前のレッスンでは、1本の論文の中の数字を検算しました。ここでは視野を広げ、研究の初期段階で役立つ2つの専用コネクタを扱います。臨床試験の登録情報を検索するClinicalTrials.govと、査読前の論文を検索するbioRxiv/medRxivです。
どちらも、通常の論文検索より一歩早い情報にアクセスできます。ただし、早さには理由があります。
臨床試験の登録情報で何が分かるか
ClinicalTrials.govは、進行中・計画中・完了済みの臨床試験の登録情報データベースです。コネクタをつなぐと、対象疾患や介入方法から試験を検索し、適格基準(誰を対象に含み、誰を除外するか)、エンドポイントの設計、スポンサーの情報を調べられます。
補足
国際的な登録だが、管轄は米国法
前のレッスンで触れたとおり、ClinicalTrials.govの管轄は米国の法律(FDAAA 801)に基づきます。ただし、登録されている試験自体は世界各国のものを含む国際的なレジストリです。日本発の試験を探すこと自体は問題ありませんが、日本独自の治験届出制度(jRCT等)とは別の仕組みだと理解した上で使ってください。
このコネクタが向いているのは、自分の研究テーマで「すでにどんな試験が動いているか」を確認する場面です。同じ疾患・同じ介入で進行中の試験があれば、エンドポイントの設計や対象患者の絞り方を参考にできますし、逆に、まだ誰も手をつけていない空白領域を見つける手がかりにもなります。
プレプリントで最新の研究を早く追う
bioRxiv/medRxivは、査読前論文(プレプリント)を検索できるコネクタです。投稿から公開までのタイムラグが短いため、通常の論文検索より数ヶ月から1年早く、最新の研究動向をつかめます。
bioRxiv/medRxivで、過去30日以内に投稿された〔研究テーマ〕に関するプレプリントを探してください。
それぞれについて、対象・方法・主な結果を2〜3行で要約し、正式な査読誌に掲載済みかどうかも確認してください。このコネクタは、正式に出版されたかどうかの追跡もできます。気になるプレプリントを見つけたら、しばらく経ってから「これは査読を通って出版されましたか」と聞き返すと、掲載の有無や、掲載時に結論が変わっていないかを確認できます。
速さと質のトレードオフ
プレプリントは、査読という審査を経ていません。多くのプレプリントサーバーが行っているのは、剽窃チェックや、明らかに非科学的な内容でないかという基礎的なスクリーニングにとどまります。
査読済み論文とプレプリント
専門家による審査を経ているため、明らかな方法論上の欠陥は一定程度ふるい落とされています。ただし公開までに数ヶ月から1年以上かかることもあります。
投稿から公開まで数日というスピードで最新の知見に触れられます。一方で、方法論の欠陥や結論の誤りが、専門家の目を通らないまま公開されている可能性があります。
学会発表の準備や、動きの速い分野の最新動向を把握する場面では、プレプリントの速さが強みになります。逆に、自分の研究や臨床判断の根拠として引用する場面では、査読済みの論文を優先するか、プレプリントであることを明記した上で慎重に扱う必要があります。引用そのものを確かめる手順は、Deep Research入門「出典を検証する」で詳しく扱っています。
やってみよう
演習1:進行中の試験を1つ検索してエンドポイントを書き出す
自分の研究テーマに関連する、進行中または計画中の臨床試験を1つ検索してみてください。その試験がどんなエンドポイントを設定しているか、書き出してみましょう。
演習2:プレプリントと査読済み論文、どちらを先に読むか
いま自分が追いかけている研究テーマについて、プレプリントを先に読むべき場面と、査読済みになるまで待つべき場面を、それぞれ1つずつ考えてみてください。
今日のまとめ
3行で振り返ります。
- ClinicalTrials.govは、適格基準・エンドポイント・スポンサーなど進行中の試験の情報を調べられる、国際的な登録データベース
- bioRxiv/medRxivは、査読前のプレプリントを検索し、正式出版への移行も追跡できる
- プレプリントは速さと引き換えに査読を経ておらず、引用する場面では査読済みの論文より慎重な扱いが要る
次のレッスンでは、研究で医療の情報を扱うときに、どこまでをコネクタに渡してよいかの線引きを確認します。
セルフチェック
1. ClinicalTrials.govコネクタで調べられる情報として、本文で挙げられていないものはどれですか。
2. プレプリントについて、本文の説明と合っているものはどれですか。
3. 査読済み論文とプレプリントの使い分けとして、本文で勧めている考え方はどれですか。