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レッスン 2 / 5|13分で読めます

画像生成AIの著作権 ─ 学会スライドと論文図の実務

画像生成AIの学習データの扱い、生成画像の著作権、既存作品との類似リスク、医療スライド・論文図での実践チェックを学びます

このレッスンで学ぶこと

このレッスンを終えると、画像生成AI(Midjourney、DALL-E、Stable Diffusion、Nano Banana など)で作った画像を、学会スライドや論文の図に使うときの著作権上の勘所を持って帰れます。前のレッスンの「学ぶ・作る・使う」の三段を、画像に当てはめて具体化します。


セクション1: 画像生成AIの学習データは、著作権的にどうなのか

画像生成AIは、ウェブ上の膨大な画像を学習して作られています。「他人の絵を勝手に学習している、それは侵害では」という批判は根強くあります。

日本の整理では、この学習段階は前レッスンの著作権法30条の4(非享受目的の利用)に当たり、原則として広く許容される、というのが出発点です。一方で海外は判断が割れています。

視点

学習データをめぐる海外の動き(2026年時点)

英国のGetty Images対Stability AIでは、英高等法院が2025年11月、学習済みモデルの重みを「侵害複製物」とは認めず、二次的著作権侵害の主張を退けました(商標の一部のみ認容)。一方ドイツのミュンヘン地裁は同月、歌詞をAI学習に使った行為を著作権侵害と判断しています。学習の適法性は、国・事案によってまだ揺れています。

実務上の含意はシンプルです。学習データの是非は提供企業と各国法廷が争う論点であり、利用者である私たちが直接コントロールできる部分ではありません。私たちが管理すべきは、次のセクションの「出てきた画像」のほうです。


セクション2: 生成された画像の著作権は、誰のものか

二つに分けて考えます。

その画像に著作権が発生するか

前レッスンのとおり、著作権は「人の創作的な表現」を保護します。プロンプトを一行入れて出てきただけの画像は、人の創作的寄与が乏しく、著作物と認められにくいと考えられています。米国著作権局も、AIが自律生成した画像は人間の著作者性を欠くとして登録を認めていません。

つまり、自分が生成した画像でも「自分に強い著作権がある」とは限らない。第三者が同じような画像を使っても、差し止めにくい場合がある、ということです。独占したい図版は、人の手による創作の度合いを高める必要があります。

その画像が、誰かの作品に似ていないか

これが医療現場で最も大事な確認です。学習が適法でも、出力された画像が既存のイラスト・キャラクター・写真に依拠して類似していれば、それを使う行為は通常の著作権侵害になりえます。

注意

スライド・論文図で必ず確認すること

生成画像が、見覚えのある特定のキャラクター、商用イラスト、実在の人物写真、有名な作品に酷似していないか。少しでも「これ、あの絵に似ているな」と感じたら使わない。学会発表や論文は公開範囲が広く、後から指摘されると撤回・信用毀損につながります。迷ったら差し替える。これが一番安全です。


セクション3: サービスごとの利用規約は必ず違う

画像生成AIは、サービスごとに生成画像の権利と商用利用の条件が異なります。しかも規約は更新されます。

確認すべきポイント:

  • 生成画像の権利が利用者に帰属するか、サービス側に留保があるか
  • 商用利用(有料セミナー資料、書籍、製品)が許されるか、有料プランが要るか
  • 入力した画像・プロンプトが、サービスの再学習に使われるか

特に医療では、患者の画像(眼底写真、皮膚、エコー等)を生成AIや編集AIに入力する場面に注意が要ります。これは著作権より個人情報・守秘義務の問題で、原則として実在患者の画像を外部サービスに入れてはいけません(詳しくは別コース「その患者データ、使って大丈夫?」へ)。


セクション4: 医療で使うときの実践チェック

画像生成AIを学会スライドや教材の図に使うときの手順です。

  1. 用途を決める: 院内勉強会か、学会発表か、論文・出版か。公開範囲が広いほど慎重に。
  2. 類似チェック: 生成画像が既存作品に酷似していないか、自分の目で確認する。
  3. 医学的正確性チェック: ここが著作権とは別の落とし穴。生成された解剖図・病理図は、もっともらしく見えて構造が誤っていることがある。必ず専門家の目で正確性を確認し、誤りは修正する。
  4. 規約・商用利用の確認: 使ったサービスの規約で、その用途が許されるか。
  5. AI利用の明示: 学会・雑誌の規定の多くが、図にAIを使った場合の開示を求めている。隠さない。

視点

著作権より先に効く落とし穴

画像生成AIの医療利用で、実害が出やすいのは著作権侵害よりも「医学的に不正確な図をそのまま使ってしまう」ことです。指の本数、臓器の位置、細胞の構造。AIは平気で間違えます。著作権の確認と、正確性の確認は、必ずセットで行ってください。


まとめ

画像生成AIでは、学習データの是非は提供側と法廷の論点で、利用者が管理すべきは「出てきた画像」。生成画像は人の創作的寄与しだいで著作権が弱いことがあり、既存作品への類似は侵害になりうる。サービス規約は商用利用・権利帰属が異なるので都度確認し、医学的正確性のチェックを必ずセットにする。

次のレッスンでは、こうした利用規約の読み方そのものを、主要AIサービスを例に掘り下げます。

セルフチェック

1. 画像生成AIで作った画像を学会スライドに使うとき、著作権の観点で最も重要な確認はどれですか?

2. AIが自律生成した画像の著作権について、正しい説明はどれですか?

3. 医療現場で画像生成AIを使う際、著作権と並んで必ず確認すべきことはどれですか?

明日のアクション

次の発表資料用に画像生成AIで図を1枚試作し、(1) 既存作品に似ていないか、(2) 医学的に正確か、(3) 使ったサービスの規約で発表利用が許されるか、の3点を実際に点検してみましょう。


参考文献

  1. 著作権法第30条の4
  2. 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」文化庁、2024年3月
  3. Getty Images (US) Inc. & ors v Stability AI Ltd, England and Wales High Court, 2025年11月判決
  4. U.S. Copyright Office, "Copyright and Artificial Intelligence"(人間の著作者性に関する指針)