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答えを聞く前に考える(Learning Mode)
レッスン 7 / 10|17分で読めます

答えを聞く前に考える(Learning Mode)

AIに答えもらって貼る、を繰り返すと自分には何も残らない。あえて答えを教えないモード、ある。

このレッスンで終わる頃には

  • Claudeを「答え製造機」から「考えさせられる相手」に切り替えられる
  • 試験勉強、資料読解、コード理解で記憶の定着が上がる使い方ができる
  • 実務時とのモード使い分けが身につく

このレッスンで作るもの


AIに頼るほど、頭に残らない問題

ここまで、Claudeに「作って」「直して」と頼んで、返事をもらってきた。便利。

でも、正直なところ、自分の頭で考えた感ありますか?

AIから答えもらって貼る。動く。次また聞く。また動く。

この繰り返しだと、自分に残るものが少ない。

新人に完成した資料だけ渡しても、なぜその形にしたかを理解していないと応用が効かないのと同じ。自分の中にパターンが溜まらない。

そこで使えるのがLearning Mode。答えを教えずに、質問で返してくるモード。

Normalモード(答え直送)とLearningモード(TODO付きで考えさせる)の比較図
Normalは「答え自販機」、Learningは「ソクラテス式の家庭教師」

2種類ある

まずClaude Codeの方から。


/output-styles で切り替える

Claude Codeのターミナルで:

Claude Code
$/output-styles
選択肢:

[1] Normal - 普通モード(答えをそのまま返す)

[2] Explanatory - 説明モード(なぜそう書くかを解説)

[3] Learning - 学習モード(TODOで自分に書かせる)

→ 選択肢が出る。注目は2つ。

Explanatory(説明モード)

コードを書きながら、なぜその書き方なのかを逐一説明してくれる。「ここでuseState使うのは、コンポーネントの状態管理のため」みたいに。

初心者がコードの意味を追いかける時に向く。

Learning(学習モード)

コードの一部を TODO コメントにして、自分で書かせるモード。

「ここはあなたが書いて。ヒント:配列のfilterメソッドで絞り込みできるよ」と導いてくれる。

手を動かして覚えたい時に使う。


体験: 同じ質問を2つのモードで比べる

試しに同じ質問を投げてみる。

質問: 「社員リストから勤続年数5年未満の人を絞り込むスクリプト作って」

Normalモード

完成したコードがそのまま返ってくる。コピペして終わり。

Learningモード

const fs = require("fs");
const employees = JSON.parse(fs.readFileSync("employees.json", "utf-8"));

// TODO: employeesから tenure < 5 の人を抽出してください
// ヒント: 配列の filter メソッド
// const juniorStaff = employees.filter(...)

// TODO: 抽出した名前と勤続年数を表示してください
// ヒント: forEach か for...of
TODO付きの骨組みを読み、自分でfilterとforEachを埋めて実行する実ターミナル画面です。
社員リストから勤続年数5年未満の人を抽出するTODO付きJavaScriptファイルをターミナルで表示している実画面
Learning Modeの価値は、この空白です。全部を貼るのではなく、核心だけ自分で考える形にします。

骨組みは作ってくれるけど、核心は自分で書く。考えて、試して、動かす。この過程が記憶に残る。

視点

「自分で考えた」は定着する

認知科学の研究で、自分で考えて導き出した知識は、受け身で教わった知識より定着することが分かってる(generation effect)。Learning Modeはこの原理をコーディング学習に応用したもの。

SourceJOURNAL / PAPER
The Generation Effect(Slamecka & Graf, 1978)

自分で生成した情報は受け身で学んだ情報より記憶に定着するという古典的研究。Learning Modeの理論的背景。

論文APA PsycNet
psycnet.apa.org/record/1979-09435-001

学び全般でも使いたい3場面

Learning Modeはコードだけじゃなく、学習全般でも強力。

場面1: 資格試験・検定の勉強

Claude.aiのLearning Modeをオンにして:

Claude.ai (Learning Mode)
$簿記の5要素を教えて

簿記の要素は5つあります。資産はその1つ。残り4つのうち、貸借対照表に出てくるものはいくつあると思いますか?まずそこから考えてみましょう。

→ 自分で思い出す。「えーと、負債と…純資産と…」

この思い出すプロセスが記憶を強化する。読むだけじゃ起きない脳の動き。

場面2: レポートの批判的読解

要約(エグゼクティブサマリー)を貼って「弱点を教えて」の代わりに、Learning Modeでは:

「この調査設計を見て、結果を歪めていそうな要因は何?」

と返ってくる。

自分でバイアスや限界を考える訓練。レポートを作る側に回った時に直接効く。

場面3: コードの理解

Claudeに自分のコードを見せて「この関数は何してる?」と聞くと、Learningでは:

「この関数の引数のemployeesは配列です。返り値は何型になると思いますか?」

コードを読む力は、書く力の土台。ここを鍛えると応用が効く。


もう一つの質問返し: 自分をインタビューさせる

Learning Modeは「聞かれて自分で考える」体験でした。この発想は、機能を作る前の仕様固めにも使えます。

新しい機能を作りたいとき、いきなり実装をお願いするのではなく、AskUserQuestionツールを使って自分自身をインタビューさせる、という使い方が公式ドキュメントで紹介されています。

VoicesDOCUMENTATION

I want to build [brief description]. Interview me in detail using the AskUserQuestion tool. Ask about technical implementation, UI/UX, edge cases, concerns, and tradeoffs. Don't ask obvious questions, dig into the hard parts I might not have considered. Keep interviewing until we've covered everything, then write a complete spec to SPEC.md.

