連載の最終回です。
ここまで14回、Vibe Codingの全体像と、最初の1本を作って公開するまでを通しでお伝えしてきました。
最終回は、振り返りです。 半年で20本以上アプリを作って、私が「本当に大事だった」と思う3つだけ、お渡しします。
それに加えて、これからどう学び続けるか、何を作り続けるかの道筋も。
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大事だった1つ目 「言語化の質」が、すべて
最初に痛感したのは、これでした。
AIへの指示が曖昧だと、返ってくるものも曖昧。 指示が具体的だと、返ってくるものも具体的。
それだけ。
「いい感じに作って」が、なぜダメか。 情報量が、ゼロだからです。
20本作ってみて気づいたのは、Vibe Codingの上達は、AIの使い方の上達ではなく、自分の言語化能力の上達と完全に重なる、ということでした。
具体的な指示を書く練習になる。 書きながら、自分の頭の中も整理されていく。 これは、コードに限らず、仕事の依頼や、家族との会話にも、なぜか効きます。
「Vibe Codingは、言語化の練習である」。 半年やって出した、いちばんの発見です。

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大事だった2つ目 「動かす」と「正しい」は別物
これも、何度も自分に言い聞かせている話です。
AIが書いてくれたコードは、動きます。 動くと、正しく見えます。 でも、動くことと、医学的に・法的に・社会的に正しいことは、別物です。
ここを混同すると、事故が起きます。
私は医療の人間なので、特に薬の量や疾患の説明に関しては、AIの出力をそのまま使いません。 必ず、添付文書や最新ガイドラインに当て直します。 法律やお金の話も、同じです。
3つだけ、絶対のルールにしています。
1. 出力された数字は、一次情報で確認する
薬の量、税率、利率、計算式。 すべて、AIの「自信満々」を、自分で当て直す癖をつけます。
2. 個人情報は、AIに渡さない
氏名、住所、電話番号、生年月日、ID、写真、診療情報。 これらは、AIに見せる前に必ず削るかダミーに置き換えます。
3. 著作権のあるものは、丸投げしない
他人が書いた記事や論文をまるごと放り込んで、要約や記事化を頼まない。 必要な部分だけ、引用と出典を明記して使う。
この3つを徹底するだけで、9割以上の事故が避けられます。

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大事だった3つ目 続けるコツは「身近な不便」だけ作ること
これは、最後にいちばん伝えたいことです。
学習教材としてのアプリ作りは、続きません。 「役に立ちそうだから」で作ったものは、自分でも使いません。
続いている人を見ると、共通点がひとつあります。 全員、自分の身近な不便を、自分のために潰している。
私の場合、外来で「あったらいいな」と思ったものを、その日のうちに作ることが多いです。
- 体重から薬の量を出すツール
- よく使う注射薬の希釈計算ツール
- 患者さんの家の地図を、住所からすぐ表示するツール

この3つは、毎日使っています。 だから、改良も続きます。
医療現場には、職種ごとに「ちょっと不便」が散らばっています。 私の周りの方々が実際に作って使っている例も、少しだけ。
- 看護師:申し送りのテンプレを症例に合わせて生成するツール、シフト調整の補助
- 薬剤師:服薬指導の記録を整理するフォーマット、相互作用の早見ツール
- リハ職:評価シートをワンクリックで生成、患者さんの目標達成度の見える化
- 検査技師:検査値の経時変化を一枚にまとめるツール
- 医療事務:よくある問い合わせの定型回答テンプレ

逆に、「いつか使うかも」で作ったものは、ほぼ全部触らなくなりました。
「身近な不便」だけ作る。 これが、続く人の唯一の共通点です。
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ここから、何を学ぶか
最後に、もう一段先に進みたい人向けの道筋を置いておきます。
A. 道具を増やす
- Cursor(カーソル):AIが組み込まれた専用エディタ。Claude Codeと併用すると速い
- GitHub Copilot:既存のIDEに後付けできるAIアシスタント
- Bolt.new、Lovable:ブラウザだけでフロントエンド開発ができるサービス
ここで「フロントエンド」というのは、ユーザーが直接見て触る部分のこと。 Webページの見た目や、ボタンの動きの部分です。 私のイメージは、店舗の看板と売り場、お客さんに見える側の全部です。
B. つなぐ先を増やす(MCP)
第14回で触れたMCPの世界です。 PubMed、国土交通省、Notion、Slack、Googleカレンダー。 身の回りのサービスをAIにつなぐ、という方向の進化です。
C. 仲間を作る
ひとりで続けるより、誰かと続ける方が、圧倒的に楽です。
- X(旧Twitter)で「#VibeCoding」「#バイブコーディング」を追う
- もくもく会、Vibe Coding系のオンラインコミュニティに顔を出す
- 同僚や家族を、まず1人巻き込む

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連載を終えるにあたって
この連載は、私自身が半年でやってきたことを、できるだけ最短で誰かに渡すために書きました。
私は医師ですが、ここに書いたことは、ほとんど医師の経験に依存しません。 医療現場で働くすべての職種で、「身近な不便を、自分の手で潰す」体験は、誰にでも開かれています。
これからも、Vibe Codingの世界はものすごい速度で進みます。 今日の内容が古くなる日も近いです。 でも、最初の3つ、
- 言語化の質
- 動くと正しいは別物
- 身近な不便だけ作る
これは、何が出てきても変わらない、と思っています。
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全15回の振り返り

