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レッスン 2 / 8|9分で読めます

組織図を先に描く

AI組織を作る前に、人間が組織図を描く。梶谷のプランモード先行思想を医療組織設計に応用する。

第2回 組織図を先に描く

白い紙に手書きされたクリニックの組織図。院長を中心に秘書・リサーチ・記録・患者対応の4つのボックスが放射状に伸び、ティールの矢印でつながっている

このレッスンが終わる頃には、こうなります。

  • なぜ実装より先に組織図を描くのか、理由を言える
  • クリニック向けの基本組織図を、自分で書ける
  • 「役割」と「業務」の違いを理解している

いきなり動かしてはいけません。

これが、このレッスンで一番伝えたいことです。

Claude Codeに「うちのクリニックの業務を全部整理して」と打ち込む前に、自分で組織図を描く。 この順番が、後の精度を決めます。

なぜ先に描くのか

「0から100で一気に作ろうとすると失敗しやすい」

梶谷健人というAIエンジニアが言う言葉です。 プランモードという考え方で、彼はこれを実証しています。

Claude Codeにはプランモードがあります。 ファイルを作ったり編集したりせず、ただ計画を立てるだけのモード。 まずここで話し合ってから、実装に入る。

医師にとってこれは、「問診してから処方する」に相当します。

主訴を聞かずにいきなり薬を出す医師は、いません。 まず何が困っているかを聞く。 既往歴や服薬を確認する。 その上で、仮説を立てて、治療方針を決める。

AI組織の設計も、同じです。 いきなりCLAUDE.mdを書き始めてはいけない。 まず「何が困っていて、どんなスタッフが必要か」を自分の頭で整理する。

医療現場ではこう翻訳する

「先に組織図を描く=病棟の業務改善で最初にフロー図を書く作業」

看護部の業務改善で、よく使う手順があります。 現状の業務フローを、一度付箋や紙に書き出す。 誰が何をやっているかを可視化して、初めてボトルネックが見える。

AI組織の設計も、全く同じです。

紙でいい。 A4の真ん中に「院長」と書いて、周囲に必要なスタッフの役割を放射状に書く。 矢印で情報の流れを書く。

これが終わってから、Claude Codeを開く。

組織図の描き方:3つのステップ

ステップ1:「自分が今週何をやったか」を書き出す

前回の演習でやった業務リストを使います。 書き出していない場合は、今5分で作ってください。

診療以外でやっていること全部。 メール、書類確認、調べもの、スライド作業、スタッフへの指示、採用、設備の手配。

ステップ2:業務を役割に分類する

書き出した業務を、まとまりごとに束ねます。

たとえばこんな束になるはずです。

調べもの系

  • ガイドラインの最新版を確認する
  • 競合クリニックの情報を調べる
  • 薬の副作用情報を調べる
  • 新しい機器の評判を調べる

記録・整理系

  • 月次の診療実績をまとめる
  • 患者向けのお知らせ文を書く
  • スタッフへの連絡メモを作る
  • 学会発表用の症例をまとめる

準備・作業系

  • スライドを作る
  • 資料のフォーマットを整える
  • 契約書のドラフトを作る

管理系

  • 今日のタスクを整理する
  • スタッフからの相談を記録する
  • 締め切りの確認をする

この「束」が、そのままエージェントの役割になります。

ステップ3:役割に名前をつけて、組織図に配置する

束に名前をつけます。

調べもの系 → リサーチ担当 記録・整理系 → 記録担当 準備・作業系 → 制作担当 管理系 → 秘書

そして、院長(自分)を中心に、これらを紙に配置します。 矢印は「情報の流れ」を表します。 「院長がリサーチ担当に調査を依頼する」なら、院長→リサーチ担当。 「記録担当が月次レポートを院長に出す」なら、記録担当→院長。

役割と業務の違いを押さえる

ここを混同すると、後で詰まります。

役割:担当者が何者か 例:リサーチ担当

業務:具体的に何をするか 例:毎週月曜日に、院長から依頼されたトピックについて3本以上の文献またはウェブ情報をまとめ、要点を箇条書きで報告する

役割はラベルです。 業務は手順書です。

Claude Codeに役割だけ伝えても、動きません。 業務(手順書)を渡して、初めて動きます。

第3回でエージェントの役割設計をするとき、この区別が重要になります。

小さく始める

「うちは業務が多いから、組織図が複雑になる」と思った方。

最初は2〜3体で十分です。

  • 秘書(タスク管理・メモ整理)
  • リサーチ担当(調べもの全般)

この2体から始めて、使いながら増やす。 一気に10体作っても、管理が追いつかず、結局使わなくなります。

「ナレッジが溜まっていく」体感が生まれてから、次のエージェントを加える。 この育て方が、長続きします。

今日の作業:組織図を1枚書く

紙でも、テキストファイルでも構いません。

院長(自分)
├── 秘書    :タスク管理・メモ整理・日程確認
├── リサーチ担当:ガイドライン調査・競合情報・薬情報
└── 記録担当  :月次レポート・患者向けお知らせ・症例まとめ

このくらいシンプルで始められます。

次回、この組織図を元に、各エージェントの役割を具体的に設計します。

次回予告

第3回は、5つの基本エージェントの役割設計です。 各エージェントに「どんな指示を出せばよいか」を、具体的なテンプレートで学びます。

秘書、リサーチ担当、記録担当、制作担当、患者対応補助。 この5体で、クリニックの基本業務の多くをカバーできます。


組織図を描く。 たった一枚の紙ですが、これが全体の設計図になります。

「なんとなく使い始める」ではなく、「設計してから動かす」。 この順番が、3ヶ月後の差を作ります。