メインコンテンツへスキップ
知っておきたい7つの言葉(前半:LLM〜IDE)
レッスン 3 / 15|16分で読めます

知っておきたい7つの言葉(前半:LLM〜IDE)

LLM・コーディングエージェント・IDEを、ポケモンの旅に例えて整理。御三家とエースと拠点の話。

第2回で、ChatGPTを使って自分の手で動くページを作りました。 あの体験の裏では、いくつかの言葉が走り回っています。

今日と次回の2回で、その7つの言葉を順番に整理します。 全部、ポケモンの旅に例えながら。

7つはこれです。

LLM、コーディングエージェント、IDE、Git、データベース、セキュリティ、デプロイ。

私は最初、この7つでつまずきました。 本を読んでも、頭に入らない。 聞いても、明日には忘れている。

でも、ポケモンの旅に例えた瞬間、全部つながりました。

前半の今回は、最初の3つ。 LLM、コーディングエージェント、IDE。 後半は次回で、Git、DB、セキュリティ、デプロイを扱います。

全体像、ひとことで

ポケモンの世界に置き直すと、こうなります。

  • 最初のパートナー(御三家)→ LLM
  • 旅のエース → コーディングエージェント
  • 出発の拠点(自宅・ポケモンセンター)→ IDE
  • セーブポイントとポケモンHOME → バージョン管理(Git/GitHub)
  • ボックス → データベース
  • トレーナーID・パスワード → セキュリティ
  • レーティングバトル参戦 → デプロイ
ポケモン旅マップとVibe Coding 7概念のレイヤー対応図。御三家・エース・拠点・セーブ/HOME・ボックス・トレーナーID・レーティング戦が、LLM・エージェント・IDE・Git・DB・セキュリティ・デプロイに対応
本連載を通じて何度も戻ってくる地図。覚えるべきことが、半分になります。

これだけ覚えていれば、AIに何を頼めばいいかが見えてきます。

今日は、上から3つ。

1. LLM | 最初の御三家を選ぶ

LLMは、Large Language Modelの略です。 日本語にすると「大規模言語モデル」。

ChatGPT、Claude、Geminiの「中身」がLLMです。 これらの名前は「サービスの名前」で、その中で動いている頭脳の部分がLLM、と思ってください。

ポケモンに例えると、ゲーム開始直後の「最初のパートナーを選ぶ」場面です。

  • ChatGPT は、攻めが強くて応用範囲が広い炎タイプのような存在
  • Claude は、丁寧で長文・コーディングに強い水タイプのような存在
  • Gemini は、Googleと連携が効いてサポート寄りの草タイプのような存在
3匹の御三家風キャラクター(炎の竜・水の亀・葉の植物)の前にトレーナーが立ち、それぞれにChatGPT・Claude・Geminiのラベルがついている
どれを選んでも、いまは「賢い相棒」が無料で手元にある時代です。

最初の選択は、そんなに気にしすぎなくて大丈夫。 途中で別のサービスに乗り換える人も多いし、複数を併用するのも普通です。

私たちがVibe Codingでやり取りする相手は、ぜんぶこのLLMです。

選び方の目安だけ、ここで伝えます。

  • 文章中心の作業 → ChatGPT、Claude、Geminiのどれでも
  • コーディング中心 → Claude(特にClaude Code)が現時点で評判が良いです
  • スマホで普段から使いたい → 無料プランから始めて構いません
ChatGPT・Claude・Geminiの3社を横並びカードで比較。各カードに強み・無料プラン・スマホアプリ・コーディング適性の項目
迷ったら、ふだんスマホで一番触りそうなものから。

賢い相棒が無料で手元にある。 これが、いま起きていることです。

LLMの仕組みの超ざっくり図。「今日は天気が」という入力に対して、次の単語の確率分布が並び、最も確率の高い「良い」が選ばれる流れ
LLMは「次の単語を確率で予測している」だけ。中身を理解しなくても、使い方は十分掴めます。

2. コーディングエージェント | 旅のエース

LLMは「相棒」でしたが、答えを返すだけが基本。 ポケモンで言えば、まだ手持ちにいるだけの状態です。

これに対して、コーディングエージェントは、自分で前線に出て手を動かしてくれます。 ファイルを作る、コードを書く、プログラムを動かす、エラーが出たら直す。 ジムバッジを取りに行く、頼れるエースです。

