第3回では、7つの言葉のうち最初の3つを扱いました。
LLM(賢い相棒)、コーディングエージェント(旅のエース)、IDE(マサラタウンの自宅)。 ここまでで「アイデアを言葉にする」「動くものに変える」「作業する場所」が揃った状態です。
今日は残りの4つ。 作ったものを「保存する」「育てる」「守る」「世に出す」の4工程に対応します。
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4. バージョン管理(Git / GitHub) | セーブポイントとポケモンHOME
アプリを作っていると、いろいろ変えたくなります。 そのうち「あれ、昨日の状態に戻したい」と必ず思います。
このときに使うのが、Git(ギット)です。
変更の履歴を、セーブポイントのように残してくれます。 ポケモンで「ぼうけんのきろく」をつけるあの感覚。 詰んだら、好きなセーブに戻ればいい。

そして、Gitと一緒に必ず出てくるのが、GitHub(ギットハブ)。 こちらは、自分のセーブをネット上のクラウドに預けておける場所、ポケモンHOMEのような存在です。

役割は、3つあります。
1. パソコンが壊れてもデータが残る
自分のセーブデータをHOMEに預けておけば、別のパソコンからでも引き出せます。
2. 家族や仲間と進捗を合わせられる
ポケモンの世界で、自分は炎タイプを育てて、兄弟は水タイプを育てて、それぞれ進捗が違う状態を想像してください。
「あ、その手持ち面白いね、こっちにも入れてみたい」 そんなとき、HOMEを介して「ここだけ合わせていい?」と相談しながら統合できます。
これが、Vibe Codingで言う「マージ」です。
3. push と pull で、手元とHOMEを同期する
- push:自分の手元の進捗を、HOMEに預ける
- pull:HOMEから、最新の進捗を手元に引き出す

家族や仲間と作業を分担するときは、この2つを行ったり来たりするだけです。
最初の小さなアプリでは、自分ひとりだけが触る前提でも、GitHubは使えます。 万が一に備えた「クラウド保管庫」として、最初に作っておくと安心です。
これも、ほとんどAIに頼めます。
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5. データベース | ボックス
たくさんの情報を、決まった形で置いておく場所のことです。
ポケモンで例えると、ボックスです。 6体しか連れて歩けないけれど、ボックスには何十体も整理した状態で保管できます。
エクセルの表を、もっと強力にしたもの。 そう考えてもらえれば、ほぼ正解です。
例えば、お店の予約アプリを作るなら、 「日付」「時間」「お客さんの名前」「人数」をまとめて置いておく場所が必要です。 これがデータベースの役割です。

代表的なものに、こんな種類があります。
- SQLite:軽量で個人開発向き
- Supabase:設定が簡単で、最近のVibe Codingでよく使われる
- Firebase:Googleが提供している
- PostgreSQL:本格派

最初の小さなアプリでは、データベースなしで始めて構いません。 必要になったら、AIに「この情報を保存できるようにして」と頼めば、適切なものを選んでくれます。
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6. セキュリティ | トレーナーIDとパスワード
これは、本当に大事な話です。
ポケモンの世界でも、自分のセーブデータが他人に勝手に書き換えられないように、トレーナーIDやアカウントのパスワードで守られています。
Vibe Codingでも同じです。
アプリを作っていくと、いろいろな「鍵」が出てきます。 APIキー、パスワード、個人情報、ログインの仕組み。
ここで「APIキー」というのは、外部のサービス(例えば天気情報や地図)を、自分のアプリから使わせてもらうための合鍵のようなもの。 人によって違う鍵が発行されて、これがあれば自分のアプリから呼び出せる、という仕組みです。
これらを、コードの中にそのまま書いてしまうと、ネットに流出します。 ID・パスワードを画面に表示したまま配信してしまうのと、同じ事故です。

正しいやり方は、決まっています。
- 鍵は別ファイル(環境変数といいます)に書く
- そのファイルはGitに上げない
- 誰かに渡すときは、別の手段で渡す
「環境変数」というのは、コードの外側にこっそり置いておくメモみたいなもの。 コードからは「鍵が必要なら、あのメモを見て」と参照する形になり、コード自体には鍵が書かれません。

これも、AIに「環境変数で安全に管理して」と一言伝えれば、設定してくれます。 ただし、伝え忘れるとそのまま書かれることがあります。
「鍵は別の場所」を、口癖にしてください。
第1回でも書いた個人情報の話も、ここに入ります。 氏名、住所、電話番号、生年月日。 AIに渡す前に、ひと呼吸置きます。
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7. デプロイ | レーティングバトル参戦
作ったアプリを、自分のパソコンの中だけで動かしているうちは、誰にも見せられません。
これを、ネット上に置いて、誰でもアクセスできるようにすること。 これが、デプロイです。
ポケモンで例えると、自分が育てたパーティを、レーティングバトル(オンラインの公式対戦)に登録する瞬間。 これまで自分の中だけで完結していたパーティが、世界中の誰かと出会える場に出ていきます。