最後に、目次を置いておきます。 迷ったら、戻ってきてください。
第1段 全体像をつかむ
- 01 そもそもVibe Codingってなに?
- 02 「俺もアプリ作れるんじゃね」を体験する
- 03 知っておきたい7つの言葉(前半:LLM〜IDE)
- 04 知っておきたい7つの言葉(後半:Git〜デプロイ)
第2段 最初の1本を作る
- 05 ChatGPTで最初の1本
- 06 直しを話しかけるコツ
- 07 コラム 詰まったときの抜け方
第3段 道具を増やす
- 08 Claude Codeを準備する
- 09 ターミナルって怖くない
- 10 Claude Codeで実際に作る
第4段 育てる
- 11 アプリを育てる① 機能を足す
- 12 アプリを育てる② ファイルを分ける
第5段 世に出す
- 13 GitHubに上げる
- 14 Vercelで世界に出す
第6段 振り返る
- 15 半年やって、本当に大事だった3つ(いまここ)
連載のすべてを読んでくださって、ありがとうございました。 読んでくださった方が、今日のうちに1本目のアプリを作り始めるきっかけになれていたら、嬉しいです。
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学ぶより、作る。 完璧より、使える。 未来より、今日の1本。
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連載は終わりですが、メルマガ「おかもんだより」では、続編やTipsを引き続き配信します。 よかったら登録してお待ちください。
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演習:30分の宿題(最終回)
連載最後の宿題は、シンプルで本気の1つだけ。
「自分が3か月続けて使うアプリ」を1つ決めて、24時間以内に最初のバージョンを完成させる
ここまで14回、いろいろな道具と作法を扱ってきました。 最終回は、実装より決断の回です。
「3ヶ月続けて使うアプリ、何を作るか」だけ、決めてください。
候補が多くて選べないなら、こう考えます:
- 自分の業務で、毎日/毎週繰り返している作業を3つ書き出す
- その中で、5分以上時間を取られているものに丸を付ける
- その中で、自分が直したいと思った瞬間の感情が新しいものを選ぶ
そして、24時間以内に最初のバージョンを完成させる。 完成度70%でいい。動けばOK。
3ヶ月後、その1本が毎日使われているかどうか、振り返ってください。 使われていれば、Vibe Coding は生活の道具として定着しています。 使われていなければ、別の題材で再挑戦すればいい。
「身近な不便だけ作る」が成立する条件は、これだけです。
医療職別 実例ギャラリー:連載読者の作品(架空・募集中)
連載読者の作品も、これから集めていきたいです。
架空例1:救急医・小児トリアージ判定ツール
主訴と年齢を入れると、緊急度(赤・黄・緑)と推奨検査が出るツール。 夜間救急で使うことを想定。判断が速くなり、研修医の教育にも使える。
架空例2:薬剤師・服薬コンプライアンスチェック
患者さんの服薬日記を入力すると、飲み忘れパターンを分析して家族向けレポートを生成するアプリ。 高齢者の服薬指導で活用。
架空例3:医療事務・問い合わせ振り分けボット
電話問い合わせの内容を入力すると、該当部署と回答テンプレが出るアプリ。 新人事務スタッフの研修コストを大幅削減。
これらの実例を、メルマガ「おかもんだより」で随時紹介していきます。 あなたの作品も、ぜひ送ってください。
もっと深く:「身近な不便を作る」が成立する条件(gstack ETHOSとの接続)
「身近な不便だけ作る」という思想は、私の独創ではありません。
シリコンバレーの著名VC、Garry Tan が立ち上げた gstack というプロジェクトの ETHOS に、こう書いてあります。
Build for Yourself Solve your own real problems, not hypothetical ones.
「自分の実問題を解決する。仮想的なニーズではなく」。
この原則が成り立つ条件は、3つあります:
- 使う人=作る人:自分が使い続ける限り、改良の動機が枯れない
- 問題が具体的:抽象的な「便利そうな機能」ではなく、自分が今日困った具体的瞬間
- 完成度70%でも価値:自分が使うなら、完璧さは要らない
医療職にとって、この3条件はすべて揃っています:
- 自分の業務で毎日同じ作業を繰り返している(使う人=作る人)
- 何が不便か、明確に言語化できる(問題が具体的)
- 自分用なら動けばOK(完成度70%)
つまり、医療職は Vibe Coding と相性が極めて良い。 半年やった私の実感です。
動画で見る
- YouTube:Garry Tan の startup advice:Build for Yourself の哲学
連載のすべてを読んでくださって、本当にありがとうございました。
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参考・出典
- Karpathy, A. (2025). 「Vibe Coding」提唱投稿(X)
- 安野貴博「バイブコーディング超入門講座」全4回シリーズ(YouTubeチャンネル「安野貴博の自由研究」、2026年)
- paiza株式会社「バイブコーディング入門 Claude Code編」 https://paiza.jp/works/vibe-coding-claude-code/trial
- Anthropic「Model Context Protocol」 https://www.anthropic.com/news/model-context-protocol
- gstack ETHOS https://github.com/garrytan/gstack/blob/main/ETHOS.md