LLMとコーディングエージェントの対比図。左:LLMは図鑑の中(質問に答えるだけ)/右:エージェントは前線で実際にバトル(ファイル操作・実行)
LLMは「答える側」、エージェントは「動く側」。役割が一段違います。

代表的なものは、こんな顔ぶれです。

  • Claude Code:Anthropic社(クロードを作っている会社)が出している
  • Codex:OpenAI(ChatGPTを作っている会社)が出している
  • Cursor:専用のエディタにAIがくっついた、独立したサービス
  • GitHub Copilot:マイクロソフト傘下のGitHubが出している
コーディングエージェント4種を「住む場所(PC内 vs クラウド)」と「統合度(独立 vs IDE統合)」の2軸マトリクスで位置づけた図
4種を2軸で見ると、それぞれの立ち位置が見えてきます。

Vibe Codingで主に使うのは、こちらの「実際にバトルする側」のほうです。

この連載ではClaude Codeを軸に進めます。 インストール手順は第8回で扱います。

Cursor(AI統合エディタ)の画面イラスト。左サイドバーにファイル一覧、中央にコードエディタ、右サイドバーにAIチャットパネル
Cursor は IDE の中に AI チャットがある統合型。コードと相棒が、同じ画面で並走します。

3. IDE | マサラタウンの自宅

IDEは、Integrated Development Environmentの略。 日本語にすると「統合開発環境」。

要するに、コードを書いたり編集したりする「拠点」です。

ポケモンで言えば、マサラタウンの自宅、もしくは旅先のポケモンセンター。 作業前にひと息つけて、そこから動き始める場所です。

世界で一番使われているのは、Visual Studio Code(VSCode/ヴイエスコード)。 無料で、Windowsでも、Macでも動きます。 マイクロソフトが出しています。

code.visualstudio.com のダウンロードページ。Mac・Windows・Linux の3つのダウンロードボタンが並ぶ
無料で、どのOSでも動きます。すぐ手元に置けます。

最近は、IDEとAIエージェントがどんどんくっついてきています。 VSCodeの中にClaude Codeを呼び出して、その場で会話しながら作る、というのが一般的になってきました。

エディタの進化史を4段階で描いた横長タイムライン。1990年代メモ帳→2000年代専用エディタ→2010年代IDE→2020年代AI統合IDE
30年で「書く道具」から「考える相棒」へ。いまは AI 統合 IDE の時代です。

最初はとっつきにくく見えますが、心配いりません。 拠点自体に難しいことはありません。

今日のまとめ

LLM・コーディングエージェント・IDEの3層スタック図。LLM(頭脳)が上、コーディングエージェント(実行者)が中央、IDE(拠点)が下
頭脳・実行者・拠点。3つが組み合わさって、Vibe Coding の作業環境になります。

3行で振り返ります。

  • LLM、エージェント、IDEは「相棒」「実行者」「拠点」の3点セット
  • 御三家を選ぶ感覚で、まずはLLMサービスを1つ持つ
  • ポケモンに例えると、覚えるべきことが半分になる

次回予告

第4回は、後半の4つです。 Git/GitHub、データベース、セキュリティ、デプロイ。 セーブポイント、ボックス、トレーナーID、レーティング戦。

アプリを保存する、育てる、守る、世に出す。 この4つを、まとめて整理します。


専門用語は、覚えるものではなく、使ってみる中で勝手に馴染むもの。 私はそう感じています。

連載の更新は、メルマガ「おかもんだより」でもお知らせします。 よかったら登録してお待ちください。


演習:30分の宿題

「7つの言葉」のうち、今日は前半3つ(LLM・エージェント・IDE)を扱いました。 30分で、最低限の感覚を掴む宿題を2つだけ。

宿題1:3つのLLMに同じ質問を投げる(15分)

ChatGPT・Claude・Gemini の3つに、まったく同じ質問を投げて、返ってくる文体の違いを体感してください。

おすすめの質問例:

