土日にAIで作った問診票の下書きツールが、気づけば3ヶ月動いている。同僚にも配って、何人かは使っている。「続けますか」と聞かれたら、多くの人はこう答える。「手応えがあれば続けます」。
この一言が、あとで一番厄介になる。
「手応えがあれば」は条件ではない
条件とは、あとで誰が見ても同じ判定になるものを指す。止める・続けるを決めるのに一番向いていないのは、作った本人の主観だ。時間が惜しくて、続ける理由を後から探してしまう。
続ける条件をどう書くか
誰が見ても同じ判定にならない
忙しくて見なくなれば自然消滅する
決めたのではなく、時間が判定してしまう
続ける条件: 観測可能な事実
止める条件: 同上。達しなかったらを明記
次の判定日: YYYY-MM-DD
3行で書く
数字は仮でいい。判定日に事実だけで割り切れる形にしておくことが条件になる。「1ヶ月に◯回使ったか」「エラー報告が0件だったか」でもいい。
止める条件の4つの型
止める条件は、だいたい次の4つのどれかに分類できる。
| 種類 | 条件の書き方の例 |
|---|---|
| 需要 | 判定日までに、説明なしで使い始めた人がN人に届かない |
| 収益 | 判定日までに、有料に切り替えた人がN人/月次の売上がN円に届かない(値付け後の話。このコースの03で扱う) |
| コスト | 月次のAPI利用料がN円を超え、かつそれに見合う需要がない |
| 本人 | 判定日までに自分がそれを触る優先順位が動かなかった |
最後の「本人」が一番効く。公開の作業だけが2ヶ月動かないのは、意志の弱さでなく優先順位が低いという事実だ。感情でなく事実として受け止めた方が判断は早い。
止める=消すではない。凍結
「止める」と聞くと、コードを消して謝って回る場面を想像しがちだ。そうではない。
止める、は消すではない
撤退の決断が重くなる
先延ばしにしたくなる
更新を止め、ドメインとAPIの課金だけ止める
「凍結」と1行書いておく
気が変わればいつでも解凍できる
判定日を過ぎて判断しないこと自体が、止める側の事実
ここが一番忘れられがちな部分になる。
判定日を設定しても、忙しくて見なかった。そのまま3ヶ月経った。これは「まだ判断していない」のではなく、優先順位が自分の中になかったという「止める」側の答えがもう出ている。
判定日を過ぎても判断しなかったことを先延ばしとして扱わない。止める条件の「本人」の列が満たされた事実として読む。
AIが決めるのはどこまでか
続ける・止めるの最終判断は本人が下す。
AIが決めるのはどこまでか
判定日に実測値を集計して見せる
続ける/止める/凍結の選択肢を並べる
続ける/止める/凍結の決定そのもの
凍結の実行や公開停止は、予告して承認を得てから
この線引きがあることで、撤退基準は「AIに任せて自動で切られる仕組み」ではなく、「本人が判断しやすくするための下ごしらえ」になる。
今日のまとめ
- 「手応えがあれば」は条件ではない。続ける条件・止める条件・次の判定日を、判定日に事実だけで割り切れる形で3行に書く
- 止める=消すではなく凍結。更新を止め、コストだけ止めて、気が変わればいつでも解凍できる
- 判定日を過ぎても判断しなかったこと自体を、止める側の事実として扱う。先延ばしを「保留」として見逃さない
次のレッスンでは、この撤退基準と同時に入れておく計測の設計に進む。判定日に何を見て条件を判定するか、そのイベント設計を実装と同時に組み込む。
参考
- 梶谷健人「AIとサービスを開発してリリースするまでの流れとポイント」(note, 2026-09-11)。このコースの骨格は同記事の後半3工程(価格設計・マーケ素材・計測設計)を起点に、撤退基準を先頭に足したAMPL版。記事本文は有料のため転載しない
セルフチェック
1. 「手応えがあれば続けます」が撤退基準の条件として不十分な理由は何ですか?
2. 撤退基準で「止める」と決めたとき、実務として最初にやることは何ですか?
3. 判定日を過ぎても続ける・止めるを判断しなかった場合、この状況をどう扱うべきですか?