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レッスン 3 / 8|12分で読めます

役割設計 5つの基本エージェント

秘書・リサーチ・記録・制作・患者対応補助。クリニック運営に必要な5つのAIエージェントの役割を具体的に設計する。

第3回 役割設計 5つの基本エージェント

5つのエージェントカード。秘書・リサーチ・記録・制作・患者対応補助がそれぞれティールのアイコンで表現され、各カードに役割の一行説明が入っている

このレッスンが終わる頃には、こうなります。

  • 5つの基本エージェントの役割を、自分のクリニックに当てはめて説明できる
  • 各エージェントへの基本的な指示文の構造を理解している
  • どのエージェントから始めるかを判断できる

組織図が描けたら、次は各役割の中身を決めます。

「秘書」と書いても、Claude Codeには伝わりません。 「秘書として、毎朝院長のタスクリストを確認し、今日の優先順位トップ3を箇条書きで報告する」と書いて、動き始めます。

このレッスンでは、クリニック運営でよく使う5つのエージェントを具体的に設計します。

エージェント1:秘書

役割の一言説明 院長の思考を整理し、今日やることを明確にする

担当する業務

  • 朝のタスク確認と優先順位整理
  • 思いついたアイデアや課題の記録・整理
  • 締め切りの追跡と前日リマインド
  • メモや会議録の構造化

典型的な指示文

今日の日付は2026年5月24日(月)です。
先週末に追加された未完了タスクを確認して、今週の優先度順に並べ直してください。
締め切りが3日以内のものには[急] のマークをつけてください。

医療現場での注意点 秘書に患者情報を渡さない。 「A患者の処方について検討したい」ではなく、「次の外来での処方方針について院長が検討する時間を確保する」というように、個人が特定できない形で使います。

エージェント2:リサーチ担当

役割の一言説明 院長が必要とする情報を調べて、使える形にまとめる

担当する業務

  • ガイドラインや文献の最新版の確認
  • 医療機器・医薬品の情報収集
  • 地域の競合クリニック情報
  • 学会・セミナー情報の収集
  • 法改正・診療報酬改定の情報整理

典型的な指示文

高血圧治療ガイドライン2024年版と2019年版の主な変更点を、
院長向けに要点5点以内でまとめてください。
出典URLを必ず添付してください。
医学的な内容については、一次情報(ガイドライン原文・論文)を確認してから回答してください。

医療現場での注意点 リサーチ担当の出力は、必ず院長がレビューします。 特に医薬品情報・用量・ガイドライン推奨は、一次情報との照合を必ず行う。 「AIがそう言ったから」を処方根拠にしない。

エージェント3:記録担当

役割の一言説明 クリニックの運営に関わる情報を記録・整理・出力する

担当する業務

  • 月次の診療実績の集計・可視化
  • スタッフへの連絡文章の作成
  • 患者向けお知らせ文の草稿作成
  • 症例発表・学会資料の整理
  • 契約書・申請書のドラフト作成

典型的な指示文

今月の外来件数が320件、主な主訴は上位順に
①発熱(28%) ②咳(19%) ③腹痛(12%)でした。
先月比と前年同月比を含めた月次レポートを、Markdown形式で作成してください。
グラフは今回不要です。テキストのみで。

医療現場での注意点 患者の個人情報(氏名、生年月日、住所、ID)をこのエージェントに渡さない。 集計値・統計値・匿名化されたデータのみを扱う。 記録担当が作った文章は、院長が必ずレビューしてから配布・送付する。

エージェント4:制作担当

役割の一言説明 プレゼン・スライド・資料の形式を整え、完成形に近づける

担当する業務

  • 学会発表スライドの構成案作成
  • 院内研修資料のフォーマット整理
  • メルマガやニュースレターの下書き
  • ウェブサイトやSNS投稿の下書き
  • 採用資料・クリニック紹介資料の整備

典型的な指示文

来月の地域医師会での発表用に、
「外来でのAI活用:小さなクリニックでも始められること」
というテーマで10枚のスライド構成案を作ってください。

対象:地域の開業医20名(AIに詳しくない方が多い)
時間:15分(質疑応答5分込み)
トーン:技術論より、現場感・共感を優先

医療現場での注意点 制作担当が作った原稿は、必ず院長がトーン確認をする。 「おかもん先生らしくない」と感じたら、CLAUDE.mdにトーン規約を追加する。 ブランドの一貫性は、人間が守る。

エージェント5:患者対応補助

役割の一言説明 患者向けの説明資料・FAQを作成する(患者への直接対話は行わない)

担当する業務

  • よくある疾患の説明パンフレット草稿
  • 処置・検査前の説明文の素案
  • FAQ(よくある質問と回答)の整理
  • 保護者向け説明資料の作成
  • 退院時・転院時の引き継ぎ文書の素案

典型的な指示文

小児科外来で、保護者から「熱が出たらどうしたらいいですか」とよく聞かれます。
以下を含む説明資料の素案を作ってください。

含めてほしい内容:
- 市販の解熱薬を使うタイミング(解熱薬の適応については施設の方針に従う)
- すぐに受診すべきサイン(月齢・意識状態・呼吸状態など)
- 自宅でのケア(水分補給・衣服・環境)
- 「熱は悪者ではない」という基本メッセージ

A4一枚、保護者が読めるやさしい言葉で。
医学的な内容は、日本小児科学会の推奨に準拠してください。

実装時の必須確認事項: このサンプルは指示文の構造例です。実際に患者向け資料を作成する際は、解熱薬の適応基準・受診目安の具体的な数値(体温の閾値・月齢等)を、自施設の方針および日本小児科学会のガイドライン(「小児の発熱の診かた」等)に基づいて院長が設定してください。AIが生成した数値をそのまま使わないこと。

医療現場での注意点 患者対応補助が作った説明資料は、必ず院長(医師)がレビューしてから使用する。 適応・用量・緊急サインなどの医学的内容は、ガイドライン・添付文書との照合を必ず行う。 このエージェントは、患者への直接回答をしない。院長が確認してから届ける仕組みを守る。

医療現場ではこう翻訳する

「エージェントへの役割定義=スタッフへの業務マニュアル配布」

新しいスタッフを雇ったとき、最初に何をしますか。 業務マニュアルを渡す。 「あなたはこの範囲を担当する、こんな時はこうする、分からなければ院長に聞く」という文書を渡す。

エージェントへの役割定義は、これと全く同じです。

CLAUDE.mdに書くのは、スタッフへのマニュアルです。 「あなたはリサーチ担当です。医療情報は必ず一次情報を確認してください。患者個人情報は扱いません。出力はMarkdown形式で、出典URLを必ず添付してください」

このマニュアルの質が、エージェントの精度を決めます。

どのエージェントから始めるか

正解はありません。 ただ、選ぶなら「秘書」か「リサーチ担当」から始めることが多いです。

秘書から始める場合:自分のタスク管理が散らかっていると感じている院長向け リサーチ担当から始める場合:調べものに時間がかかっていると感じている院長向け

どちらか一つを1ヶ月使い込んでから、次を加える。 この育て方が、長続きします。

次回予告

第4回は、CLAUDE.mdの作法です。

役割定義を書く場所、それがCLAUDE.mdです。 医療職向けに、具体的な雛形を一つ作ります。

「当直の引き継ぎノートに書く情報」をCLAUDE.mdに書く、という翻訳で理解します。


5つのエージェントは、全部同時に使わなくていい。 まず1体。 そこから育てる。

「ナレッジが溜まっていく」感覚が生まれたら、次のスタッフを雇うタイミングです。