前回までのレッスンで、教えてもらう頼み方、用途別の頼み方、診断質問、練習相手としての使い方を見てきました。ここで一度立ち止まって考えたいのは、任せる範囲そのものです。
本番でAIは隣にいない
試験会場にAIは持ち込めません。転職の面接でも、AIに助けてもらいながら答える人はいません。勉強の途中でAIに任せた部分は、本番までに自分の力として戻しておく必要があります。これができていないと、練習では解けたのに本番では手が止まる、という食い違いが起きます。
この食い違いは、練習の量が足りないから起きるとは限りません。AIに教えてもらいながら解いた問題数と、自分だけで解ける問題数がずれたまま増えていくことが原因のことが多く、量よりも質の問題です。演習を何十回やっても、その大半をAIの助けを借りて解いていたら、本番で頼れる貯金にはなっていません。
3つの自己チェック
任せすぎていないかは、次の3つを自分で試すと見えてきます。
AIの助けを借りずに、知らない人に自分の言葉で説明できるか
同じ論点の別の問題を、資料もAIも見ずに解けるか
正解を覚えているだけでなく、なぜそれが正解なのかを言えるか
3つのうち1つでも詰まったら、まだAIに任せすぎている合図です。もう一度、教えてもらう頼み方に戻って、その一点だけをつぶしておきます。
任せすぎているサイン
自己チェック以外にも、日々の勉強の中で気づけるサインがあります。
- AIが作った解答をそのまま書き写して、ノートを埋めた気になっていないか。手を動かして写す作業と、自分の頭で組み立て直す作業は、似ているようで別の作業です
- 同じ論点の問題でも、言い回しが変わると急に手が止まらないか。表面の言葉が変わっただけで解けなくなるのは、解き方の型を覚えていて、中身の理解が追いついていない合図です
- 説明を聞いたときは分かった気になるのに、翌日には思い出せないか。その場の納得感と、時間が経ってからの定着は、別のものとして扱う必要があります
心当たりがあれば、演習の比重を「AIに教えてもらう」から「AIなしで解く」へ意図的に戻してください。分野によって、この線引きが動くことも覚えておくとよいでしょう。すでに得意な分野は任せる比重を大きくしてよく、専門知識が薄い分野ほど、自分で確かめる手間を厚くする必要があります。この専門知識の差については、AIの答えを確かめるで、評価力の壁として詳しく扱われています。
線引きは一度決めて終わりではなく、勉強が進むにつれて見直すものでもあります。試験範囲全体の理解が浅い最初の1か月は、AIに教えてもらう比重を大きくしてかまいません。試験日が近づくほど、自己チェックの頻度を増やし、AIなしで解く時間の割合を意識して増やしていくと、任せた分を本番までに取り戻しやすくなります。
やってみよう
演習1:3つの自己チェックをやってみる
今勉強している範囲の中から論点を1つ選び、説明できるか・解けるか・理由を言えるかの3つを、AIを見ずに自分で試してください。声に出して説明してみると、書くだけでは気づかない詰まりが見つかることがあります。
演習2:詰まった箇所をAIなしで潰す
演習1で詰まった箇所があれば、今日は一度AIを閉じて、参考書やノートだけで解き直してください。それでも分からなければ、次にAIへ何を聞くかだけをメモしておき、教えてもらう頼み方でその一点に絞って質問してください。
任せすぎない、という考え方は、AIを避けることとは違います。むしろ、任せてよい範囲をはっきりさせるからこそ、その範囲では思い切って任せられるようになります。線を引かないまま何となく使い続けると、任せてよい部分にまで遠慮が出たり、逆に残しておくべき部分まで任せてしまったりと、どちらの方向にもぶれやすくなります。
今日のまとめ
- 試験本番や面接の場にAIは隣にいない。勉強の途中で任せた部分は、本番までに自分の力へ戻す
- 説明できるか・解けるか・理由を言えるかの3つで、任せすぎていないかを自己チェックできる
- 詰まったら、教えてもらう頼み方に戻るか、一度AIを閉じて自分で解き直す
最後のレッスンでは、ここまでの考え方を、自分のAI学習方針として1枚にまとめます。
セルフチェック
1. 本文が「本番でAIは隣にいない」と述べていた理由に最も近いものはどれですか。
2. 本文で紹介した3つの自己チェックに含まれないものはどれですか。
3. 任せる比重の調整について、本文はどう説明していましたか。