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レッスン 1 / 5|15分で読めます

プロンプトエンジニアリングとは

プロンプトエンジニアリングの定義、重要性、良いプロンプトと悪いプロンプトの違いを理解します

5つの部品をひとつの依頼書に組み立て、整った回答へつなげる流れをゴロニャンが見守る図
役割・タスク・文脈・制約・形式を組み合わせると、依頼が具体的になる。
役割・タスク・文脈・制約・形式の5要素で依頼を組み立てるデモ。
5要素で依頼を組み立てる教材用画面
役割・タスク・文脈・制約・形式を先に置くと、依頼が具体的になる。
構造化したプロンプトの確認画面
部品が揃っているかを、送る前に一度見る。

外来で「AIに診断書のドラフトを書かせたら全然使えなかった」と聞くことが、最近よくある。 聞き返すと、「診断書を書いて」と一行投げただけだったりする。

これは、AIの問題ではない。 依頼の仕方の問題だ。

同じ Claude / ChatGPT に、同じ患者情報を渡しても、依頼文(プロンプト)の作り方ひとつで、返ってくるドラフトの質はまったく変わる。 この差は、技術的な能力の差ではなく、指示書の作法の差だ。

プロンプトを設計する技術。プロンプトエンジニアリング。を、医療現場の言葉でほぐしていく。

このレッスンで学ぶこと

このレッスンを完了すると、プロンプトエンジニアリングの定義と重要性を理解し、良いプロンプトと悪いプロンプトの違いを把握できるようになる。さらに、医療現場での実践的な意義として、診断書・症例報告・患者説明資料のドラフト作成にどう活かすかを学ぶ。


1. プロンプトエンジニアリングの定義

プロンプトエンジニアリングは、AIからより良い回答を得るために、プロンプトを設計・最適化する技術だ。

目的は3つにまとめられる。

  • 回答の質の向上: より正確で有用な回答を得る
  • 出力の制御: 意図した形式・内容にする
  • 効率の向上: より少ない試行で目的を達成する

ここで「設計する」と言っているのが大事だ。 頭に浮かんだ言葉をそのまま投げるのではなく、何を、どう、どこまで をあらかじめ考えてから書く。 その分の数十秒の手間が、AIの返答の質を桁で変える。

医療現場での重要性

医療現場では、プロンプトの質が回答の質を左右する局面が、特に多い。

  • 正確性: 用量・年齢区分・ガイドライン名が誤っていれば、そのまま危険になる
  • 効率性: 診断書・症例・患者説明資料は、毎回ゼロから書くより質の高いドラフトから手直しする方が速い
  • 安全性: AIに渡す情報の範囲(個人情報を含めない、構造だけにする)を、プロンプト側で制御する

「AIが正しい答えを返すかどうか」を、AI任せにせず、こちらの書き方で制御する習慣をつくる。


2. 良いプロンプトと悪いプロンプト

悪いプロンプトの例

抽象的・情報不足・制約条件なし。

  • 「診断書について教えて」
  • 「症例報告書を作成して」
  • 「説明資料を作成して」

これらの問題点ははっきりしている。 AIが何を求められているか分からない。期待と異なる回答が返ってくる。複数回の試行が必要になる。 結果として、AIに頼んだ方が早かったはずの作業が、人手で書くより遅くなる。

良いプロンプトの例

具体的・情報十分・制約条件あり。

  • 「急性気管支炎の診断書の書き方を、具体的な例を含めて教えてください」
  • 「以下の症例情報に基づいて、症例報告書のIntroductionセクションを作成してください:[症例情報]」
  • 「急性心筋梗塞について、一般の患者が理解しやすい言葉で説明資料を作成してください。専門用語は最小限にし、300文字以内、箇条書き形式で」

並べてみると、悪いプロンプトと良いプロンプトの違いは語数ではない。構造の有無だ。 何を、誰の立場で、どんな条件で、どの形式で。これらが揃っているかどうかが、すべてを決める。


