論文が形になった。ここで一連の作業は終わりではありません。論文のDiscussionの終わりには、たいてい「今後の課題」が書いてあります。それは次の問いの種です。次の問いを追いかけるには、多くの場合、研究費が要ります。
このレッスンでは、研究助成の申請書をどう組み立てるか、AIにどこまで任せてよいかを扱い、道具のログから始まったこのコース全体を、次の研究へつなぐところで締めくくります。
申請書は、新しい文書ではない
助成金の申請書と聞くと、独自の作法を持つ書類に見えます。しかし中身の大部分は、レッスン2で書いた研究計画書(問い・デザイン・アウトカム・解析計画)と重なっています。申請書が足すのは、主に次の3点です。
研究計画書に足す3点
予算計画
何にいくら使うか、その根拠
研究体制
誰が何を担うか
期待される成果
得られるものを、測定可能な形で示す
申請書の体裁から先に埋めようとすると、研究の中身が薄いまま体裁だけ整った書類になります。
申請書の骨組み
一般的な研究助成(科研費や厚生労働科学研究費補助金など)に共通する構成要素は、次の6つに整理できます。
申請書の骨組み6要素
研究課題名
内容が一読で伝わる名前
研究の背景と意義
なぜこの研究が必要か、既存研究との違いは何か
研究計画
問い・デザイン・方法・解析計画(レッスン2の続き)
予算計画
直接経費(人件費・物品費・旅費など)と、その根拠
研究体制
研究代表者・分担者・協力者の役割
期待される成果
学術的な成果と、それが医療にどう還元されるか
助成の種類ごとに求められる書式や文字数は異なります。[要確認: 応募する助成の公募要領で、書式・上限文字数・提出期限を必ず確認する]。ここで扱えるのは、どの助成にも共通する骨組みだけです。
AIに任せてよい範囲、本人が決める範囲
申請書作成でAIが速く効くところと、本人が決めなければならないところは、はっきり分かれます。
AIに任せてよい範囲、本人が決める範囲
構成のドラフトを、レッスン2の研究計画書から起こす
先行研究の要約を下書きする(引用は実在確認が前提)
予算項目の洗い出しと、書式への整形
文章の推敲、専門用語の統一
この研究の新規性を、何と比べて新しいと主張するか
予算が、実際にその研究を回すのに足りる額かどうか
研究体制が、書類上だけでなく実際に機能するか
期待される成果を、誇張せず、かつ小さく見積もりすぎずに書けているか
AIが出す予算案は「それらしい内訳」であって、現場の相場を保証しません。申請書で成果を誇張すると、採択後の実施報告や中間評価で書いたことと実際の進捗の差が露呈し、次の申請が通りにくくなります。申請書は一度きりの文書ではなく、次の申請につながる記録でもあります。
道具から始まった循環

循環を止めないための実務的なコツが一つあります。論文を書き終えた直後、まだ問題意識が新鮮なうちに、「次に何を調べるべきか」を1行だけメモしておくことです。申請書を書く段階になって当時の問題意識を思い出そうとしても、解像度はもう戻りません。
不採択でも、道具は残る
助成が通らないことは珍しくありません。ここで見失いやすい事実があります。申請が不採択でも、道具そのものは業務を楽にしたまま現場に残っているということです。
研究として一般化できなかったとしても、道具としての価値は消えません。研究はこのコースの出口の一つであって、唯一の出口ではありません。道具を外に出し、値をつけ、届けるという別の道もあります。その道を扱うのは、このコースの外、姉妹コースの範囲です。
セルフチェック
1. 助成金申請書の「研究計画」セクションは、このコースのどのレッスンの延長として書けるか
2. 予算計画の作成をAIに手伝わせるとき、AIの出力をそのまま採用してはいけないのはどれか
3. 研究助成が不採択だった場合、道具のログから始まった一連の作業について正しい説明はどれか