ここまで4本で、撤退基準・計測・値付け・届けるの型を見てきました。このレッスンに新しい型はなく、その型を実際に運用した結果を隠さずに見せます。架空の失敗談ではなく、AMPLの経営体制の中核3本、minaton・pedia・tokyo-speedの現在地です。3本とも本番相当まで作り込まれ、値付けか公開のどこかで止まっています。
出す工程の、空いている場所
AMPLでは製品が出るまでの流れを11の工程で見ています。企画・試作・実装の⑥までは何本も通っています。止まるのは⑦値付け、⑩届ける、⑪計測の3つです。
この3つが空洞だという事実は、プロダクト進捗ボード(01_社長室/01_経営/プロダクト進捗ボード.md、最終更新2026-09-13)にそのまま書かれています。以下はその記録だけで、推測や後付けの理由づけは入れていません。
minaton: 計測は先に来た。値付けだけ空いている
minaton(港区の子育て情報サイト)は本番稼働中で、⑪計測までAMPLの中で唯一到達しています。PostHog・GA・web_vitalsの計測基盤は、このコースの02「計測は実装と同時に入れる」の実例です。
キッズデザイン賞のマークも日英トップページに掲出済み(8/20)。iF 2027へのエントリーも9/13に済ませています。これは賞を受賞すれば€2,900の支払いが確定する、コスト側の意思決定です。
その一方で⑦値付けだけが空いたままで、minatonは今も無料です。ボード上の「次の判定日」欄は「要設定」、まだ日付が入っていません。
このコースの01の撤退基準は、続ける条件・止める条件・判定日を先に書くものでした。minatonの値付けは、その判定日自体がまだ書かれていません。計測という一番難しい工程を突破していながら、値付けの着手日は決まっていない。技術の壁ではなく、優先順位の所在を示す事実として読めます。
pedia: 機能を削ったら、赤字構造が消えた
pedia(小児科専門医試験の問題演習、888問)は⑥実装が完了し、9/13に⑪計測へ着手しています。決済ゲートはすでに実装済み(コミットdc361bad0)。計測は外部SDKに頼らず、自社の計装(lib/analytics.tsからSupabaseのeventsテーブルへ)で行っています。
pediaにはこのコースの03で説明した「手順0、その機能を落とせないか」の実例があります。AIチューター機能は当初の構想に含まれていましたが、売り物から外されました。ship-productスキルの記録によれば、この機能を外したことでGate A(値付け)の赤字構造がそのまま解消しています。従量課金を生む機能が消え、原価の裾を気にする必要自体がなくなりました。
pediaの本人ゲートは、Stripeの価格作成、本番環境の設定、デプロイとpush、そして事業の方向そのものです。次の判定日は「計測から2週間後に⑦を判断する」と具体的に設定されています。3本の中で唯一、撤退基準のルール通りに次の判定日が書かれているのがpediaです。
tokyo-speed: 二重ゲートで止まっている
tokyo-speedは⑥が完了し、有料チケットとホストの受け取りをprovider-readyの形で本番に反映済みです(mainブランチ、テスト606件が緑)。実装としては動く状態にあります。
それでも実課金は動いていません。決済側の接続(Stripe Connect)がまだ有効化されていないからです。計測も、Plausibleを使う宣言だけがあって実際には接続されておらず、⑪はゼロのままです。
本人ゲートはStripe Connectの有効化、手数料率の決定、法務確認、DNSの4つ。ボードはこの状態を「⑦が二重ゲートで休眠」と表現しています。値付けを機能させる前提(Connect)と、値付けを許可する前提(法務)が両方止まっているという意味です。
三つに共通するもの
3本とも⑥実装は終えています。3本とも、止まっている場所は⑦かその手前です。そして3本とも、止めているのはAIではなく本人ゲートです。
値付けの方向そのものが未決
Stripe価格・本番環境の設定・deploy・push、事業の方向
Stripe Connect有効化・手数料率・法務・DNS
このコースの05で見た「AIが越えない線」がそのまま並んでいます。価格の最終決定、本番公開、外部への告知は本人にしかできません。AIは原価と選択肢を並べるところまでです。
ここに書いていないこと
このレッスンは進捗ボードに書かれている事実だけで構成しています。各プロダクトで実際に何を迷ったか、値付けの候補としてどんな数字を検討したか、といった判断の中身は書いていません。
[要確認: minaton・pedia・tokyo-speedそれぞれで実際に迷った論点と検討した価格帯は、本人からの聞き取りが済み次第この節に追記する]
推測で埋めないのは、このレッスンが教えている型そのものです。事実と推測を混ぜると、後で何が確認済みで何が仮説だったか分からなくなります。撤退基準を「手応えがあれば」で書かないのと同じ理由で、分かっていることと分かっていないことを分けて書きます。
今日のまとめ
- AMPLの本気3本は、いずれも⑥実装を終えながら⑦値付けかその手前で止まっている
- 止めているのは技術ではなく本人ゲート。minatonは値付けの方向、pediaはStripe設定と事業方向、tokyo-speedはConnectと法務
- 撤退基準の「次の判定日」が具体的に書かれているかどうかで、そのプロダクトが実際にどこまで動いているかが分かる。pediaのように判定日が書かれている例と、minatonのように「要設定」のままの例が、同じボードの中に並んでいる
次のセクションはありません。ここまでで、撤退基準・計測・値付け・6点セット・本人ゲートの線、そして実際に止まった記録まで見てきました。自分のプロダクトが今どの工程で止まっているか、進捗ボードと同じ形式で3行に書き出してみてください。段階、到達工程、本人ゲート。埋められないなら、その事実自体が次に何をすべきかを教えてくれます。
セルフチェック
1. minatonが3本の中で唯一到達している工程はどれですか
2. pediaでGate A(値付け)の赤字構造が解消した直接の理由は何ですか
3. tokyo-speedの実課金が動いていない理由として、進捗ボードに記録されているものはどれですか