前のレッスンでは、任せる範囲を広げる前に、答えを知っている材料で試す手順を見ました。ここでは逆に、AIから指摘を受け取る側に立ちます。AIにレビューを頼むと、複数の指摘が返ってくることがあります。全部を同じ重さで扱う必要はありません。
指摘は3つの山に分ける
指摘の仕分け方
今すぐ直す
事実として間違っている、または明らかな不備
理由を尋ねる
意図があってそうしている可能性がある、または指摘の根拠が曖昧
そのまま
軽微で、直しても直さなくても大きな影響がない
指摘を受け取ったら、まずこの3つのどれに当たるかを決めてから動きます。全部をその場で直そうとすると、直さなくてよかったものまで直してしまい、逆にそのまま通せばよかった判断を潰してしまいます。
たとえば、企画書のレビューをAIに頼むと、誤字の指摘から、構成そのものへの疑問まで、粒度の違う指摘が一度に返ってくることがあります。誤字はその場で直せますが、構成への疑問には、こちらの意図が伝わっていないだけの場合もあります。粒度の違う指摘を同じ扱いにせず、まず仕分けてから動くことで、直す手間そのものを減らせます。
AIの指摘も間違える
もうひとつ覚えておくべきことがあります。AIの指摘は、AI自身の出力と同じように、間違えることがあります。
ある会社の社内マニュアル改定案を、Claudeにレビューしてもらったところ、次の4つの指摘が返ってきました。
- 手順3と手順5で、同じ番号(手順4)が重複して使われています
- 「速やかに報告する」という表現は曖昧です。具体的な時間を入れるべきです
- 見出しのフォントサイズが章によって統一されていません
- 第4章の承認者欄が空欄になっています
この4つを、今すぐ直す・理由を尋ねる・そのまま、に仕分けてみましょう。1は番号の重複で、客観的な不備なので今すぐ直します。3は体裁の軽微な指摘で、そのままでも問題ありません。
2と4は、少し立ち止まる必要があります。2は「速やかに」を具体的な時間にすべきだという指摘ですが、あえて幅を持たせている場合もあります。書いた本人に意図を尋ねるべき指摘です。4はさらに注意が必要です。改定案では承認者欄は空欄のままで正しく、別紙の様式2に承認者を記載する設計になっていました。Claudeはそこまで読み込めておらず、指摘そのものが的外れでした。
AIの指摘を受け取ったとき、「指摘されたから直す」ではなく、「指摘は正しいか」をまず確かめます。レビューをする側のAIも、見落とすことがあります。
これは、AIが二重に間違えているわけではありません。最初にマニュアルを作ったときのAIと、それをレビューしたAIは、同じ会話の履歴を持っていません。レビュー役は改定案の本文だけを見ており、様式2という別紙の存在までは知らされていませんでした。人間のレビューでも、渡された資料の範囲でしか指摘できないのと同じです。だからこそ、指摘を受け取る側が、レビューアーの見えている範囲を意識しておく必要があります。
レビューを頼むときに、関連する別紙や過去のやり取りも一緒に渡しておけば、この種の的外れな指摘はある程度減らせます。それでも完全には防げないので、指摘を受け取る側の仕分けが、最後の砦になります。
やってみよう
演習1:4つの指摘を仕分ける
上の4つの指摘を、自分ならどう仕分けるか、理由とともに書き出してください。本文の仕分けと違う結論になった箇所があれば、なぜそう判断したかも合わせて書いてみてください。仕分けに迷った指摘があれば、それがなぜ迷うのかも理由の1つです。
演習2:尋ね返す一言を考える
「理由を尋ねる」に入れた指摘について、実際にAIへ何と尋ね返すかを1文書いてみてください。たとえば4の指摘であれば、「承認者は様式2に記載する設計ですが、確認しましたか」といった聞き方になります。尋ね返した結果、指摘の側が正しかったと分かることもあります。そのときは、そのまま指摘どおりに直します。
今日のまとめ
- AIからの指摘は、今すぐ直す・理由を尋ねる・そのまま、の3つに仕分けてから対応する
- AIの指摘そのものが、文脈を読み違えて的外れになることがある
- 仕分けた結果は、次にAIへ送る具体的な一言に変えると、そのまま次の作業に使える
次のレッスンでは、このコースの最後に、確かめる力を妨げる一番大きな壁を扱います。
セルフチェック
1. AIからの指摘を仕分ける3つの山はどれですか。
2. 本文の例で、Claudeの指摘そのものが的外れだったのはどれですか。
3. AIの指摘を受け取ったときの姿勢として、本文が勧めているのはどれですか。