「◯◯が分からない」とだけAIに伝えて、以前と同じような説明をもう一度受け取ったことはないでしょうか。多くの場合、説明は丁寧に返ってきますが、理解は前とあまり変わりません。原因は、伝えた範囲が広すぎることにあります。
「分からない」は広すぎる
簿記の勉強をしている人が「損益計算書が分からない」と言うのと、「売上総利益までは自分で計算できるが、営業利益に含める販管費の範囲がいつも一つか二つ漏れる」と言うのでは、AIが用意する説明の焦点がまったく違います。前者に対してAIができるのは、教科書と同じ説明をもう一度書き直すことくらいです。後者であれば、漏れやすい一点に絞った説明と、その一点だけを試せる練習問題を用意できます。
問題は、多くの人が自分の理解の境目を、自分では正確に言葉にできないことです。分かっていないことは、分かっていないからこそ、どこから分かっていないかを言葉にしにくいという性質があります。英語の資格試験で長文読解が苦手な人が「読解が苦手」とだけ言っても、それが語彙の不足なのか、文構造の把握なのか、時間配分の問題なのかは、本人にも切り分けられていないことがほとんどです。ここでAIに、境目を見つける側に回ってもらいます。
診断の質問から入る
診断質問を出させる
いきなり教えず、簡単な質問を2〜3問投げさせて、今の理解を確かめさせる
誤答から誤解の核を特定させる
どこで間違えたかから、勘違いしている一点を言葉にしてもらう
そこに絞った説明・練習を作らせる
見つかった一点だけに絞った説明と練習問題を出させる
〔科目・テーマ〕について勉強しています。まず私がどこまで分かっているかを確かめるため、簡単な質問を2、3問出してください。
・私の答えを聞いてから、次の質問に進んでください
・全部答え終わったら、どこで理解が止まっているかを指摘してください
・そのうえで、その一点だけに絞った説明をしてください自分から「分からない」を先に申告するより、「どこまでは分かる」を先に伝えるほうが、AIにとって鋭い出発点になります。「基本的な用語は知っているが、応用問題になると手が止まる」という伝え方は、「その分野が分からない」という伝え方より、AIが絞り込みを始めやすい材料になります。
診断質問をやってみると、思っていたより手前でつまずいていたと分かることがあります。応用問題が解けないと思っていたのに、実は基本用語の定義をひとつ取り違えていた、というようなケースです。これは悪いことではありません。手前の一点さえ直せば、その先の応用は思ったより早く解けるようになる、という発見でもあります。診断の結果が予想と違っても、そこで止めず、指摘された一点から素直に学び直してください。
この手順は、複数の論点を抱えているときほど効きます。社内のDX研修で新しいツールの使い方を一気に教わった人が、「操作が難しい」とまとめて感じているとき、実際には手順のうち1つか2つの画面遷移だけが引っかかっていて、残りはすでに使えることが珍しくありません。診断質問で当たりをつけてから、その1画面だけを繰り返し練習するほうが、最初から全体をおさらいするより早く自信がつきます。
診断質問は、1回やって終わりにする必要もありません。ひとつの論点で理解が止まっている一点を直したら、しばらく経ってから同じテーマでもう一度診断質問を受けてみると、本当に定着したか、それとも一時的に分かった気になっていただけかを確かめられます。特に試験範囲が広い資格試験では、この確認を単元ごとに軽く挟んでおくと、直前になって忘れていたと気づく事態を減らせます。
やってみよう
演習1:自分がつまずいている論点を1つ選ぶ
資格試験やいま勉強している分野の中で、いつも間違える、あるいは説明を聞いても腑に落ちない論点を1つ選んでください。漠然とした分野名でなく、できるだけ具体的な単元まで絞り込んでおくと、次の演習がやりやすくなります。
演習2:診断質問を出してもらう
上のテンプレートを使ってAIに診断質問を出させ、実際に答えてください。指摘された「理解が止まっている一点」が、自分で思っていた原因と同じだったか、違ったかを記録し、その一点だけに絞った説明を続けて頼んでください。
診断質問が的外れに感じるときは、伝えた情報が少なすぎることも考えられます。今どの教材のどの章を使っているか、これまでにどんな問題でつまずいたことがあるかを先に伝えておくと、AIが出す質問の精度が上がります。診断は一度きりの儀式ではなく、伝える情報を増やしながら精度を上げていく、往復のやり取りだと捉えておくとうまくいきます。
今日のまとめ
- 「分からない」を漠然と伝えると、以前と同じ説明が繰り返されるだけになりやすい
- 診断質問を先に出させると、理解が止まっている一点を絞り込める
- 絞り込めた一点だけに説明と練習を集中させると、遠回りが減る
次のレッスンでは、面接や発表のように、口頭で答える練習にAIを使う方法を扱います。
セルフチェック
1. 「◯◯が分からない」とだけ漠然と伝えたとき、本文が指摘していた問題はどれですか。
2. 理解の境目を見つける3段階のうち、最初に行うのはどれですか。
3. 本文が勧めていた、AIへの伝え方として適切なのはどれですか。