前のレッスンで、原価の裾から値をつけました。プランが決まっても、それを世の中に届ける段取りがなければ、無料で放置されているのと変わりません。ここでは、公開の前に揃えるべき6点セットと、医療に触れるプロダクトだけが踏む追加の工程を扱います。
6点、足りているか
「出す」とはLPを1本公開することだと思われがちですが、実際には6つの部品が揃って初めて「届く」状態になります。
| # | 成果物 | 作る主体 | 本人ゲート |
|---|---|---|---|
| 1 | LP(1ページ) | AI実装。コピーは複数案から本人が選ぶ | 公開デプロイ |
| 2 | OGP画像・アイコン | AI(画像生成) | なし |
| 3 | デモ(実画面の短い動画) | 実画面を撮って作る | なし |
| 4 | ストア素材(アプリの場合) | 訴求コピー入りスクリーンショット | 審査提出 |
| 5 | プレスリリース | AIが原稿と図を作る | 配信は本人 |
| 6 | FAQ・問い合わせ導線 | AI | なし |
抜けやすいのは6番です。LPとデモまでは作って満足してしまい、問い合わせが来る先がないまま公開してしまう。公開した瞬間に最初の反応が来ることを前提に、受け皿を先に用意します。
LPは一案で終わらせない
LPの構成自体は型があります。
1. 何のサービスか(機能ではなく、解決する状態で言う)
2. 誰の何の課題か
3. どう解決するか(実画面つきで3ブロック)
4. 実際の画面かデモ動画
5. 料金(3プラン、推奨1つを目立たせる)
6. FAQ(想定される断り文句に先回りする)
7. CTA
型より先に崩れやすいのはコピーの決め方です。AIに1案だけ書かせて、そのまま公開してはいけません。見出し・サブコピー・CTAをそれぞれ3案出させ、どれを採用するかは本人が選びます。前のレッスンでプラン表を「実測に差し替える」と決めたのと同じで、コピーも1回で確定させず、複数を並べて見てから決める工程を挟みます。
見た目についても同じことが言えます。テンプレート的な紫グラデーションや白カードの並列は、どれだけ機能が良くても「よくあるAI製品」に見せてしまいます。抽象的な議論で決めるのではなく、実際に描いた複数案を並べて比較します。
プレスリリース:原稿はAI、配信ボタンは本人
プレスリリースは第一段落が勝負です。機能の列挙から始めず、「誰の何の課題を、どう解決するか」を最初の一文で言い切ります。受賞歴や導入実績のような資産があれば、ここで使わないと死蔵されます。
引用コメントは本人が実際に言った言葉を使います。AIが本人のコメントらしきものを創作しないことは、原稿作成の段階で徹底します。
原稿と図をAIが作るところまでは工程に含めますが、配信ボタンを押すのは本人です。プレスリリースは撤回がきかない外部送信で、値付けの最終決定や本番公開の決定と同じ列に並びます。
医療レーンだけは別工程で通す
医療機関・医療プロダクトに触れるものは、通常のマーケ工程に混ぜず、公開前に必ず別チェックを通します。LPの1行、機能の1つで規制を踏むことがあるためです。
医療広告ガイドラインで使わない表現
医療機関・医師が関与する広告として読まれうる表現は避けます。
| 使わない表現 | 理由 |
|---|---|
| 「治る」「改善します」「安心です」 | 効果の保証・誇大表現にあたる |
| 「No.1」「最高」「日本初」(客観的根拠の提示なし) | 比較優良にあたる |
| 利用者の体験談 | 体験談による誘引にあたる |
| ビフォーアフター画像 | 術前術後の写真規制にあたる |
| 「専門医監修」(監修の実態を示せない場合) | 誤認を生む |
医師個人の肩書や所属を出す場合も、その肩書が何を保証しているのかを曖昧にしません。
薬機法:文言でなく機能で判断する
もう一つの線は、診断・治療の判断を示唆しているかどうかです。「症状から病気を判定」「受診すべきか診断」「治療方針を提案」といった表現は、プログラムが医療機器に該当しうる側に踏み込みます。「情報を整理する」「一般的な情報を提示する」「受診の目安となる公的情報を案内する」は安全側の表現です。
ここで注意が要るのは、これは文言の言い換えだけで逃げられる話ではないという点です。厚生労働省の「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」(令和3年3月31日策定、令和5年3月31日一部改正)は、該当性の判断軸を次のように定めています。
特定のプログラムが、医薬品医療機器等法の医療機器に該当するか否かは、製造販売業者等による当該製品の表示、説明資料、広告等に基づき、当該プログラムの使用目的及びリスクの程度が医療機器の定義に該当するかにより判断される
つまり判断材料には広告の表示も含まれますが、機能そのものが診断や治療方針の決定を担っている場合、LPの文言を穏やかに書き換えても該当性は変わりません。該当性が怪しい機能があるなら、LPを書く前に機能側の設計を見直します。
同ガイドラインは、医療機器に該当しない典型として次の4類型を挙げています。
- 患者説明を目的とするプログラム
- 院内業務支援・メンテナンスを目的とするプログラム
- 使用者が自らの医療・健康情報を閲覧等することを目的とするプログラム
- 生命及び健康に影響を与えるリスクが低いと考えられるプログラム
自分のプロダクトがこの4類型のどこに立っているかを、コピーを書く前に確認します。
患者情報:デモはダミーと明示する
LP・デモ動画・スクリーンショットに実データを映しません。デモ用のダミー症例を用意し、それがダミーであることを画面内に明示します。「サンプルデータです」の一言を隅に置くだけでも、実データと誤認される余地をなくせます。
最終確認
医療的な主張を含む文言は、公開前にもう一度、事実確認の工程を通します。「治験で証明された」のような一文は、書いた本人が正しいと思っていても、原典に当たらずに公開しないという原則は、このレッスンでも変わりません。
ローンチ当日の順番
6点が揃い、医療レーンも通ったら、公開の順番を守ります。
1. 本番デプロイ(ステージングで通しの動作確認済みであること)
2. 決済の実地確認(本番で1回、実際に買って返金する)
3. 計測の実地確認(signup→activation→checkoutが飛ぶことを手で踏んで確認)
4. FAQ・問い合わせ先の疎通確認
5. ここまで全部緑になってから告知・プレスリリース配信
ロールバック手順は当日に調べるものではありません。「どのコマンドで前の版に戻すか」を、デプロイする前に1行書いておきます。
今日のまとめ
- 届けるとはLP1本の公開ではなく、LP・OGP・デモ・ストア素材・プレスリリース・FAQの6点が揃うこと。6番の問い合わせ導線が最も抜けやすい
- LPのコピーは1案で確定させず、見出し・サブコピー・CTAを複数案出して本人が選ぶ
- 医療広告ガイドラインと薬機法は、マーケ工程とは別に通す。薬機法は文言の言い換えでは逃げられず、機能側で該当性を判断する
- ローンチ当日は、デプロイ→決済確認→計測確認→問い合わせ確認→告知の順を守り、ロールバック手順は事前に書いておく
次のレッスンでは、ここまでの4つのゲートのうち、どこまでがAIの仕事で、どこからが本人の決定かを線として引き直します。
参考文献
- 厚生労働省医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課/医療機器審査管理課「プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインについて」令和3年3月31日策定・令和5年3月31日一部改正。PDF(PMDA掲載)
セルフチェック
1. リリースキット6点のうち、公開後に最初のユーザーを取りこぼす原因になりやすい抜け項目はどれですか
2. LP制作で本人が担うべき役割はどれですか
3. 「症状から病気を判定」という表現に近いサービスで、まず行うべき判断はどれですか