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AI基礎|記事

Boris Chernyの原図で読む、AI導入の5段階

Claude Code作者Boris Chernyが公開した「Steps of AI Adoption」を、ステップ0から4まで一つずつ丁寧に読み解きます。

Ken OkamotoKen Okamoto|2026-07-2116分で読めます
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Claude Codeの作者Boris Chernyは、AIエージェントの導入が進む過程を「Steps of AI Adoption」という5段階の表にまとめました。

この表の特徴は、導入度を「AIを何回使ったか」では測っていないことです。人の役割、同時に動くエージェント数、仕事の進め方、次に詰まる場所、安全に進むための仕組みを一枚に並べています。

まずは全体像を眺めてから、各ステップの原文と日本語の解説を順に見ていきましょう。

Boris Chernyが公開したSteps of AI Adoptionの原図。Gated、Assisted、Parallel、Supervised autonomy、AI-nativeの5段階を示している

出典: Boris Cherny「Steps of AI Adoption」原投稿(2026年7月公開)

視点

最初に押さえたい読み方

エージェント数は目標ではなく、仕組みが整った結果です。先に体数を増やすのではなく、いまの段階で詰まっている場所を外し、安全網を一つずつ作る。この順序が原図の中心にあります。

5段階を先に眺める

  1. Gated(0体): 使える状態を整える
  2. Assisted(約1体): AIと並んで作業する
  3. Parallel(約10体): 複数の仕事を指揮する
  4. Supervised autonomy(約100体): 仕組みと例外を監督する
  5. AI-native(約1,000体以上): 意図を示し、例外に対応する

AI導入の5段階で人の役割が変わる流れ。閉じた入口から、1対1の作業、並列指揮、自律ループの監督、意図による方向づけへ進む

段階が進むほど、人は「一つずつ作る」ことから離れ、複数の仕事、仕組み、最後は意図と例外を扱うようになります。

ここでいう「エージェント」は、質問に答えるだけのチャットではありません。目標を受け取り、ファイルや道具を使い、複数の手順を進め、結果を確かめるところまで担当するAIを指します。

ステップ0: Gated

Boris ChernyのSteps of AI Adoption原図、ステップ0「Gated」の行
原図のステップ0: Gated

どんな状態か

AIを仕事で使いたくても、組織の承認や環境が整っていません。利用できるモデルが限られている、社内データへ安全に接続できない、作ったものを公開する承認経路がない、といった状態です。

この段階の問題は、個人の使い方ではありません。入口そのものが閉じています。

人の役割

まず「安全に試せる小さな入口」を作ります。誰が使えるか、何を入力してよいか、費用をどう管理するか、成果物をどこで確認するかを決めます。

何がボトルネックになるか

  • 既存のセキュリティ審査や購買手続き
  • 成果よりも利用量や単価だけで判断する議論
  • 技術を理解する人が意思決定に参加していないこと

必要なガードレール

利用者の権限管理、組織単位の予算上限、データの取り扱いルール、既存の承認経路に沿った導入です。

次へ進む条件

全社導入を急ぐ必要はありません。承認された環境で、個人情報や機密情報を使わない小さな業務を一つ試せれば、ステップ1への入口になります。

ステップ1: Assisted

Boris ChernyのSteps of AI Adoption原図、ステップ1「Assisted」の行
原図のステップ1: Assisted

どんな状態か

人とAIが1対1で並んで働きます。AIが下書きやコードを作り、人がほぼすべてを確認します。午後いっぱいかかっていた作業が、会議と会議の間に終わるようになる段階です。

ただし、作業中はAIの画面を見続けがちです。出力を信頼できず、一行ずつ確認するため、人の注意力が上限になります。

人の役割

AIへ指示を出し、途中経過を見て、最後に成果物を確認します。感覚としては「速い助手」と一緒に働く状態です。

何がボトルネックになるか

  • 出力をすべて自分で読まないと不安になること
  • AIが作業している間、次の仕事へ移れないこと
  • 正しさを確かめる方法が人の目視だけになっていること

必要なガードレール

実行前に方針を確認する、変更範囲を限定する、テストやチェックリストを用意する、費用の上限を決める、といった仕組みです。

次へ進む条件

「AIをもっと速くする」ことではありません。AIが自分の仕事を確かめられるようにします。コードならテスト、型チェック、lint、ビルド、実画面の確認です。文書なら出典確認、禁止事項、完成条件のチェックリストが相当します。

視点

最初の大きな転換点

ステップ1から2へ進む鍵は、見る量を増やすことではなく、確かめ方を渡すことです。人は作業の全過程ではなく、検証を通った結果を確認できるようになります。

ステップ2: Parallel

Boris ChernyのSteps of AI Adoption原図、ステップ2「Parallel」の行
原図のステップ2: Parallel

どんな状態か

一人が複数のエージェントへ別々の仕事を任せます。原図の目安は約10体です。それぞれが分離された作業場所で進み、テストやビルドを終えてから結果を返します。

人が確認する単位も変わります。AIが入力した一文字ずつではなく、「目的を満たした差分か」「検証を通ったか」を見ます。

人の役割

オーケストレーター、つまり指揮者です。仕事を分け、担当を決め、衝突しないようにし、完成した結果を統合します。

何がボトルネックになるか

  • 複数の成果物を確認するレビュー時間
  • 仕事の分け方が曖昧で、エージェント同士の変更が衝突すること
  • 同時進行の状況を頭だけで管理すること

必要なガードレール

作業場所の分離、担当ファイルの明示、自動テスト、自動レビュー、変更前後の差分確認、最終的な人の承認です。人が書いたものとAIが書いたものに、同じ品質基準を適用します。

