状況
学会発表の準備で、一番時間がかかるのは実は「構成を考える」工程だと思っていた。何枚にするか、どの順で見せるか、各スライドで何を言うか、結果は出ているのに、それを「7分で筋の通った話」に組み上げるのに毎回1〜2時間使っていた。
院内勉強会や教育講演も同じ構造で、発表ごとにゼロから考えていた。これをAIに任せられないかと思ったのが最初の動機だ。
やってみると、Claudeは構成の「型」を非常に素直に出してくれる。自分が考えるべきなのは「正しいか」「自分の言葉か」の2点だけで、それ以外は任せてしまうほうが速い。
やったこと
発表準備は3段階でClaudeを使う。
ステップ1: スライド骨格と時間配分を生成する
まず、研究要旨や抄録のテキストを丸ごと渡してスライド構成案を出させる。
以下の論文要旨と研究結果に基づき、7分間の学会発表用のスライド構成案を作成してください。
各セクションのタイトル、伝えるべき要点、推奨発表時間を含めてください。
聴衆は同専門分野の医師です。
[論文要旨 or 抄録テキストをここに貼る]
返ってくる構成案はだいたいこういう形になる。
1. タイトル・COI(30秒): 研究テーマ、発表者名、COI開示
2. 目的(45秒): 研究の背景と本研究で解決したい課題
3. 方法(1分30秒): 対象患者、介入方法、評価項目、統計解析(簡潔に)
4. 結果(2分30秒): 主要評価項目の結果、重要な副次評価項目
5. 考察(1分): 結果の解釈、先行研究との比較、本研究の限界
6. 結論(45秒): 最も重要な結論と今後の展望
自分はここを見て「順番がおかしい」「考察に入れるべき点が抜けている」などを修正する。ゼロから考えるより、叩き台を直すほうが圧倒的に速い。
ステップ2: 各スライドのキーメッセージと図表案を生成する
構成が固まったら、各セクションのデータを渡してスライド単位の設計図を出させる。
上記構成案の「結果」セクション(スライド3枚分)について、
各スライドのキーメッセージ1文と、推奨する図表の種類・強調点を提案してください。
データは以下の通りです:[具体的なデータや統計値]
図そのものはAIが作れないが、「カプランマイヤーでこの比較を見せてハザード比を大きく出す」「森林プロットでサブグループを並べて高齢者群だけ色を変える」という設計図は返ってくる。これがあると、実際の図表作成に迷いがなくなる。
ステップ3: 口頭発表スクリプトを生成する
スライドが完成したら、各スライドのキーメッセージを渡してスクリプトを出させる。
スライド構成案とキーメッセージに基づき、7分間の発表に収まる口頭スクリプトを作成してください。
各スライドの切り替えタイミングと、強調すべきキーワードを明記してください。
返ってきたスクリプトはあくまで「素材」で、自分の話し方に合わせて全文書き直すことが多い。それでも「このスライドで何を言うべきか」の骨格があると、自分の言葉への置き換えが速い。
効いたところ
- スライド構成を考える時間が体感で半減する
- 論点の抜け・順番の乱れを、スライドを作り始める前に潰せる
- キーメッセージが言語化されることで、図表に何を見せるべきかが明確になる
- スクリプト生成で「このスライドで言うことがない」問題が事前に見える
- 院内勉強会・教育講演など形式が変わっても同じフローで対応できる
限界・気をつけていること
- 図表・データはAI作成不可: グラフや統計表は自分で作るしかない。AIが出せるのは「何を見せるべきか」の設計図まで
- 引用文献の幻覚: スクリプトや考察に「先行研究ではXと報告されている」という記述が入ることがあるが、出典をAIが作り出す場合がある。引用文献は必ずPubMedで実在確認する
- 「話すこと」と「書くこと」は別: AIが生成するスクリプトはスライドのテキストに近い。実際の発表では「スライドに書いてないことを話す」局面が多い。最終的な口頭原稿は自分で分ける
- 最新ガイドライン・学会規定: 発表規定や推奨される発表構造は学会ごとに違う。AIの出す構成案はあくまで一般型で、各学会の演題規定を自分で確認する
横展開
このフローは学会発表だけでなく、院内勉強会のレジュメ・教育講演の資料・研修医向けの症例提示など、「伝える構造を考える作業」が含まれるものに全部使える。内容の正確性は自分が担保し、構成の素材をAIに任せる、この分担が一番効率がいい。