あなたの強みを3つ、一文ずつで挙げてください。

返答を3つ並べて読み比べると、それぞれの「キャラ」が見えてきます。 無料プランで全部試せます。

宿題2:VSCodeをインストールしてみる(15分)

code.visualstudio.com にアクセスして、自分のOSに合わせたインストーラーをダウンロード。 インストール後、起動して、サイドバー・エディタ・ターミナルの3要素がどこにあるか触ってみてください。

中身に何かを書く必要はありません。 「拠点を、いま用意した」という事実だけ持ち帰れば十分です。


医療職別 実例ギャラリー:3人の使い分け

私の周りの医療者が、実際にどのLLM・どの道具を使っているか、3人の例。

例1:小児科医・賢(私)の場合

  • メイン LLM:Claude(コードと長文に強いのが、医療執筆と相性いい)
  • メインエージェント:Claude Code
  • メイン IDE:Cursor

外来の合間に minaton の更新を入れる、論文の下書きを書く、ニュース記事の解説を書く、ぜんぶこの組み合わせ。 有料プラン(Claude Max $100/月〜、Cursor Pro $20/月。2026年6月時点)を支払っています。Claude Code を毎日使うなら、Pro($20/月)では量の上限にすぐ当たるので Max が現実的です。

例2:救急医・Aさんの場合

  • メイン LLM:ChatGPT(普段の質問はぜんぶこれ)
  • エージェント:使っていない(ChatGPTのコード生成だけで足りる)
  • IDE:使っていない(HTMLは TextEdit で開く)

ChatGPT 1本で、当直シフト調整・救急トリアージ早見・薬量計算ツールの3本を運用中。 「最小構成で続けるのが、長く使える」 タイプ。

例3:薬剤師・Bさんの場合

  • メイン LLM:Gemini(Googleドライブ・スプレッドシートとの連携重視)
  • エージェント:GitHub Copilot(VSCode に組み込まれている)
  • メイン IDE:VSCode

服薬指導の記録テンプレを Spreadsheet で管理しているので、Gemini との相性で選択。 病院の業務がGoogleスタックなら、Geminiは強い選択肢。

3人とも、最初は1つから始めて、必要になった順に道具を増やしています。 全部一気に揃える必要は、まったくありません。


もっと深く:LLM 3社の文体の違い

実際に同じ質問を投げると、こういう違いが出ます。

質問:「胸痛で受診した患者の鑑別を、簡潔に3つ挙げてください」

ChatGPT(標準モデル)の文体

  1. 急性冠症候群(ACS):最も重要な除外診断。心電図と高感度トロポニンで初期評価を。
  2. 大動脈解離:背部痛を伴い、両上肢の血圧差や拡大した縦隔陰影を確認。
  3. 肺塞栓症:D-dimer、Wells score、必要に応じて造影CTで評価。

(簡潔・実務的・項目式)

Claude(Sonnet 4.6)の文体

胸痛の鑑別は、致死的疾患を見逃さないことが最優先です。3つに絞るなら:

  1. 急性冠症候群:全症例で最初に除外する診断。心電図とトロポニンを早期に。
  2. 大動脈解離:「裂けるような痛み」「背部への放散」が典型像。両側血圧差をチェック。
  3. 肺塞栓症:リスク因子(術後・長期臥床・経口避妊薬)と組み合わせて評価。

(文脈と臨床判断を一緒に説明する傾向)

Gemini の文体

胸痛で受診した患者の鑑別として、特に致死的な疾患を3つ挙げます:

  • 急性冠症候群(不安定狭心症・心筋梗塞)
  • 急性大動脈解離
  • 肺血栓塞栓症

(余計な装飾を入れず、要求にきっちり応える)

どれも「正解」を返してきますが、ChatGPTは攻め・Claudeは丁寧・Geminiは中庸、というのが感覚的に分かるはずです。

最初は1つから始めて、自分の文体と相性のいいLLMを見つけるのが、長く続けるコツです。


動画で見る


参考・出典

  • 安野貴博「バイブコーディング超入門講座 第2回」(YouTubeチャンネル「安野貴博の自由研究」、2026年4月)
  • paiza株式会社「バイブコーディング入門 Claude Code編」 https://paiza.jp/works/vibe-coding-claude-code/trial