筆者訳

[簡単な説明]を作りたいです。AskUserQuestionツールを使って、私に詳しくインタビューしてください。技術的な実装、UI/UX、エッジケース、懸念点、トレードオフについて聞いてください。当たり前の質問はせず、私が考えていなかったかもしれない難しい部分を掘り下げてください。すべてカバーし終わるまでインタビューを続け、そのあとSPEC.mdに完全な仕様書を書いてください。

Claude Code公式ドキュメントBest practicescode.claude.com/docscode.claude.com/docs/en/best-practices

このやり取りのあと、公式ドキュメントはもう一段の運用を勧めています。仕様書ができたら、そのまま同じセッションで実装させず、新しいセッションを開いて実行させる。インタビューの過程で積み上がった細かい迷いや検討の途中経過を持ち込まず、仕様書だけを頼りに動かせるからです。

良い仕様書の条件も明快です。関係するファイルとインターフェースを名指しし、対象外の範囲を書き、最後に機能が動くことを証明する検証手順で締める。この形になっていれば、新しいセッションでも迷いません。

Learning Modeで鍛えた「聞かれて考える」感覚は、ここでも役に立ちます。今度は質問される側ではなく、質問させる側に回るだけです。


モードの使い分け

補足

いつでも切り替えOK

/output-styles はセッション中いつでも切り替えられる。Learningで詰まったらExplanatoryでヒント、理解できたらLearningに戻る。この往復が一番効率いい。


Claude.ai 側の Learning Mode

Webブラウザやアプリ側でも使える。

→ 以降、すべてのチャットがソクラテス式に。

資格試験の勉強、英語資料の読解、統計の理解。答えを聞く前に自分で考えるクセがつきます。

SourceARTICLE
Anthropic:Introducing Learning Mode

Anthropic公式のLearning Mode紹介記事。設計思想と教育機関での導入事例。

記事anthropic.com
anthropic.com/news/learning-mode

注意

実務時はオフ

Learning Modeは学習のための機能。業務中に急いで正確な数字を確認したい、みたいな場面ではOFFに。

学ぶ時間と実務の時間を分ける、この使い分けが大事。


海外の大学ではもう標準

Claude for Education という教育機関向けプランがあって、Northeastern大学、LSE、Columbia大学などが正式導入してる。

共通するのは「AIに答えをもらう」→「AIに考えさせられる」への転換。

実務教育も同じ方向に向かってる。資格試験でも社内研修でも、丸暗記より応用力が問われる。Learning Modeで鍛えた「自分で考える筋肉」は、試験にも実務にも効く。

Claude for Education ページのスクリーンショット
Claude for Education のヒーロー。「Navigating AI in education together」のトーン
SourceARTICLE
Claude for Education

教育機関向けプランの紹介。Learning Modeを中核に据えた使い方が解説されている。

Webclaude.com
claude.com/solutions/education

「正しい問いを立てる力」

入門編の最後に「全部を知る必要はない、正しく質問する方法を知っていればいい」と書きました。

Learning Modeは、その「正しく質問する力」を育てる道具でもある。Claudeが返してくる問いのパターンを見てると、自分でも質問の立て方が上手くなる。

「この関数がエラーを出す」じゃなくて、「この関数にnullが渡されたときにTypeErrorが出る。入力のバリデーションを追加すべきか、呼び出し元で保証すべきか」と聞けるようになる。

これ、仕事相手に問いを立てる力と地続き。Claudeとの練習は、現場にも繋がってる気がします。


まとめ

  • AIから答えもらうだけだと自分に残らない
  • Learning Mode = 答えを教えず、質問で返してくる
  • Claude Code: /output-styles でLearningに切替
  • Claude.ai: Settings でLearning Modeトグル
  • 新しいことは Explanatory → 定着させたいことは Learningの往復
  • 実務中はOFFに(急ぎの時は答えをもらう)

次はDispatch。スマホから自宅PCのClaudeを動かす、移動中も止まらない仕組み。


明日のアクション

Claude Codeで /output-styles を実行して、Learningモードに切り替えてみてください。

その状態で、今勉強したいテーマ(資格試験の分野、プログラミング概念、なんでも)を1つ質問してみる。

「答えをもらう」じゃなくて「自分で考えて答えに辿り着く」体験。詰まったらExplanatoryに切り替えてヒント、また戻る。この往復が効きます。