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それは医療機器か

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自分が作ったツールは医療機器か。PMDAの該当性ガイドラインが示す判断軸を基に、「情報を整理する」と「診断を示唆する」の線、越える表現と安全側の表現を実例で見分けられるようになる。

教育目的の教材です。生成AIの出力を診断・治療の判断にそのまま使わないでください。最終判断は医師が行います。

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • SaMD該当性が使用目的とリスクの程度で判断されると説明できる
  • 「情報を整理する」と「診断を示唆する」の表現の線を見分けられる
  • 該当性が怪しいときは文言でなく機能で判断する考え方を使える

AIツールを院内で配ったら、それだけで医療機器になるのか。症状を入力すると緊急度を提案するチェックリスト、検査値の並びから異常を拾い上げるスプレッドシート、問診の答えを要約するチャットボット。作った本人は「情報を整理しているだけ」のつもりでも、渡した相手はそれを診断の代わりに使うかもしれません。

このレッスンでは、それが薬機法上の医療機器(SaMD)に該当するかを自分ひとりで最終判定するのではなく、危険な線をあらかじめ知っておくための考え方を身につけます。

判断するのは、名前でも見た目でもない

厚生労働省は「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」で、SaMDが医療機器に当たるかどうかの判断軸を示しています(令和3年3月31日策定、令和5年3月31日一部改正)。該当性の基本的考え方には、こうあります。

特定のプログラムが、医薬品医療機器等法の医療機器に該当するか否かは、製造販売業者等による当該製品の表示、説明資料、広告等に基づき、当該プログラムの使用目的及びリスクの程度が医療機器の定義に該当するかにより判断される

判断材料は、表示や説明資料に現れた「使用目的」と、実際に人の生命及び健康へ及ぼす「リスクの程度」の2つです。プログラムの名称や見た目のデザインでは決まりません。

ここで見落としやすい点が2つあります。

  1. 同じ機能でも使用目的が異なれば判断が異なる。同じ「検査値を並べる」機能でも、参考情報として見せるのか、異常の判定として見せるのかで扱いが変わる
  2. 複数機能を持つプログラムは、少なくとも1つの機能が医療機器プログラムの定義を満たせば、全体が規制対象になる。「メインは記録機能で、判定機能はおまけ」という言い訳は通らない

なお、副作用や機能障害が生じても人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの(クラスI医療機器相当)は、医療機器の範囲から除かれます。作ったツールがすべて対象になるわけではありません。

医療機器に該当しない典型四類型

同ガイドラインは、医療機器に該当しない典型例として次の4つを挙げています。

類型内容
患者説明患者への説明を目的とするプログラム
院内業務支援業務支援・メンテナンスを目的とするプログラム
自己の情報閲覧使用者(患者や健康な人)が自らの医療・健康情報を閲覧等することを目的とするプログラム
低リスク生命及び健康に影響を与えるリスクが低いと考えられるプログラム

作ったツールがこの4つに素直に収まるなら、医療機器には当たりません。問題は、ここから少しはみ出したときです。

「情報を整理する」と「診断を示唆する」の線

はみ出す境目は、たいてい「診断を示唆しているかどうか」に現れます。表現の例を並べます。

越える表現(医療機器に近づく)安全側の表現
症状から病気を判定する情報を整理する
受診すべきか診断する一般的な情報を提示する
治療方針を提案する受診の目安となる公的情報を案内する

左側は、プログラムが判定・診断の役割を引き受けています。右側は、判断の主体を人、つまり患者や医師の側に残したまま、材料だけを渡しています。この線を越えるかどうかで、該当性の判断が変わります。

文言を変えても、機能が変わらなければ意味がない

ここが一番間違えやすいところです。ガイドラインが見ているのは「表示」ですが、表示は使用目的とリスクの程度を映す手がかりに過ぎず、表示だけを取り繕っても実態は変わりません。

LPの文言を「症状から病気を判定します」から「情報を整理します」に直しても、裏で動いているロジックが依然として鑑別診断のアルゴリズムを実行し、疑いの強い病名を順位づけして提示しているなら、機能としては診断支援のままです。該当性が怪しいと感じたら、直すべきは文言ではなく機能そのものです。

やり方はいくつかあります。判定ロジックそのものを削る。順位づけをやめて「こういう症状のときは何科に相談されることが多いか」という一般的な案内に落とす。出力から確信度や優先順位を外す。文言合わせでは越えられない線を、機能側の設計で越えないようにします。

迷ったときは、ここで判定を止める

このレッスンで扱ったのは、危険な線をあらかじめ知っておくための地図です。実際の該当性を最終的に決めるのはPMDAであり、自分ひとりの判断で「大丈夫」と結論づけていい場面ではありません。

該当性が怪しいと感じたら、それは相談すべき瞬間のサインです。何を持って相談に行けばいいかは、このコースの最後のレッスンで扱います。

今日のまとめ

  • 医療機器への該当性は、表示・説明資料・広告等に現れた使用目的と、リスクの程度で判断される。名前や見た目では決まらない
  • 複数機能のうち1つでも医療機器プログラムの定義を満たせば、全体が規制対象になる。クラスI相当の低リスクは範囲から除かれる
  • 「情報を整理する」側にとどまるか「診断を示唆する」側に踏み込むかが分かれ目。文言を直しても機能が変わらなければ、該当性は変わらない

次のレッスンでは、もう一つの線、研究として倫理審査が要るかどうかを見ます。

セルフチェック

1. プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインが示す判断材料はどれか

2. 複数機能を持つプログラムの扱いとして正しいものはどれか

3. 「情報を整理する」側にとどまる安全側の表現はどれか

参考文献

  • 厚生労働省医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課/医療機器審査管理課「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」(令和3年3月31日策定、令和5年3月31日一部改正)。PDF(PMDA掲載)

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