次へ進む条件

仕事を一回限りの指示ではなく、繰り返せる手順へ変えます。必要な文脈をAIが自分で取得でき、失敗したときの停止条件と報告先が決まっていることが必要です。

ステップ3: Supervised autonomy

Boris ChernyのSteps of AI Adoption原図、ステップ3「Supervised autonomy」の行
原図のステップ3: Supervised autonomy

どんな状態か

定型的な保守や点検が、頼まれる前からバックグラウンドで動きます。原図では約100体が目安です。人が一体ずつ起動するのではなく、エージェントが必要に応じて別のエージェントへ仕事を分けます。

ここで問いが変わります。「すべてのコードを読んだか」ではなく、「AIが判断するために足りなかった文脈は何か」「次は同じ失敗を防げるか」を考えます。

人の役割

管理職を管理する立場です。一つひとつの作業ではなく、仕事を回すループ、品質基準、例外処理を監督します。

何がボトルネックになるか

  • ループ全体を信頼できるか
  • エージェントの判断待ちではなく、人の承認待ちが増えること
  • 規模が大きくなったときの費用と品質の管理

必要なガードレール

エージェントの隔離、基準を記した指示書、自動コードレビューとセキュリティレビュー、費用の監視、失敗時の停止、例外だけを人へ上げる仕組みです。

次へ進む条件

対象領域ごとに、繰り返し可能な自動化を設計します。たとえば依存関係の更新、定期点検、大規模な移行、フィードバックの分類などです。何でも自動化するのではなく、品質を測れて、失敗時に戻せる仕事から広げます。

注意

この段階で起きやすい失敗

ループへの信頼ができる前に、エージェント数だけを増やすことです。検証できない仕事を100体へ配れば、速くなるのは完成ではなく混乱です。

ステップ4: AI-native

Boris ChernyのSteps of AI Adoption原図、ステップ4「AI-native」の行
原図のステップ4: AI-native

どんな状態か

仕事のループが閉じ、エージェントの多くをAIが起動します。原図の目安は約1,000体以上です。人はすべての作業を追いかけず、目標と制約を示し、例外が起きたときに判断します。

四半期単位だった大規模な移行が、起動して経過を監視するワークフローへ変わる。原図では、そのような変化が例として示されています。

人の役割

意図で舵を取ります。「どのような状態を実現したいか」「何をしてはいけないか」「どの条件で人へ戻すか」を定めます。

何がボトルネックになるか

  • 大規模に自動化する価値がある仕事を見つけること
  • 仕事の種類に合った安全策を設定すること
  • 例外を見落とさず、通常時の通知を増やしすぎないこと

必要なガードレール

仕事ごとの費用上限、モデルの使い分け、監査ログ、例外時の人への引き継ぎ、公開や本番反映など不可逆な操作の承認です。

この段階の本質

1,000体を動かすこと自体に価値があるわけではありません。人が逐一操作しなくても、意図と制約に沿って仕事が進み、異常だけを人が扱えることが本質です。

自分の現在地を見つける

使っている製品名ではなく、いま一番時間を奪っているものを見ます。

  1. 承認されず業務で使えないなら、現在地はステップ0です。安全に試せる入口を整えます。
  2. AIの出力をすべて読んでいるなら、現在地はステップ1です。自己検証の方法を整えます。
  3. 複数の結果のレビューが追いつかないなら、現在地はステップ2です。分業、統合、レビューの仕組みを整えます。
  4. 自律ループをまだ信頼できないなら、現在地はステップ3です。停止条件、監視、例外処理を整えます。
  5. 自動化する仕事の選定が難しいなら、現在地はステップ4です。価値とリスクによる優先順位を整えます。

同じ組織でも、仕事によって段階は変わります。文書作成はステップ2でも、本番デプロイはステップ1に留める、といった設計は自然です。危険度が高い仕事ほど、人の承認を残します。

原図から持ち帰りたい3つのこと

  1. エージェント数は成熟度の原因ではなく結果である
  2. 次の段階へ進むには、いまのボトルネックとガードレールをセットで扱う
  3. 人の役割は作業者から、指揮者、監督者、意図を示す人へ移る

最初にやることは、自分が何体を動かせるか数えることではありません。いま最も時間を奪っている詰まりを一つ選び、それを安全に外す仕組みを作ることです。

次に読む

参考資料

原図の内容と、この記事で加えた日本語の例や読み方は区別しています。原図の表現を確認したい場合は、参考資料の原投稿をご覧ください。

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