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AI基礎|記事

2026年、こんな使い方をしている — AI活用医師のリアルな1日

「AIで何が変わったか」ではなく「AIとどう働いているか」。小児科医・研究者・外科医のロールモデルを通じて、2026年の医師のAI活用の全体像を見る

Ken OkamotoKen Okamoto|2026-02-2414分で読めます
AI活用ロールモデルワークフロー1日の使い方研修医専門医2026

2026年、こんな使い方をしている 、 AI活用医師のリアルな1日

「AIを使っていますか?」という問いの立て方が間違っている

2026年に「AIを使っていますか?」と聞くのは、「スマートフォンを使っていますか?」と聞くのと同じくらい的外れになりつつある。

問うべきは「どう使っているか」だ。

以下は、複数の医師の実際のAI活用パターンから再構成した3つのロールモデルだ。特定の個人ではなく、「こういう使い方をしている医師たちがいる」という複合像として読んでほしい。


ロールモデル1:小児科医 / 外来中心

朝:通勤(30分)

NotebookLMを使ってガイドライン音声学習

前夜に読めなかった論文2本と、改訂されたワクチンスケジュールをNotebookLMにアップロードしておいた。アプリを開いて「音声オーバービュー」を再生する。2人のAIが対話形式でポッドキャストを読み上げてくれる。

「電車の中でガイドラインを読む時代は終わった。今は聴きながら移動する。内容の深さは変わらない。むしろ散歩中にも聴けるから総インプット量が増えた」

外来(9:00〜12:30)

Claudeで患者説明文書を即生成

1型糖尿病と診断されたばかりの8歳の子どもの親御さんに説明する。事前に「8歳の子どもと保護者向け、1型糖尿病の初回説明資料をA4 1枚で」とClaudeに作らせた文書を手直しして印刷しておいた。

「以前は毎回ゼロから書いていた。今は5分で90点のものができるから、残り10分で患者ごとに追記するだけ。むしろ以前より丁寧な資料が毎回できる」

HOKUTOで薬剤確認

新生児の処方で用量に迷ったとき、HOKUTOで添付文書を確認する。これは以前から変わっていない。

Perplexityでファクトチェック

患者の親から「このサプリメントが自閉症に効くとSNSで見た」と言われた。その場でPerplexityに「自閉症スペクトラム障害 サプリ エビデンス」と入れて、引用付きで「現時点でエビデンスはない」と確認。その引用を親御さんに見せながら説明した。

「憶測で否定するより、引用を見せながら話せる。時間もかからない」

昼休み(12:30〜13:30)

Claudeで午後のカンファ資料準備

月1回の抄読会。読んできた論文の要点をClaudeに「批判的吟味の観点で5点まとめ」させる。それを見ながら自分の意見を追記する。

「Claudeが指摘した『この研究のバイアス』を自分が見落としていた。教えてもらう感覚。でも最後は自分で確認する」

午後外来(14:00〜17:00)

基本的には午前と同じ流れ。

CURB-65計算機を自作して院内に共有

以前、肺炎の重症度評価で毎回スコアを手で計算していた研修医がいた。Claude Artifactsで「CURB-65スコア計算機を作って」と頼み、できたWebアプリのURLを医局のSlackに貼った。今は全員がそのURLを使っている。

「作るのに10分かかった。今まで何でなかったんだろう」

夜:退勤後(19:00〜21:00)

NotebookLMで専門医試験の準備

専門医試験まで3ヶ月。各疾患のガイドラインと過去問解説をNotebookLMに入れて、チャット欄で問題演習している。

「自分がアップロードした資料からしか答えが出ないので、答えの根拠が確認できる。マーカーじゃなくて、AIとの対話で勉強している感覚」


ロールモデル2:総合内科医 / 研究・論文も書く

朝:病棟回診前(7:30〜8:30)

Claudeで当直引き継ぎメモを精査

夜間担当医からの申し送りをClaude に入力して「この患者の次の24時間で確認すべきこと、上位3つ」を出力させる。

「自分が見落としていた視点を出してくれることがある。対話形式で思考を整理するツールとして使っている」

OpenEvidenceで最新エビデンスを確認

入院中の患者で「免疫チェックポイント阻害薬の心筋炎、現時点のエビデンスは?」が気になった。英語でOpenEvidenceに質問する。PubMedの最新論文を引用しながら回答が来る。

「カルテを書きながら、別タブでOpenEvidenceに質問する。以前UpToDateを使っていたのと同じ感覚。でも自然言語で聞けるのが違う」

病棟(8:30〜13:00)

Claudeのカスタム指示を設定済みのProjectを使用

「このProjectにはICU管理のガイドラインと自科のプロトコルが入っている。患者情報は個人情報除去済みの匿名情報で入力する。Projectが背景知識を持っているので、短い質問でも文脈をわかってくれる」