3. プロンプトの5つの要素

効果的なプロンプトには、5つの基本要素が含まれる。

1. 役割の設定

AIにどの立場で答えてほしいかを最初に渡す。

あなたは経験豊富な内科医です。

何の専門家として答えるかが決まれば、用語選択・語り方・前提知識の置き方が揃う。

2. タスクの明確化

何をしてほしいかを具体的に示す。

診断書の主訴セクションを作成してください。

「教えて」ではなく「作成してください」「比較してください」「箇条書きにしてください」のように、動詞で指示する。

3. コンテキストの提供

判断に必要な背景情報を渡す。

患者は65歳男性で、3時間前から胸痛と発汗を訴えています。心電図でST上昇、トロポニン陽性。

情報を渡さないと、AIはありがちな一般論で埋める。具体性がなくなる。

4. 制約条件の指定

出力に対する制限を明示する。

医療用語を使用し、50文字以内で記述してください。

文字数・言葉遣い・含めてほしい項目・避けてほしい項目。書かなければ、AIは無制限に書こうとする。

5. 出力形式の指定

希望する形式を指定する。

箇条書き形式で、見出しを太字で、各項目に番号を振ってください。

テキストか表か、Markdown か HTML か。後でコピペする先が決まっているなら、その形式に揃えておく方が手戻りがない。


4. 医療現場での実践例

診断書作成のプロンプト

あなたは経験豊富な内科医です。
以下の患者情報に基づいて、診断書のドラフトを作成してください。

患者情報:
- 年齢:65歳、男性
- 主訴:胸痛、発汗、呼吸困難
- 現病歴:3時間前から症状出現
- 検査結果:心電図でST上昇、トロポニン陽性
- 診断名:急性心筋梗塞

診断書には、主訴、現病歴、診断名を含めてください。
医療用語を適切に使用し、簡潔に記述してください。

5つの要素(役割・タスク・コンテキスト・制約・形式)が全部入っている。 このまま貼って使える。

症例報告書 Introduction セクションのプロンプト

あなたは経験豊富な内科医です。
以下の症例情報に基づいて、症例報告書のIntroductionセクションを作成してください。

症例情報:
- 年齢:45歳、女性
- 主訴:急性腹痛
- 診断:虫垂炎
- 新規性:非典型的な症状パターン

Introductionセクションでは、
症例の新規性と教育的意義を強調してください。
300文字以内で、専門用語を適切に使用してください。


5. プロンプトの反復改善

プロンプトは、一度で完璧に書く必要はない。 回答を見て、必要に応じて改善できる。むしろ反復前提で書く方が早い。

改善のプロセス:

  1. 最初のプロンプトで質問する
  2. 回答を確認し、不足している情報や改善点を特定する
  3. プロンプトを改善して再質問する
  4. 必要なら、もう一巡

この4ステップを2〜3回まわすと、自分の業務に合った定型プロンプトが手元に育つ。 そこから先は、テンプレートを少し変えるだけで毎回使える。


今日のまとめ

3行で振り返ります。

  • プロンプトエンジニアリングは、AIへの指示書の作法。問題はAIの能力ではなく、依頼の仕方にある
  • 良いプロンプトには 5要素(役割・タスク・コンテキスト・制約・出力形式)が揃う。語数ではなく構造で決まる
  • プロンプトは一発で完成させなくていい。返答を見ながら改善する反復前提が、結局いちばん早い

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L02「基本的なプロンプトテクニック」では、明確な指示・コンテキストの提供・例示など、医療現場ですぐに使える基本テクニックを掘り下げる。


セルフチェック

1. プロンプトエンジニアリングの主な目的として、最も適切なものはどれですか?

2. 効果的なプロンプトの基本要素として含まれないものはどれですか?

3. 「診断書について教えて」というプロンプトの問題点として最も適切なものはどれですか?

明日のアクション

明日の業務で、AIに質問する際に「役割の設定」「タスクの明確化」「コンテキストの提供」「制約条件」「出力形式」の5つの要素を意識してプロンプトを1つ作成してみる。診断書、症例要約、患者説明資料など、自分の日常業務の1つをテーマにする。

書き終えたプロンプトを Claude か ChatGPT に投げて、返ってきた回答の使い勝手を、「いきなり書いた一行プロンプト」と比較してみる。差が見えれば、それで今日の演習は成功だ。