文書へ整う図。
1回で完璧を目指さず、対話を重ねることでAIから引き出せる出力の質が上がります。

1回で完璧を目指す必要はない。出てきた答えに対して、もっと短く、具体例を3つ追加、逆の立場からも検討、と重ねていくほうが結果の質は上がる。

最初は5往復くらい重ねてみてほしい。1回目で止める人が多いが、そこで見切るとAIの本当の出力には届かない。


パーソナライズ:毎回書かなくて済む仕組み

保存した設定を鍵として使い、複数の会話で同じ形式の出力を作る図。
カスタム指示に立場と出力形式を保存しておくと、毎回の入力が短くなり一貫した出力が得られます。

毎回3点セットを打つのは面倒だ。保存する機能がある。

ChatGPTにはカスタム指示(Custom Instructions)がある。設定の「パーソナライズ」にあるカスタム指示の欄に、「私について」「どう答えてほしいか」を書いておけば、すべての会話に反映される [4]。こう書く。

入力例
私について:
- 小児科専攻医(卒後5年目)
- 日本のガイドラインを優先して引用してほしい
- 専門用語はそのまま使ってよい

どう答えてほしいか:
- 結論を最初に。理由は箇条書きで。
- 医学的根拠が薄い場合は明示してほしい
- 引用論文があるときは年代と著者を併記

これで毎回の入力が短くなる。ClaudeにはProjectsという機能があり、プロジェクト単位で文脈や参考資料を持たせられる。論文執筆用、外来用、勉強会準備用と分けておくと切り替えが楽だ。


参考文献

  1. Liu J, et al. Prompt Engineering in Clinical Practice: Tutorial for Clinicians. J Med Internet Res. 2025;27:e72644. PMC12439060.
  2. Anthropic. Prompting best practices("Put longform data at the top" "Queries at the end can improve response quality by up to 30 percent in tests"). https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/prompt-engineering/claude-prompting-best-practices
  3. OpenAI. GPT-4.1 Prompting Guide("place your instructions at both the beginning and end of the provided context"). https://developers.openai.com/cookbook/examples/gpt4-1_prompting_guide
  4. OpenAI. ChatGPT Custom Instructions(ヘルプセンター). https://help.openai.com/en/articles/8096356-chatgpt-custom-instructions

セルフチェック

1. プロンプトの「3点セット」として最も適切な組み合わせはどれか?

2. 毎回の入力を省略して自分専用にチューニングする方法として最も適切なものはどれか?

明日のアクション

今日中に、自分が使っているAIツールのカスタム指示欄を埋めてみてほしい。例に挙げたように「私について」3行、「どう答えてほしいか」3行で十分だ。明日からの体感が変わる。

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