前のレッスンでは確かめ方のメニューを見ました。ここでは、その確かめ方を使うタイミングの話をします。新しい種類の作業をAIに任せようとするとき、いきなり本番の材料で試すのはリスクが高いやり方です。
答えを知っている問題で、先に試す
すでに答えを知っている過去の材料があるなら、まずそれでAIに同じ作業をさせてみます。答え合わせができる状態で試すので、AIがどこで合っていて、どこでズレるかがはっきり分かります。
任せたい作業を決める
これからAIに任せたい種類の仕事を1つ選ぶ
答えを知っている材料を探す
去年の集計、過去の議事録など、自分がすでに正解を知っているものを見つける
AIにやらせて突き合わせる
同じ作業をAIにさせ、自分の答えと見比べる
一致すれば広げる、ズレれば直す
一致した部分は任せてよい。ズレた部分は理由を確かめてから、もう一度試す
この手順の値打ちは、失敗しても被害がないことです。答えをすでに知っているので、AIが間違えても実害は出ません。間違え方を観察して、次に活かせます。
いきなり本番の材料で試すと、間違いに気づいたときにはもう相手に届いてしまっていることがあります。答えを知っている材料であれば、何度でもやり直せますし、どこで間違えやすいかのクセも見えてきます。このクセが分かってはじめて、本番でどこを重点的に確かめればよいかが定まります。
たとえば、問い合わせへの返信をAIに下書きさせたいとき、いきなり今日届いた新しい問い合わせで試すのではなく、すでに自分で対応し終えた過去の問い合わせを使って試します。当時どう返信したかを覚えているので、AIの下書きと見比べれば、言い回しのクセなのか、事実として間違っているのかがすぐに分かります。ここで安心して任せられると分かったジャンルから、少しずつ広げていきます。
ズレたときに見るべきところ
AIの答えが自分の答えとズレたとき、原因は大きく2つに分かれます。
ズレの2つの原因
頼み方が曖昧だった、必要な前提を伝えていなかった、という場合。
この場合は、指示を具体的にして、もう一度試す価値があります。
指示を直しても同じズレが出る、という場合。
これはAIがその作業自体を苦手としている可能性が高く、今はまだ任せるべきタイミングではありません。
1回のズレで諦める必要はありませんが、指示を直しても同じズレが繰り返されるなら、そこで一度立ち止まります。何度指示を直したら見切りをつけるか、自分なりの目安を決めておくと、いつまでも粘り続けずに済みます。
たとえば、去年の売上集計をAIにやらせてみたところ、合計は合っていても、返品分の扱いだけが毎回違う結果になったとします。ここで指示に「返品分は別枠で集計する」と足して直るなら、伝え方の問題でした。それでも直らないなら、この集計はまだ任せず、当面は自分で確認しながら使う判断になります。
非営利団体・病院のような組織で、この手順をどう回すかは、病院・公益の組織でAIを使うでも扱っています。
一度広げた範囲も、固定ではありません。担当が変わる、作業の形式が変わる、AIのモデルが更新される、といった節目が来たら、もう一度答えを知っている材料で試し直すと安心です。任せる範囲は、一度決めたら終わりではなく、時々見直すものだと考えてください。
やってみよう
演習1:答えを知っている材料を探す
自分の仕事の中で、すでに答えを知っている過去の材料を1つ探してください。去年作った資料、すでに集計し終えたデータ、過去の議事録などが候補になります。
演習2:AIにやらせて、ズレを書き出す
見つけた材料で同じ作業をAIにさせ、自分の答えと突き合わせてください。一致した部分とズレた部分を書き出し、ズレがあれば、それが伝え方の問題か、任せ方の問題かを考えてください。伝え方の問題だと判断した場合は、指示をどう直すかも1行書き添えておくと、次に試すときにそのまま使えます。任せ方の問題だと判断した場合は、当面はどこまで自分で確認しながら使うかも決めておきましょう。書き出した内容は、同じ作業を頼む次の人にも引き継げる記録になります。
今日のまとめ
- 新しい作業をAIに任せる前に、答えをすでに知っている材料で先に試す
- ズレの原因は、伝え方の問題と、任せ方そのものの問題の2つに分かれる
- 一致した作業だけ任せる範囲を広げるという、慎重な広げ方が事故を防ぐ
次のレッスンでは、AIから返ってきた指摘そのものをどう扱うかを見ていきます。
セルフチェック
1. 任せる範囲を広げる前に、本文が勧めている最初のステップはどれですか。
2. AIの答えが自分の答えとズレたとき、本文が挙げた2つの原因はどれですか。
3. 指示を直しても同じズレが繰り返される場合、本文はどう判断すべきだと述べていますか。