午後:論文作業(14:00〜18:00)

NotebookLMで関連論文を横断整理

今書いている論文に関連する30本の論文をNotebookLMに入れてある。「この文献群から、自分の研究との差分を教えて」「この研究の限界として何を書くべきか」と質問する。

「30本を全部読んでから論文を書いていた。今は全部入れてから対話する。読む時間と考える時間の割合が逆転した」

Claudeで考察の下書き

英語論文の考察ドラフトをClaudeで作る。「この結果をこう解釈した、この先行研究との比較を含めて英語で考察を書いて」と指示する。

「0から書くより、60点のドラフトを修正する方が圧倒的に速い。私の思考をClaudeが文章にしてくれる感覚」

Perplexityで引用確認

Claudeが生成した考察の中に引用が正確か怪しいものがある。Perplexityに具体的な論文名で確認を取る。

「Claudeのハルシネーションをここで潰す。必ずやっている」

夜:研究仲間とのオンライン会議(21:00〜22:00)

「最近のAI活用を共有する習慣ができた。先月は誰かがAIで統計解析のRコードを自動生成する方法を教えてくれた。お互いの使い方を見て、知らなかった活用法を知ることが一番早い」


ロールモデル3:外科系研修医(後期1年目)

特徴:「指導医に聞きにくいことをAIに聞く」

外科系研修医の最大の悩みは、忙しい指導医に質問しにくいこと。「この程度のことを聞いたらバカにされる」という恐れは今も昔も変わらない。

「AIはどんな質問にも怒らない。「これ基本的なことですか?」と聞いても答えてくれる。指導医に聞けない分野の底上げをAIでやっている」

術前の準備

Claude で術前評価プロトコルを確認

「この患者の術前評価で抜けていないか確認したい」と、術前情報(個人情報除去済み)をClaudeに入れて確認する。指導医に提出する前の「自己チェック」として使う。

当直中

Claude の「急変予測・患者安全チェック」プロンプト活用

「何か変だ」と感じた患者について、このプロンプトを使って構造化する。NEWS2スコアを計算し、最悪シナリオ3つを出力させる。

「上級医への報告前に、自分の頭を整理するために使っている。ぐちゃぐちゃだった思考が整理されて、上級医への報告がコンパクトになった」

手技の自己学習

「動画で見た手技の文字起こしをClaudeに入れて、手順のチェックリストを作ってもらう。印刷して見ながら練習する」

反省と限界

「AIに頼りすぎると自分で考えなくなる気がする。そこは意識している。答えを出してもらうのではなく、自分の考えを整理するために使う、という使い方を心がけている。答え合わせに使う感覚」


3つのロールモデルから見えること

共通点

  1. AIは「思考の補助」として使っている 診断・治療の決定はあくまで自分で行う。AIは「見落としがないか」「この方向性は正しいか」の確認ツール。

  2. 「ファクトチェックは必ずやる」 Claudeが生成した文章の引用は必ずPerplexityやPubMedで確認する。これが習慣になっている。

  3. 患者情報は匿名化してから入力 個人情報(氏名・生年月日・患者ID)は必ず除去する。これは全員共通のルール。

  4. 複数ツールを使い分けている ChatGPTだけ、Claudeだけ、ではなく、作業ごとに最適ツールを選んでいる。

違い

  • 若手(研修医):「聞きにくいことを聞く相手」「思考の整理」
  • 中堅(専門医):「効率化」「品質向上」「論文執筆」
  • 上級(指導医・研究者):「院内ツールの整備」「教育への活用」「研究加速」

あなたの「最初の一歩」はどこか

このロールモデルを読んで「自分には全部無理」と思った人は、一つだけ選んでほしい:

通勤中に聴く派 → NotebookLMの音声ポッドキャスト 今日、よく参照するガイドラインのPDFをNotebookLMに入れてみる。

患者説明に時間をかけている人 → Claudeの説明文書作成 「〇〇を新たに処方された患者向けの説明資料をA4 1枚で」と試してみる。

難しい症例で悩んでいる人 → Claudeの鑑別診断プロンプト Hoshizuの「マスター診断推論エンジン」を使ってみる。

論文を書いている人 → NotebookLMで関連文献を整理 今読んでいる論文10本を入れてみる。

当直・夜間対応が不安な人 → Claudeの急変予測チェック 「何か変だ」と感じたとき、Hoshizuのプロンプトを一度試してみる。


AIを「使う」ことよりも「どう使うか」を知ることの方が、2026年の医師には価値がある。

このサイト(Hoshizu)は、その「どう使うか」の答えを提供することを目的としている。

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