代表的なサービスは、こんなところです。
- Vercel:個人開発で人気、無料枠が広い
- Netlify:Vercelの競合
- GitHub Pages:シンプルなサイト向け
- Cloudflare Pages:高速で安定

どれも、最初は無料で使えます。
第13回・第14回で、実際にデプロイまで体験します。 今は「最後はネットに出せる」とだけ覚えておけば十分です。
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全体を、もう一度
7つを、ポケモンの旅に重ねて並べ直します。
- 御三家を選ぶ(LLM)
- 旅のエースに任せる(コーディングエージェント)
- 自宅・ポケセンに戻る(IDE)
- セーブと、HOMEへの預け入れ(Git/GitHub)
- ボックスに整理する(データベース)
- トレーナーIDを守る(セキュリティ)
- レーティングバトルに登録する(デプロイ)

7つ全部、一度に覚える必要はありません。 作りながら、必要になったタイミングで戻ってくる、で大丈夫です。
この連載でも、各回で必要になったものから順番に触っていきます。
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今日のまとめ
3行で振り返ります。
- 7つの後半は「保存する・育てる・守る・世に出す」の流れ
- 全部覚えなくていい。AIに頼める部分が大半
- 「鍵は別の場所」「個人情報はAIに渡さない」だけは、口癖にする
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次回予告
第5回からは、いよいよ手を動かす番です。
ChatGPTひとつあれば、環境構築なしでアプリは作れます。 第2回で軽く触れた、あの「動くものが手元に来る」感覚を、もう少し腰を据えて再現します。
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専門用語は、覚えるものではなく、使ってみる中で勝手に馴染むもの。 私はそう感じています。
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演習:30分の宿題
第3回・第4回で、7つの言葉が一通り揃いました。 最後に、最低限の感覚を掴む宿題を3つ。
宿題1:GitHub のアカウントを作る(10分)
github.com にアクセスして、メールアドレスでサインアップ。 ユーザー名は、後で公開URLに使われることがあるので、シンプルなものを選びます。
中身は、何も置かなくてOK。「アカウントだけ用意した」が今日のゴール。
宿題2:Vercel のトップページを眺める(5分)
vercel.com を開いて、無料プランの仕様を眺めるだけ。 何が無料で使えるのか、何が有料になるのか、感覚を掴んでおくと第14回が楽になります。
宿題3:自分の使っている「鍵」を1つ書き出す(15分)
外来や薬局で、ID・パスワード・APIキーのような「鍵」をいくつ管理しているか、紙に書き出してみてください。
- 電子カルテのID
- 薬局システムのパスワード
- Google Drive の認証
- Slack の招待リンク
- 病院のWi-Fiパスワード
ここで挙げたものは、AIには絶対に渡さない、と決めておく。 セキュリティ意識の入口は、自分が何を守っているかを言語化することです。
医療職別 実例ギャラリー:「鍵を守る」が大事だった例
例1:内科医・APIキー漏洩で7万円請求された話(架空・教訓のため再構成)
OpenAIのAPIキーを GitHub のpublicリポジトリに上げてしまい、24時間で$500(約7万円)請求された事例。
キーを直書きせず、.env に分離していれば、まったく起きなかった事故。
第4回の「鍵は別の場所」が、唯一の予防策。
例2:看護師・電子カルテ ID をAIに貼ってしまった話(架空)
ChatGPT に申し送りを清書してもらおうとして、患者の生年月日・カルテ番号ごとコピペ。 個人情報保護法違反のリスクが顕在化。
ダミーデータか、構造だけ共有が原則。
例3:医療事務・Vercel無料枠を使い切った話
問い合わせ定型回答ツールが想定以上にアクセスを集めて、Vercel無料枠の月100GB帯域を超過。 以降は有料プラン(Pro、$20/月。2026年6月時点)に切り替え。
「無料」と「無制限」は別物。デプロイ前に、無料枠の上限を確認しておく。
もっと深く:環境変数管理の歴史
「鍵は別の場所」という発想は、最近のものではありません。
1990年代の Unix システムから、設定情報を環境変数として外出しする習慣はありました。 2010年代、Heroku というクラウドサービスが「Twelve-Factor App」という設計指針を提唱し、その3つ目が「設定は環境変数で」だったことから、世界中に広まりました。
今のVercel・Netlify・Cloudflare は、すべて Twelve-Factor の流れを汲んでいます。
GitHub に上げない .env ファイルと、デプロイ時に注入する環境変数。
この2点セットが、現代Webサービスの標準です。
「鍵は別の場所」は、30年以上の積み重ねでたどり着いた答えです。
動画で見る
- YouTube:paiza「バイブコーディング入門 第3〜4回」:GitHub・デプロイ実演
参考・出典
- 安野貴博「バイブコーディング超入門講座 第2回」(YouTubeチャンネル「安野貴博の自由研究」、2026年4月)
- paiza株式会社「バイブコーディング入門 Claude Code編」 https://paiza.jp/works/vibe-coding-claude-code/trial
- The Twelve-Factor App https://12factor.net
