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要約と中身を突き合わせる

  • レッスン 2
  • 12分

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • 要約が事実だけを並べていても、重要な変更が抜けている場合があると説明できる
  • 架空の改定案とAIの要約を見比べ、抜けている変更点を自分の目で見つけられる
  • 抜けが見つかったとき、それがAIの嘘ではなく見落としだと区別できる

前のレッスンでは、成果物が完成して見えるほど、人は確かめる手を緩めることを見ました。ここからは、実際に確かめる技術を1つずつ身につけていきます。最初の技術は、要約と元の資料を突き合わせることです。

要約は嘘をつかない。それでも抜ける

AIが作る要約は、たいてい正確です。書いてあることが事実と違う、ということはむしろまれです。危ないのはそこではありません。要約は「何を書くか」を選ぶ作業でもあり、その選び方の基準は、要約を頼んだ人ではなくAIが決めています。だから、全部本当のことが書いてあるのに、読み手にとって一番大事な変更が抜けている、ということが起こります。

たとえば、プロジェクトの週次報告をAIにまとめさせたとします。進んだタスクと遅れたタスクが箇条書きで並び、一見すると過不足ない報告に見えます。しかし、遅延の原因になっている外部要因への言及や、来週に響く判断待ちの項目が、要約の外に置かれていることがあります。書かれている一つひとつは事実でも、読み手が本当に知りたかったことが抜けたまま、報告として通ってしまいます。

これを自分の目で見つける練習を、架空の題材でやってみます。

やってみよう

演習1:改定案とAIの要約を見比べる

ある会社の人事部が、有給休暇の取得ルールを改定することになりました。改定案の抜粋は次のとおりです。

有給休暇規程 改定案(抜粋)

第3条(申請) 「取得希望日の3営業日前までに申請すること」を「取得希望日の前日までに申請すること」に改める。

第4条(単位) 1日単位に加えて、半日単位での取得を新設する。

第5条(繰越) 繰り越せる日数の上限を、10日から5日に引き下げる。

第6条(承認) 「所属長の承認を得ること」を「所属課長および所属部長、二段階の承認を得ること」に改める。

第7条(適用) 本改定は正社員に適用する。契約社員の有給休暇規程は別途定める。

附則(経過措置) 施行日の時点で繰り越されている日数のうち、5日を超える分は施行日に消滅する。

この改定案を読み込ませて、Claudeに変更点の要約を頼んだところ、次の答えが返ってきました。

Claude

今回の改定で変わる点は、次の3つです。

・有給休暇の申請期限が、3営業日前までから前日までに短縮されました ・半日単位での取得が新設されました ・承認の手続きが、所属長の承認から二段階の承認に変わりました

この要約に、嘘は書かれていません。3つとも、改定案に書かれている事実です。それでも、大事な何かが抜けています。もう一度、改定案の全文と要約を見比べて、抜けている変更点を3つ見つけてください。

演習2:抜けが起きた理由を考える

3つ見つけたら、なぜAIがそれらを要約から外したのか、自分なりに考えてみてください。悪意があったわけではないはずです。何を「変更点」として重要だと判断したのか、その基準を想像してみましょう。見つけにくかった抜けがあれば、それが本文のどのあたりに書かれていたかも、あわせて確認してください。

答え合わせ

抜けていたのは、次の3つです。

繰越上限の引き下げ

10日から5日への引き下げは、社員にとって不利益になる変更です。要約の3項目はすべて手続き上の変更で、この不利益変更だけが抜けていました

繰越分の一部が消える経過措置

附則により、施行日の時点で5日を超えて繰り越している分は消滅します。すでに休みを貯めている人ほど影響が大きい変更ですが、要約には出てきません

適用対象の限定

この改定が正社員だけに適用され、契約社員は対象外だという範囲の限定は、要約のどこにも出てきません

要約から抜けていた3つ

繰越上限の引き下げと、それに伴う経過措置は、見過ごすと社員説明会で一番の争点になる変更です。要約だけを読んで社内通知を作ってしまうと、この不利益変更を伝えないまま改定が進んでしまいます。附則のように本文の後ろに置かれた条項は、要約から特に落ちやすい場所です。

要約は、事実を並べる作業と、何を並べるかを選ぶ作業の2つでできています。前者はAIが得意でも、後者の基準は自分で確かめる必要があります。

このパターンは、規程の改定だけでなく、議事録の要約や、ガイドラインの改訂点まとめでも同じ形で起こります。要約が3項目にまとまっているのを見て安心する前に、元の資料のほうが何条・何段落あったかを数えてみてください。数が大きく違うなら、抜けがないか一度は見比べる価値があります。

今日のまとめ

  • AIの要約は、書かれている内容が事実でも、大事な変更が抜けていることがある
  • 抜けはAIの嘘ではなく、何を重要とみなすかという選び方の違いから起きる
  • 要約だけで判断せず、元の資料と見比べる一手間が、不利益変更のような見落としを防ぐ

次のレッスンでは、この「見比べる」以外にも使える、確かめ方のメニューを整理します。

セルフチェック

1. AIが作る要約について、本文で説明されていたことはどれですか。

2. 演習で見た改定案の要約から抜けていた3つに含まれないものはどれですか。

3. 要約から重要な変更が抜けたとき、本文はその原因をどう説明していますか。

SourceARTICLE
Anthropic教育レポート: Discernment Toolkit

Claude Academy参加者129名へのインタビューから、成果物を確かめる方法と、その障壁を報告しています

WebAnthropic
academy.claude.com/ja/tutorials/discernment-toolkit

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