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AIでスライドを作る

発表前夜にスライドが完成しない問題を、AIで構造的に解決する。台本→構成→図解→デザインの新しい流れ。

  • レッスン 10 / 13
  • 10分

教育目的の教材です。生成AIの出力を診断・治療の判断にそのまま使わないでください。最終判断は医師が行います。

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • スライド作成の遅れは、デザインから着手する順番の誤りが原因であると根拠を挙げて説明できる
  • 台本の下書きから1スライド1メッセージへの変換まで、4段階の順序を発表準備に適用できる

学びのインプットを整えたら、次はアウトプット。

はじめに:発表前夜のスライド地獄から抜け出す

台本、構成、図解、デザインの順でスライドができる図。
台本から始めて、最後にデザインを加える。この順序を守ると、デザインで迷う時間を減らせます。

学会発表、症例検討会、院内勉強会。若手医師の時間泥棒といえばスライド作成だろう。前夜に着手して朝まで終わらない。あの地獄の原因は作業量ではない。順番の間違いだ。

デザインから入ると、迷子になりやすい。フォントを選び、色に悩み、配置を調整しているうちに夜が明ける。AIの出番は、デザインの前段階、つまり内容の構造化を一気に片付けるところにある [2]。台本、構成、図解、デザイン。この順番で進める。


ステップ1:台本から始める

意外かもしれないが、スライドを開く前に台本を書く。しゃべる中身が決まっていれば、スライドはその補強装置にすぎない。何を伝えたいか分からないままPowerPointを開くから迷子になる。

台本の下書きはAIに投げればいい。症例を扱う発表なら、患者を特定できる情報(氏名・日付・施設名、画像の中の文字など)は、渡す前に外しておく。

私は研修医2年目です。来週、院内勉強会で15分の発表をします。
テーマは「川崎病の急性期治療の最新動向」です。
聴衆は他科の研修医と看護師で、医学的知識のレベルはまちまちです。
この条件で、15分の発表台本(約4000字)を書いてください。

【含めてほしい要素】
- 導入のフック(聴衆の興味を掴む話)
- 川崎病の基本(30秒で済むレベル)
- 急性期治療の標準(IVIG+アスピリン)
- 最新トピック(IVIG不応例への第二選択)
- 自分が日々の診療で感じる疑問
- 締めの一言

返ってくる台本はそのまま使えるレベルではない。だが発表の骨格が見える。ゼロから書くより、たたき台を直すほうが手早く進む(筆者の経験)。

ChatGPTの日本語トップ画面。中央に質問欄がある。
スライドを開く前に、この欄へ台本の条件を貼る(2026年7月撮影)。

ステップ2:台本をスライド構成に変換する

台本が固まったら、そのままAIに渡す。

同じチャットに続けて送る
先ほどの台本をもとに、15分のプレゼン用スライドの構成を作ってください。
1スライド1メッセージの原則で、合計10〜12枚に収まるように。
各スライドについて、
- タイトル
- 1メッセージ
- 必要な図表
- 話す内容(30〜60秒分)
を表形式で出してください。

スライド全体のフローが表で返ってくる。導入が長い、山場が弱い、そういった構造の問題がこの段階で見える。対話で調整すればいい。デザインに触るのは、構造が固まった後だ。


ステップ3:図解をAIで生成する

分岐、比較、時間の流れ、要素の関係という4種類の図解を製図台に並べた図。
医療スライドの図解はこの4種類で多くをカバーでき、それぞれAIに生成を依頼できます。

ここは図で見せたい、と感じた箇所はAIに任せてしまう。言葉だけより、言葉に合った図を添えたほうが学びやすいことは、学習の研究で繰り返し示されている [1]。

医療スライドで使う図解は、だいたい以下の4種類に収まる。

  • フローチャート:診断・治療の流れ
  • 比較表:薬剤の用法用量・副作用の比較
  • タイムライン:疾患の経過、治療スケジュール
  • 概念図:病態生理を矢印と箱で示す

