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撤退基準を先に書く

「手応えがあれば続ける」は条件にならない。続ける条件・止める条件・次の判定日を3行で先に書き、判定日を過ぎても判断しなかったこと自体を止める側の事実として扱う型を身につける。

  • レッスン 1 / 6
  • 10分

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • 「手応えがあれば」のような曖昧な継続条件を観測可能な事実に書き換えられる
  • 続ける条件・止める条件・次の判定日を3行の撤退基準として書ける
  • 判定日を過ぎても判断しなかったことを止める側の事実として扱える

土日にAIで作った問診票の下書きツールが、気づけば3ヶ月動いている。同僚にも配って、何人かは使っている。「続けますか」と聞かれたら、多くの人はこう答える。「手応えがあれば続けます」。

この一言が、あとで一番厄介になる。

「手応えがあれば」は条件ではない

条件とは、あとで誰が見ても同じ判定になるものを指す。止める・続けるを決めるのに一番向いていないのは、作った本人の主観だ。時間が惜しくて、続ける理由を後から探してしまう。

続ける条件をどう書くか

手応えがあれば続けます

誰が見ても同じ判定にならない

忙しくて見なくなれば自然消滅する

決めたのではなく、時間が判定してしまう

3行で書く

続ける条件: 観測可能な事実

止める条件: 同上。達しなかったらを明記

次の判定日: YYYY-MM-DD

気分で判定させない

3行で書く

数字は仮でいい。判定日に事実だけで割り切れる形にしておくことが条件になる。「1ヶ月に◯回使ったか」「エラー報告が0件だったか」でもいい。

止める条件の4つの型

止める条件は、だいたい次の4つのどれかに分類できる。

種類条件の書き方の例
需要判定日までに、説明なしで使い始めた人がN人に届かない
収益判定日までに、有料に切り替えた人がN人/月次の売上がN円に届かない(値付け後の話。このコースの03で扱う)
コスト月次のAPI利用料がN円を超え、かつそれに見合う需要がない
本人判定日までに自分がそれを触る優先順位が動かなかった

最後の「本人」が一番効く。公開の作業だけが2ヶ月動かないのは、意志の弱さでなく優先順位が低いという事実だ。感情でなく事実として受け止めた方が判断は早い。

止める=消すではない。凍結

「止める」と聞くと、コードを消して謝って回る場面を想像しがちだ。そうではない。

止める、は消すではない

消す(と思われがち)

撤退の決断が重くなる

先延ばしにしたくなる

凍結(実際にやること)

更新を止め、ドメインとAPIの課金だけ止める

「凍結」と1行書いておく

気が変わればいつでも解凍できる

コードもデータも残していい

判定日を過ぎて判断しないこと自体が、止める側の事実

ここが一番忘れられがちな部分になる。

判定日を設定しても、忙しくて見なかった。そのまま3ヶ月経った。これは「まだ判断していない」のではなく、優先順位が自分の中になかったという「止める」側の答えがもう出ている。

判定日を過ぎても判断しなかったことを先延ばしとして扱わない。止める条件の「本人」の列が満たされた事実として読む。

AIが決めるのはどこまでか

続ける・止めるの最終判断は本人が下す。

AIが決めるのはどこまでか

AIがやること

判定日に実測値を集計して見せる

続ける/止める/凍結の選択肢を並べる

本人が決めること

続ける/止める/凍結の決定そのもの

凍結の実行や公開停止は、予告して承認を得てから

集計は任せる、決定は本人

この線引きがあることで、撤退基準は「AIに任せて自動で切られる仕組み」ではなく、「本人が判断しやすくするための下ごしらえ」になる。

今日のまとめ

  • 「手応えがあれば」は条件ではない。続ける条件・止める条件・次の判定日を、判定日に事実だけで割り切れる形で3行に書く
  • 止める=消すではなく凍結。更新を止め、コストだけ止めて、気が変わればいつでも解凍できる
  • 判定日を過ぎても判断しなかったこと自体を、止める側の事実として扱う。先延ばしを「保留」として見逃さない

次のレッスンでは、この撤退基準と同時に入れておく計測の設計に進む。判定日に何を見て条件を判定するか、そのイベント設計を実装と同時に組み込む。

参考

  • 梶谷健人「AIとサービスを開発してリリースするまでの流れとポイント」(note, 2026-09-11)。このコースの骨格は同記事の後半3工程(価格設計・マーケ素材・計測設計)を起点に、撤退基準を先頭に足したAMPL版。記事本文は有料のため転載しない

セルフチェック

1. 「手応えがあれば続けます」が撤退基準の条件として不十分な理由は何ですか?

2. 撤退基準で「止める」と決めたとき、実務として最初にやることは何ですか?

3. 判定日を過ぎても続ける・止めるを判断しなかった場合、この状況をどう扱うべきですか?

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