ChatGPTの画像生成(ChatGPT Images)[3] や、Geminiの画像生成(Nano Banana)[4] で作れる。文字の崩れや医学的な誤りが混じることがあるので、出力は必ず目で確かめる。完璧な図を目指す必要はない。中身を確かめたうえでなら、手早く作った図でも、文字だけのスライドより伝わりやすいことが多い(筆者の経験)。

Geminiのトップ画面。
図解を手早く出すなら、ここか ChatGPT の画像生成(2026年7月撮影)。

比較

図解にAIを使うときの2つのモード

モード1:ゼロから生成。医学的な概念を図にしてもらう(例:気管支喘息の病態を、気道狭窄・粘液・炎症の3要素で示すフローチャート)

モード2:ラフの清書。手書きのスケッチを写真で渡して、きれいに作り直してもらう

→ モード2のほうが意図通りに仕上がる。構図は自分で決め、清書だけAIに任せる。この分業が、いちばん手早く仕上がる(筆者の経験)。


ステップ4:デザインは最後、テンプレートで済ませる

同じ内容を、学会・院内勉強会・市民向けで見せ分ける図。
場面ごとに適切なスタイルを1つ選び、テンプレートとして使い回すことで、デザインに費やす時間を最小化できます。

デザインに凝る時間は、台本と構成に回したほうが報われる。

デザインは構造の質を上回らない。

構造の質を超えることはない。気に入ったテンプレートを1つ持っておけば、あとは流し込むだけでいい。

学会発表は白黒とフォント1種類、院内勉強会は少し色を使い、市民向け講演は写真やイラストを増やす。

PowerPoint、Keynote、Google Slidesどれにもテンプレートはある。一度決めたら使い回す。毎回選び直すのは時間の浪費だ。

スライドそのものをAIに作らせる道具も増えた。Gemini Notebook(旧 NotebookLM)は取り込んだ資料からスライドを作り、PPTXで書き出せる [5]。GensparkにもAIスライドの機能がある。使うときも、構成(ステップ2)を自分で確かめてから渡し、出てきたファイルは数字と用語を見直してから使う。


参考文献

  1. Mayer RE. Multimedia Learning. 2nd ed. Cambridge University Press; 2009.(マルチメディア学習の研究をまとめた教科書。言葉だけより、言葉に図を添えたほうが学びやすいこと〔マルチメディアの原則〕などを、実験にもとづいて示している)
  2. Doumont JL. Trees, Maps, and Theorems: Effective Communication for Rational Minds. Principiae; 2009.(科学者や技術者に向けて、伝わる文書・発表・図の作り方を説いた本。本章の「中身の構造が先、デザインは後」という順序は、この本の考え方を参考にした)
  3. OpenAI. Introducing ChatGPT Images 2.5. 2026年9月8日. https://openai.com/index/introducing-chatgpt-images-2-5/
  4. Google. Nano Banana 2: Combining Pro capabilities with lightning-fast speed. 2026年2月26日(Geminiアプリの標準の画像生成が Nano Banana 2 になった。Nano Banana Pro は有料プランで選べる). https://blog.google/innovation-and-ai/technology/ai/nano-banana-2/
  5. Google Workspace Updates. New ways to customize and interact with your content in NotebookLM. 2026年3月20日(生成したスライド資料を PDF に加えて PPTX で書き出せるようになった). https://workspaceupdates.googleblog.com/2026/03/new-ways-to-customize-and-interact-with-your-content-in-NotebookLM.html

セルフチェック

1. AIを使ったスライド作成の最適な順序として正しいものはどれか?

2. スライドのデザインに対する正しい考え方はどれか?

明日のアクション

次回の発表予定が決まっていたら、まず台本だけAIに書かせてみてほしい。スライドに着手する前に台本ができている、というだけで気持ちが軽くなる。発表の予定がなければ、過去にやった発表のテーマで練習してみるのもいい。

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